MSX総選挙・ゲーム編2 コナミ以外にも名作が!
MSX40周年を記念して行われたMSX総選挙・TOP10は8タイトルがコナミでした。しかし「コナミ以外にもMSXには名作が山ほどあるぜ!」というユーザの方々の心の叫びをキャッチしたので、後半戦もやってみようと思い立ちました。皆さんのプレイしたタイトルはあるでしょうか?
第11位 イース(日本ファルコム) 1987年12月
1987年6月にPC88で発売されたイースは一大旋風を巻き起こしていました。PCエンジンやメガドライブの発売前、この新生代RPGの出現に「ファミコンでは逆立ちしても無理だな。」とパソコンユーザーは謎の優越感を抱いていたものです。
当然MSXの移植が熱望されましたが、年末にソニーがMSX2・HB-F1XD発売に合せてリリースを決定。何と本体購入者のプレゼント用に4000本を用意という太っ腹企画です。テレビCMも放送され、イースはパソコンゲームの代名詞としてお茶の間にも浸透していきました。
僕は友人のカシオ君に猛烈な売り込みをかけました。彼はMSX1のMX101からディスクドライブ搭載型MSX2の買い替えを狙っていたのです。
「やっぱり世界ブランドのソニーがお勧めだ。FS-A1F(松下のライバル機)なんか目じゃねえぜ。」
「お前のMSX2は松下のFS-4600Fじゃねえか!どうせイースを貸して欲しいだけだろ。」
「あなたはイースが欲しくなる」という煽りが凄いCM。
結局カシオ君は懸賞で運よくイースをゲットすることに成功。と言うか僕の周りではHB-F1XD購入者が3人もいて、全員が当選してるので4000本以上用意されたような気がするんですが・・・
首尾よくイースを借り受けることに成功した僕。興奮気味に愛機にセットしたところ、ディスプレイに標示されたのは
「SONY ONLY!!」
更にそのまま止まってしまうという鬼畜仕様!そりゃないよソニーさん。
パソコンゲームの黄金期を象徴するゲームであるイース。1987年はファミコンゲームが急激な進化を遂げようとしていました。パソコンゲームは家庭用ゲーム機との差別化を図らなければならない時期に来ていた気がします。それに対する日本ファルコムの解答がイースだったのではないでしょうか。
イースの革命的な部分は多々あるのですが、世界背景をあまり提示していなかったハイドライドや、少年漫画的なドラゴンクエストとは次元の違った緻密なシナリオは衝撃でした。あのダームの塔でのエンディングを迎えた時、大河小説を読み終えた様な感動を覚えたことを今でも思い出すのです。
第11位 イースII(日本ファルコム)1988年7月
イースⅠの物語は「アドルの新しい旅が始まる・・・」で終わっていたため、当然のように続編が期待されました。あれだけ完成度の高いゲームの続編をどう作るのか…そんなパソコン少年達の度肝を抜いたのがイースIIのオープニングでした。
冒険心を掻き立てる史上最高とも言えるOPは、その後の日本のRPGの流れを決定付けたと思います。魅力的なキャラクターと美しい演出というフォーマットは、多くの作品に引き継がれていくことになりました。
イースIIはファミコンユーザーに最も羨ましがられたパソコンゲームでした。それはパソコンゲームがゲーム文化の中心を担っていた輝かしい時代の証明であったのだと思います。
パソコンとファミコンの中間に位置したMSXに、イースがいち早く移植された意義は大きかったのではないでしょうか。
第11位 F-1スピリット(コナミ) 1987年10月
発売から4年が経ったMSX1はゲーム機としては完全に旧式化していました。「MSXはもう時代遅れなのか・・・」誰もがそう思う中で、最終兵器SCCを引っ提げて救世主の如く現れたのがグラディウス2。そしてSCC搭載第二弾として発売されたのがF-1スピリットでした。この2作は「MSX1は今だ健在なり」を存分にアピールすることになります。コナミがMSXというハードをけん引していた時代を象徴する1本だと思います。
ご存じ8ドットのガタガタスクロールでしたが、それを補って余りあるスピードがレースゲームのキモである疾走感を生み出していました。それを煽りたてるSCCサウンド、盛り上がること間違いなしの2人対戦モードなど、ゲームとしての楽しさが凝縮された作品と言えます。
僕の家に遊びに来た他機種ユーザーも「やっぱりコナミはすげーな」と絶賛しておりました。意地でも「MSXはすげーな」と言わないあたりがパソコン少年らしいですが・・・。
僕はMSXの実機の動作確認にF-1スピリットを愛用しています。僅か数秒のOPテーマからテンションはMAX、SCCが奏でる最速381キロの世界が広がっていきます。その時最もMSXが輝いていた時代に戻れるような気がするのです。
あまり注目されませんが強烈なSEも必聴です。唸りを上げるエンジンやブレーキ音は芸術ですよ。今なら怒られちゃう企業の看板なども懐かしいですね。
第14位 アレスタ2(コンパイル) 1989年11月
1989年はMSX2狂い咲きのような1年でした。7月1日には念願のスムーズ横スクロールを実装したハイディフォス、 8月30日は最高峰と謳われた野球ゲーム激突ペナントレース2、11月には念願のテグザーの続編ファイアーホークなど、MSXの性能を極限まで引き出した傑作が次々と発売されています。その中でMSX究極の縦スクロールシューティング、アレスタ2は登場しました。
コンパイルの製作のMSX縦STGの系譜であるEI、ファイナルジャスティス、ザナック、アレスタなどの集大成とも言え、「技術力のコンパイル」を象徴するタイトルだったと思います。
僕は勿論発売日に購入し、その完成度に驚愕していました。
「圧倒的じゃないか、我が軍は。コンパイル・コナミ・T&E・ゲームアーツ・ヘルツ・・・MSXはあと10年は戦える。」
僕はプレイしながら、どこかのバカ将軍みたいなセリフを吐いていました。しかしその僅か1年後に全てが幻想だったことを思い知るのでした。
僕が皆さんにぜひ知って頂きたい裏話として、アレスタ2は元々セガからメガドライブで発売する予定だったのだそうです。プログラマーの外山雄一さんによると
「セガに『これは売れないよ!』と言われてゲームごと身売りした(MSXでの発売)」
とのことです。僕はは生配信を聞きながら天を仰ぎました。
「セガさん、見る目なくてありがとう!」
この経緯はゲーセンミカドさんのアーカイブで現在も聞くことが出来ます。(36分ぐらいから)
当時のコンパイル勢であるじぇみに広野さん、外山雄一さん、いっしきさんの貴重なお話しが満載なんですよ。
なんでもザナックの独創的なウエポンシステムは、コナミの魔城伝説に負けじと実装されたとのこと。MSXファンなら涙なくては聞けない秘話が満載なので是非聞いてみてください。
元々はメガドライブという16bitゲーム機で企画されたゲームであったアレスタ2。それを非力なMSX2で完成させたという偉業に僕は感動を禁じ得ませんでした。改めてコンパイル開発陣に敬意を表したいと思います。
第14位 フレイ(マイクロキャビン)1990年12月
翌1990年は一転してMSX黄昏の年となりました。特にメタルギア2を最後に撤退したコナミそしてT&E社の喪失感は大きく、MSXユーザーに暗い影を落したと思います。その中で俄然MSXを応援してくれたのがマイクロキャビンさんでした。ここまひさんの描く、健気に頑張るフレイちゃんの笑顔に勇気付けられたことを忘れることが出来ません。
この時期からMSXが商業的に終焉を迎えるまで、マイクロキャビンさんの奮闘はMSXユーザーの記憶に深く刻まれていきました。フレイはその象徴的な1本だと思うのです。
この時期のマイクロキャビンのMSXCGは末永仁志さんが担当されているんですが、そのインタビューによると日立のMSX1・MB-H1からのMSXユーザーなのだとのこと。めぞん一刻が好きで入社を決めたというエピソードも素敵です。
後期MSXFAN誌上では中津泰彦さんらMSX開発メンバーがゲーム制作のコラムを連載してくれました。ソフトが供給できなくなってもMSXを応援してくれたのは本当に嬉しかったです。
末期1992年の広告。「思い叶う」のコピーに思わず落涙😭
サークシリーズ・プリンセスメーカー・幻影都市・大戦略Ⅱ、どれもMSXユーザーの思いの為に発売されたようなタイトルばかりです。
第14位 幻影都市(マイクロキャビン) 1991年12月
MSXturboRを代表する作品です。幻影都市 ILLUSION CITY イリュージョン・シティ、もう題名だけでカッコ良すぎですよね!日本名と英名とどっちもキレてるのが凄い。
その名を体現する幻影的世界観は、新田忠弘さん・瓜田幸治さんらのMSX最高峰の音楽と共にユーザーの心に残っているのではないでしょうか。
幻影都市の独創性は2023年に残念ながらお亡くなりになった中北晃二先生によるところが大きいと思います。先生はゲームだけでなく、ライトノベルのイラストやアニメ関係と多岐に渡ってお仕事をされていました。これは百鬼丸名義での特別寄稿とインタビューです。改めてご冥福をお祈りします。
マイクロキャビンのMSXで忘れてはいけないのが芸術的とも言えるサウンドですよね。これは貴重な新田忠弘さんの記事。「MSXに特別な愛情を」と言う一文で僕は即座にファンになりましたよ。「PSGにFM音源を重ねる」という衝撃の発言にも驚かされました。
あれから30年後、まさかTwitterで御本人とお話しできることになるとは!ムチャクチャ感動しました。動画は新田さんが自ら手掛けたILLUSION CITY テーマAのアレンジ。ぜひ買いましょう🥰
マイクロキャビンについてのラストはやはりMSXFANの最終号。もう読みながらガチ泣きしてしまいました。この号には多くの方がコメントを寄せているんですが、トップの西和彦先生の次がコナミやT&Eソフトではなくてマイクロキャビンさんなんですよ!流石MSXFAN編集部さんは解ってますね。
開発陣勢揃いの写真、熱いコメント、MSXは教師と〆てくれたことに乾杯です!
第14位 Pampas&Selene(同人) 2023年
MSX界が注目していた近年最高の超大作『パンパース&セレネ 悪魔の迷宮』が同人唯一のランクイン。Unepic franさん達MSX欧州トップチーム渾身の作品で、彼らはコナミのガリウスの迷宮へのラブレターだと述べてます。
ゲームもさることながら、熱狂的コナミファンのMarcellladoさんが創ったボックスや説明書も素晴らしい出来栄えです。可愛い漫画やイラストがいっぱい!なんとMSX実機ならではの「2本挿し」の裏技も存在するのだとか。SCCサウンドのサントラCDが付属しているのも嬉しいですね。欧州向けの作品にも関わらず、日本語表記があることに感動しました。
僕は欧州の友人の計らいで直接輸入することになったのですが、franさんが一枚ずつ毛筆で書いてくれた伝言が同封されていて、思わず涙ぐんでしまいました。
彼らは何故ここまで日本をリスペクトしてくれるのでしょうか。きっとそれは少年の日のMSXの想い出がそうさせるのではないかと僕は思うのです。
西和彦先生が現地で講演されたように、スペインとMSXには深い結びつきがあります。日本と遠く離れた地でMSXが普及しており、同じ想いを持つ同志がいたことに深い感銘を受けました。
この作品はゲームの枠を超えた、日本のMSXユーザーへ宛てた熱き手紙のように僕は思えたんです。
ありがとう、MSXの友よ!
ゲームの中身は僕が解説するより動画を見て貰った方が早いです。とにかく素晴らしい作品です。
実機で遊ぶのは大変なので、手軽に遊べるsteam版もありますので是非プレイしてみて下さい。
総選挙は…「まだだ、まだ終わらんよ!」
なんだかゲームの話より、当時のMSXを取り巻く状況やメーカーさんのお話が中心になってしまいました。資料を調べていると記憶が蘇ってきてつい書いちゃうんですよね。ただ改めてゲームの歴史はMSXから切っても切れないないと感じることが出来ました。
しかしこれにてMSX総選挙編は終了…とはいかないんです。そう、MSX黎明期を彩った伝説のタイトルたちの紹介がまだなんですよ。と言う訳で、もしかしたら次回に続くかもしれません。