『金融リスク管理を変えた10大事件』(藤井健司著)を読んで

本来であれば、サイバーセキュリティの技術的なトピックについても纏めたいところであるが、2つ目の記事も読書のレビューとしたい。
(なお、増補版も出ているが、私が読んだのは初版)

本書は、金融業界に勤めている方々はもしかしたら読んだことがあるかもしれないが、金融業界を取り巻く各種規制がなぜ存在するのか、その規制の制定経緯となった「事件」を作者の経験も交えて解説している本になる。


取り上げてる10大事件は以下の通り。

1.ブラックマンデー(1987年)
2.G30レポートとVaR革命(1993年)
3.FRBショックとデリバティブ損失(1994年)
4.ベアリングズ銀行と不正トレーダー(1995年)
5.ヘッジファンドLTCM破綻(1998年)
6.バーゼルⅡとオペレーショナルリスク(2001~2007年)
7.NY同時多発テロとBCP(2001年)
8.サブプライムローン問題と証券化商品(2007年)
9.リーマンショックと金融危機からバーゼルⅢへ(2008年~)
10.アルゴリズム取引と「フラッシュ・クラッシュ」(2010年)

別途ERM(Enterprise Risk Management)の本も併せて読むと、
銀行をはじめとした金融機関がケアをしなければならないリスク領域が、
(伝統的な)信用リスク・流動性リスクから市場リスク、オペリスク、システミックリスク、等多岐にわたって広がってきたことが非常に実感できる内容となっている。

金融機関に勤めている人には、(既に読んだことがある方も相応にいるだろうが)おススメをしたい本。

今後のリスク管理分野を展望すると、(オペリスクの中に入ってくると思うが)サイバー攻撃のリスクや、Fintechの隆盛等新しいIT技術の導入に伴って考えられるリスク、
そういったITリスクについて各金融機関は頭をもたげている現状があるので、そういった分野に対するリスク管理をどのようにしていくか、知見を深めていきたいし、今後(少なくとも)数年は市場価値が出てくる分野でないかな、と勝手に思っている。

またこの本の姉妹本として『日本の金融リスクを変えた10大事件』が発売されているので、その本も読んでみたい。




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