神々の対談・すぎやまこういち先生インタビュー集
ゲーム音が音楽として認められない時代から東京オリンピックの入場曲へ…
ゲームミュージックを文化にへと昇華させた偉人、すぎやまこういち先生。数々の名曲が生み出された原点は先生が類まれなゲームフリークであったことだと思います。今回は先生が残されたインタビューを出来る限り集めてみました。
古代祐三先生との『もう一つの神々の対談』ほかを追加しました。
①神々の対談・植松伸夫氏
すぎやま先生と植松伸夫氏の豪華すぎる対談。1993年ドラゴンクエスト・ファイナルファンタジーの両シリーズとも脂がのっている時期になります。60代と30代と親子ほどに年の離れたお二人ですが、共にゲーム音楽家として話が弾んでいるのが伝わってくる内容です。
以前Twitterに投稿した時に著名なプロの方を含め多くの作曲家から「今でも学ぶべきことが多い」「お二人のやり取りに感銘を受けた」とコメントを頂きました。
また本当にすぎやま先生はゲームがお好きなんですね、読んでいて嬉しくなってしまいます。
②ドラクエファンの劇作家・鴻上尚史氏
すぎやま先生とは畑違いの方ですが、対談ではドラクエのマニアックな話題で盛り上がっています。
ゲーム漂流記はすぎやま先生がホストになっての連載でした。かなりのゲーム関係者と対談されているのですが、業界で最年長とも言える先生が常に相手をリスペクトしている姿に僕は感銘を受けました。「ゲームが好き」という絆を感じる素晴らしい連載でした。
鴻上尚史氏は1988年にDQ3の曲に歌詞を付けて歌ったCD、『ヴォーカル版ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』を発売しています。ラジオ番組オールナイトニッポンの企画として生まれた、当時のドラクエブームを感じさせるエネルギッシュな作品です。
この時すぎやま先生から直々にボイストレーニングを受けたとのことで、この対談はその時の縁なのかもしれません。
コスプレはプロ劇団員ではなく全員リスナーさん。「当日、好き勝手な恰好で来て下さい」と頼んだものなんだそうです。歌詞は「ドラクエに狂ってるやつら」からラジオ番組で募集したとのこと。この歌は「ファンみんなの共作」であると鴻上氏は回想しています。
③若きサウンドクリエイターとの論争
すぎやま先生は作曲を担当され、打ち込みは専門の人にという分業制を取っていました。これを「作曲家と演奏家の関係」と述べています。名作ジーザスはそのようにして完成したとか。それに対してサウンドプログラマーの冨田丈氏が反論するのですが…
しかし天下の奇ゲー『べんべろべえ』や『ごんべえのあいむそ〜り〜』を「あれは凄かったねえ」と即答する先生は凄すぎます。どれだけゲームに詳しいんでしょうか。セガのディープスキャンの音源を評価されているのも印象深いですね。そして「子供はだませない」の言葉には感じ入るものがありました。
④クラシックとGMの関係
もはや完全に定着したドラゴンクエストのクラッシックコンサート。その最初期に司会をされていた先生のインタビュー記事。ファミコンのPSG3音とクラシックの関連性を詳しく解説してくれています。
後半はアンジェラス 〜悪魔の福音〜についてのお話も。PC-8801のサウンドボードIIを「極めようじゃないか」と気合が漲っているのが伝わってきます。すぎやま先生というとドラクエのイメージが強いと思うのですが、当時のゲーム音楽の最新技術やパソコンゲームにも強い関心と情熱があったことが伺えます。
⑤木管4重奏でゲーム音楽を演奏
すぎやま先生が「管楽器の音は比較的PSGに似ている」という理由から、ゲーム音楽の楽譜をそのまま管楽器で演奏したコンサート。当日はスーパーマリオの作者、宮本茂氏との対談もあったとのこと。どんな内容か気になりますよね。先生はこういった実験的な試みを積極的に行っていました。それはゲーム音楽というものの可能性を広げたいという意思があったからだと思います。
当時のリリース文によると「ドラゴンクエストシリーズ」を初め、発売前の「スーパマリオ3」を含めた14曲をカルテットで演奏したそうです。吉野@連邦さん情報感謝です。
⑥ゲーム音楽の革命を目指して
『N響版 交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ』ではすぎやま先生が自ら指揮をされました。なんとその収録直前のインタビューです。
先生は「ドラマのようなゲーム音楽を作ってみたい。目指すところはゲーム音楽の革命」と述べています。映画音楽が一つのジャンルとして確立されたことと対比して、ゲーム音楽をその域まで昇華したいという先生の夢がタクトにこもっていたのではないでしょうか。そしてその革命は果たして成し遂げられたのか…それは皆さんが一番ご存じのことでしょう。
この時セガのディープスキャンの筐体を購入されたとか!凄いデカいでんですよ。
⑦ゲームミュージックは私の天職
読まれている方は百も承知でしょうが、すぎやま先生がゲームの作曲を始めたのは55歳の時。既に作曲家として多くの実績があり大御所とも呼べる存在でした。その先生がゲーム音楽という文化をさらに発展させようと努力してくれたことを、僕達ゲーマーは忘れてはいけないと思うのです。 2023年に鬼籍に入られた坂本龍一氏について述べていることに胸が熱くなります。
⑧ロックはシューティング・交響曲はRPG
スーパーファミコン版・交響組曲「ドラゴンクエストI・II」時期のインタビュー。「ロックはシューティングやアクション、オーケストラはRPGやシュミレーション」という言葉が印象的です。
また「オーケストラは知的なエンタメであり、人の魂を揺さぶる音楽を作りたい」という言葉も。これは先の「ドラマのようなゲーム音楽」に繋がっていると思います。先生の音楽は自分だけの物語をイマジネーションさせる魔法の様でした。そのドラマに僕達の魂は揺さぶられていったのです。
⑨ドラクエⅠより一世紀古典的
前述のドラクエのクラッシックコンサートの記事。ⅢはⅠより一世紀古典的なイメージだったそうですね。
この時先生は司会をされているんですが『動物の謝肉祭』の演奏にRPGのようなストーリーを付けて紹介してくれました。ここにも子供たちに音楽を通じて想像力を持って欲しいという願いが込められています。
⑩ガンダーラ畜生界で大暴れ
最後は番外編ですぎやま先生が登場するマンガを。
「ガンダーラ 仏陀の聖戦」はダイナミックプロの漫画家槙村ただし氏、 名プログラマー日高徹氏、すぎやま先生といった実力派がトリオを組んで作製した異色のRPGです。
最大の特徴は仏教世界を舞台としていることなんですが、その紹介漫画で先生が大暴れしてます🤣
「エニックス通信」87年5月号で制作者のコメントが掲載されています。
先生は効果音も担当されてたんですね。オリエンタル・ムードを表現してゆくということに興味があったとのこと。ガメラ音楽(バリ島を中心として広まったインド圏の音楽)を取り入れたそうです。
⑪もう一つの神々の対談・古代祐三氏
88MULTiⅡさんのブログ『日本レトロゲーム誌研究会電子化部』からの転載、感謝です🙇
1992年の古代祐三先生との奇跡的な邂逅。時期的には業界に衝撃を与えたアクトレイザーの後位なのでしょうか。若き日の天才古代氏にゲーム音楽の未来を託すような素晴らしい内容です。
流石の古代氏も緊張気味のスタート。しかしGMだけでなくクラシックやゲーム音楽コンサート、そして何よりゲームフリークとして二人が意気投合する様が伝わってきます。
しかしトミーのぴゅう太(くん)とか光速船といったマニアックな言葉がお互い自然と出て来るのが凄いですよね。すぎやま先生の
「古代さんの眼はアクションゲームに強そうな眼だものね」
と言う言葉が印象的でした。
https://retoge-mag.websa.jp/archives/321
⑫すぎやま先生マンガで登場
88MULTiⅡさんのブログ『日本レトロゲーム誌研究会電子化部』からの転載、感謝です🙇
1990年の記事で最近ゲームボーイの魔界塔士Sa・Gaをクリアしたとのコメントが。毎号ファミマガをお読みになっているというのも驚きです。
https://retoge-mag.websa.jp/archives/110
⑬すぎやま先生ドラクエ音楽を語る
88MULTiⅡさんのブログ『日本レトロゲーム誌研究会電子化部』からの転載、感謝です🙇
2000年の記事なのですが、本当にドラクエ100まで作曲されて500歳まで生きて欲しかったです。
「ドラクエのテーマは人間愛」「それぞれのシーンを音楽と共に堪能してもらいたい」という言葉に涙が出そうです。
https://retoge-mag.websa.jp/archives/4311
⑭元祖プロゲーマー宣言
1992年のスーファミ版「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」のインタビュー。
「なるべく美味しものを食べ、良い音楽を聴く」
正しく至言です。
⑮すぎやまコレクションへようこそ
1990年の先生のゲーム自慢と題したコラム。お宝コレクションが満載です。
Atari 2600やインテレビジョン、ぴゅう太Jr、カシオPV-1000とマニア垂涎の品ばかり。しかも箱付。果ては「メーカー名不明」の品まで。まさにゲーム博物館です。
またボードゲームにも造詣が深く、こういった面が先生の音楽の懐の深さに繋がっていたのかもしれません。
⑯アルバム広告・資料
エニックス・ゲーム・ミュージック
最初期のすぎやま先生のPCゲームミュージックが堪能できます
交響シンセ組曲「46億年物語」
実験的な作品ですが音楽は必聴。
ドラゴンクエスト交響組曲
すぎやまこういちゲーム音楽作品集
先生が自ら企画監修したゲーム音楽作品集。シンセサイザーのアレンジ版。
⑰ありがとう先生、僕達に出来ること。
すぎやまこういち先生の音楽は偉大なるゲームと共に100年後も聞かれていることでしょう。しかし先生がどのような想いを込めてこの音楽を紡いでいったのか…それを後世に伝えるのはリアルタイムで体験した僕達の役目のように思うのです。
もし先生のことを知らない世代が曲を聞いた時、皆さんがゲームを何より愛してくれたすぎやま先生のことを伝えて欲しい…。そんな願いを込めて今回の投稿を綴ってみました。