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使いにくいけど愛おしい・MSX変態ジョイスティック特集②
前回は黎明期のジョイスティックとその進化を特集しました。正直使いにくい物も多かったのですが、それはアイディアと試行錯誤によって精錬されていった過程なのだと思います。
MSXは初期に多くのメーカーが参入したこともあり、各社が独自のジョイスティックを発売していました。その中でも特にイカレた奴を厳選してお届けします😁
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①MSX界最強の怪物ジョイハンドル
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デカァァァァァいッ説明不要!! 上に乗ってるMSX2・FS-A1mkIIの4倍ぐらい厚みがありますよ。これじゃプログラムできないじゃん。
今回のネタで絶対外せないのがPanasonic FS-JH1、通称ジョイハンドル。1988年3月の発売で当時のMSXユーザーなら「ああ、アレね。」と知ってる人は多いのですが、実際購入した人は皆無というツチノコのような一品です。
秋葉原のパソコンショップでデモ機を遊んだことがありますが、流石にMSX信者の僕も購入しようとする気にはならなかったです。そもそもF-1スピリットの改造版であるA1スピリット対応という触れ込みだったのですが、2Dのレースゲームをハンドルで遊んでもあんまり有難みがありませんでした。
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背面のコネクタはトリガーA、B入端子と書かれていますが、これはオプションのアクセルとブレーキペダルをサポートする予定だったのかも。勿論リリースされることはなかったようです。
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どうも開発と生産は現在でもジョイスティック販売でおなじみのHORIみたいですね。その後ホリから発売されたファミコンやセガ用のハンドルコントローラと形状がよく似ています。最初はパナソニック向けに、その後はセガ向けにコンパクトな改良バージョンを製造したのでしょう。ホリは商売上手だなあ。
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定価1680円ですが天下のコナミ公式ということで強烈なプレミアが付いています。
捨てなきゃよかった😭
勿論全然普及しなかったのですが、松下はよせばいいのに1988年末に新発売されるMSX2+用のローンチタイトル・F1スピリット 3Dスペシャルに対応させています。MSX2+を二台専用ケーブルで繋げてジョイハンドル2基で遊ぶという壮大な計画だったようですが、果たして遊んだ人はいるのでしょうか。
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散々ネタにしておいて申し訳ないのですが、実はこのジョイハンドルの仕掛人はパナソニックの平賀和明さんというFMパックを企画した方なのでした。当時のMSXイベント企画も担当されていたそうで、僕もどこかでお会いしていたのかもしれません。
平賀さんはMSXに繋ぐ自転車やボディソニックなども計画されていたそうです。一見無謀にも思えますが、こういった挑戦が任天堂さんのWiiなどの系譜に繋がっていったと考えると、無駄ではなかったと思います。MSXの拡張性は数々の周辺機器を生み出しました。その尖った怪物の頂点がこのジョイハンドルだったのではないでしょうか。
海外の勇者が解説動画を上げてくれました。A1スピリットのほかにもアウトランで試してくれています。しかし『バーチャル レーシング セットアップは話題になっていますが、貧しい MSX オーナーはどうでしょうか?』の説明文には笑ってしまいました。
②MSX界のE.T. ソニーJS-55
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MSX最初期1984年にソニーが発売したJS-55。僕のMSXの師匠が持っていたので使ったことがあるのですが、長いゲーム歴の中でも一番使いにくいスティックです。
MSXマガジンに「E.T.を思わせるユニークなデザイン」と書かれていて確かにカワイイ形状なんですけどね。わざわざ改造して使用してる同志がいました。
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③1984年にワイヤレスの凄い奴・JS-75
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またまたソニーのJS-75。何と1984年にワイヤレスを実現しているスティックなんですよ!2006年のソニーの公式カタログにも「画期的なワイヤレス」と掲載された一品。センサーと本体が別売りで2基同時にプレイすることも可能。ただしお値段は16,800円でファミコンが買えてしまいます。
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海外のMSXユーザーがレポートしてくれました。
④コナミの本気!ハイパーショットJE-502
「ああ、ハイパーオリンピック用の平べったい奴でしょ」と思った皆さん、カーカカカ!甘い、私はこういう時のためにちゃんとスペシャルホールドを温存しておいたのだ!😁
実はハイパーショットは2種類販売されていて、1つはファミコンなどでもおなじみのプラスチック製なんですがコイツはJE-503という廉価版なんですよ。本命は金属製ケースのJE-502、重量感たっぷりの一品です。当時MSX版ハイパーオリンピックは大人気でよく大会が行われていたのですが、その際に使用されていました。これなら鉄製の定規でひっぱたいても大丈夫ですよ!
ちょっと見にくいですがこのハイパーオリンピックのCMでお母さんが使用しているのがこのタイプです。
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⑤富士通ゼネラルの赤い奴・PCJ-50
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富士通ゼネラルが1984年に発売したPCJ-50。縦長で右手で操作するタイプです。ボタンが縦に配置されているので押しずらそう。何でこんな縦長になったのかというと実は本体に収納するデザインだからなのでした。
ゼネラルのMSXはTVと一体化されている珍しいタイプで、よく百貨店の店頭デモなどに使われていたので使用した記憶があります。
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⑥HAL研からの刺客・青いジョイボール
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ファミコン用はオレンジですがMSX用は青なんです。
変態スティックだったらHAL研究所は外せない!!「ジョイボール」の登場だ!
変態パットに血道を上げていたのがHAL研究所。トラックボールはまだしもジョイボールは
😡😾🤪「操作性抜群ってホントに使ったことあんのかよ!」
とファミコンの連中もみんなこぼしてました。僕はコレでイーガー皇帝の逆襲をやって死にましたよ。それも今ではいい思い出です。
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⑦貧乏人御用達・ソニーJS-33
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またまたソニーのJS-33。僕はこれを1986年に購入して酷い目にあいましたよ。一見普通のゲームパットじゃないかって?よく見てください、操作が右でボタンが左の黎明期使用なんですよ。我が家に来たファミコンユーザーどもはファミコンパットと操作が逆なのでぶうぶう文句言っていました。
ひし型形状なのも持ちにくいし、おまけにボタン配置が通常と逆なんです。斬新すぎるぞソニー!
当時の最安値の2000円でMSXマガジンの特集にも「とにかく金欠病のあなたに」と評されていました。確か実態価格は1000円位で、よくHiTBiTのMSX本体のオマケになっていましたね。
実は僕もゲームを買った時にお店の人にオマケしてもらったので文句も言えないのでした。
⑧MSX版ファミリートレーナー?🏃♂️
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実はコナミアクションマットはMSX用ゲーム「ジョギング メイト」用に設計された周辺機器。
4つの方向キーと2つのボタンパッドを備えた試作品が1984年12月のエレクトロニクスショーでデモされたそうです。残念ながら未発売なのですが、運動不足の今こそやってみたい!
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もし発売されてヒットしたら、SCC対応でダンスダンスレボリューションの元祖はMSX版になっていたかもしれません🤣
⑨まさか中東製?哀愁の光線銃・ターミネーターレーザー
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光線銃という響きがもう既に懐かしいですよね。ファミコン専用光線銃シリーズはワイルドガンマンなどが1984年に発売されましたが日本ではあまりヒットせず、そのまま立ち消えになってしましました。ところがMSXでは公式雑誌のMSXマガジンで1990年1月にいきなり登場し、MSXユーザー達を唖然とさせました。正直「今更光線銃かよ!」という雰囲気でしたが、調べてみるとかなり複雑な過程を経て発売されたようです。
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家庭用ゲーム機の光線銃は日本ではヒットしませんでしたが、海外、特にアメリカでは空前の人気でした。その米国ファミコン用の光線銃を流用したのがこのASCII Plus-X Terminator Laserなのだそうです。
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光線銃は専用ソフトが必須です。このターミネーターレーザーに同梱されていたのがダンジョンハンターというゲームなのですが、これが1990年というMSXturboR時代にMSX1なんですよ。MSXマガジンによると何でも最初にクウェートやサウジアラビアなどの中東でリリースされ、好評だったためというから驚きです。
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ダンジョンハンターは確かにいかにも洋ゲーという雰囲気の作品で、ホラーな雰囲気のガンシューです。ムチャクチャ面白そうですが、光線銃対応ソフトの第一弾がファンタジーというのが凄い。しかも結局発売は1991年1月にずれ込んでいます。お値段は12800円。tagooさんで調べてみたら最後のMSX1対応のROMゲームだったみたいです。
ちなみに光線銃はブラウン管TVでないと使用できないので現在プレイするのは相当難しいです。動画を上げていくれた方がいるのですが、フラッシュが多くて現在では復刻も難しそうですね。
⑩母上をキレさせたシャウトマッチ
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悪友のサンヨーくんはMSX仲間でも有名なクソゲー、アワワ個性的なゲームの収集家でした。そんな彼が1987年に飛びついたのがビクター音産発売のシャウトマッチ。小ぶりですが結構面白いアクションRPGなのですが、最大の特徴はマイクコントローラーが同梱されていること。
このマイクに向かって「わッ‼」と叫ぶと主人公も連動して衝撃波を放つという仕様。それなりの大声じゃないと反応しません。説明書にはマイクスタンドの作り方が丁寧なイラストで描かれています。
サンヨーくんに借り受けて面白がって遊んでいたら、母上に
「😡うるさい!出て行きなさい!」
と家から追い出されましたよ。その後スーパーランボースペシャルでも同じ目にあいました。
ちなみにスペースキーで同じように衝撃波を放つことが出来ます。でも叫んでみたいんだよ!🤣
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殴られますよ🤣
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⑪色違いの金太郎飴、メーカー純正ジョイスティック。おまけでカシオも
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MSX初代規格は1983年末に日本の大手メーカーから独自のマシンが発売されましたが、それに合わせて各社の純正ジョイスティックも制作されました。しかしトップ2のソニーと松下以外は殆ど同じタイプの色違いでした。これはいちいち説明するより前田尋之先生が作ってくれたこち亀コラを見た方が手っ取り早いです😁
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このタイプはかなり大量に生産されたようなので、使用したことがある方も多いんじゃないでしょうか。キヤノン、日立、サンヨー、パイオニア、ビクター、三菱、東芝、富士通、さらには海外メーカーでも使用されています。
ただ耐久度がイマイチで、僕は根元からボッキリ折れる現場を目撃しています😁折った本人の悪友X1くんは「MSXはジョイスティック(も)安っぽいなあ」と悪態をついていました。余計なお世話だよ🤣
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カシオファンの方からリクエストがあったので似たタイプのカシオTJ-7も紹介。資料によると1984年10月15日に発売されたPV-7と同時期に発売されたようです。カシオによると「本体よりも売れた」とのこと😁その後1986年11月発売のMX-101にもセットで販売されたそうなので、結構息が長かったみたいです。
僕も持っているのですが典型的な操縦桿型のジョイスティックで、これでなんちゃってスーパーマリオの仔猫の大冒険とかやると悲惨な目にあいます。しかしカシオのゲームをやる時はこのスティックでやらないと気分が出ませんよ!
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⑫パソピア7のイカレた仕様
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上部の説明文に注目!
番外編でMSXではないんですが面白かったので紹介。東芝の悲運の名機パソピア7。8ビット御三家に対抗するポテンシャルを持った実力派のマシンです。ところがこのパンフレットには「拡張ユニットを使うことによりジョイスティックを14本までつなぐことができる」という謎の機能が🤣これに対応するゲームは発売されたんでしょうか。
⑬海外の変態達
MSXは人類初の世界統一規格PCですから、当然海外でも多種多様なジョイスティックが発売されました。最後は海の向こうの珍品をダイジェストでお届けします。
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トリガーはサイドに 1 つだけ。
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こういった復刻版はどんどんやって欲しい。
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選択スイッチで(A) ATARI(B) MSX(C) Amstrad CPC (D) SEGA の間で切り替え可能。
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姿勢指示器が付属してますがインチキらしいです😁
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このタイプも(A) ATARI(B) MSX(C) Amstrad CPC (D) SEGA の間で切り替え可能。
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⑭ゲーム少年の相棒よ永遠に
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いや~気軽に始めたんですが、相変わらず膨大な量になってしまいましたよ。読みにくくてスイマセン😅
執筆しながら使いにくくてゲーム仲間とブウブウ文句を言っていたことを懐かしく思い出したりしました。何故こんなヘンテコなジョイスティックにゲーム少年は惹かれるのでしょうか。それは実用品としてではなく「おもちゃ」としての愛らしさに男の子の本能がくすぐられたのかもしれません。
今回2回に分けてのジョイスティック大特集でしたが、実はこれでも半分ぐらい原稿を削ってるんですよ。そう!正統派のアーケード型やおなじみのジョイパットの数々です。これらはまた機会を改めて投稿したいと思っています。
今回も長々とお付き合いありがとうございました🙇
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