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アジアのコーヒースタートアップ 2019年版

数年前にアメリカで盛り上がった、BLUE BOTTLE COFFEEPhilz Coffeeを始めとするコーヒースタートアップが、最近はアジア(東アジア、東南アジア)でも違った特徴をもって盛り上がりを見せてます。

特に中国のluckin coffee(瑞幸咖啡)を筆頭に、連日コーヒースタートアップの大きな資金調達のニュースが飛び交っていますが、実際どのようなビジネスモデル、特徴をもっているのか整理してみました。
※ひととおり「スタートアップ」と言われているものを集めてみましたが玉石混交です 笑

自己紹介
PostCoffeeというコーヒーのスタートアップをやっています。4月半ばから自宅向けスペシャルティコーヒー豆のスマートデリバリーを始めました。今年の夏過ぎからはコーヒーのオンデマンドデリバリー&テイクアウトスタンドを全国でバシバシ展開していく予定です。

luckin coffee(瑞幸咖啡) (中国)

アプリでしか決済、注文ができないコーヒーショップ。O2O、OMOのコーヒービジネスとして急成長、注目を浴びている。テイクアウトとデリバリーがメイン。

2017年10月に創業、2019年3月末で2,370店の店舗数に拡大した。2019年中に4,500店舗まで伸ばす目標としている。広告の派手な出稿、クーポンのばら撒きでユーザー数を広げている。ユーザーのレビューからテイストに対する厳しい批評などが散見される。4月下旬にNASDAQに上場を申請。2018年の売上高は1億2530万ドル、最終損益は2億4130万ドルの赤字。

商品は20元(約320円)前後が多く、スタバより2、3割安い。

創業からの凄まじいスピードでの拡大に話題を欠かないluckin coffeeですが、最近になってシェア自転車ofoの二の舞になるのではという声も聞かれるようになってきました。中国スタバもアリババ傘下の食品配送アプリEle.me(餓了麼)と提携し、デリバリー事業を拡大したり、後述のCoffee Boxの大型資金調達など、中国コーヒー市場の取り合い合戦が繰り広げられています。

Coffee Box(連珈琲) (中国)

WeChatやMeituanなどを介しスタバやコスタなどの外資コーヒーチェーンのコーヒーをオンデマンドでデリバリーをするサービスとして2012年7月に上海で創業。

2015年8月から自社ブランドを開発し、テイクアウト、リアル店舗の事業を展開。中国全土に400店舗を構えるまで成長した。しかし次の投資ラウンドのための収益性の改善のためピーク時の30〜40%の店舗を閉店。luckin coffeeの上場申請のニュースと近くして4月下旬にシリーズB+ラウンドで約34億円の資金調達を発表した。改めて店舗拡大を図ると共に、具体的には明確ではないが、新しいコーヒーのプロダクトを地域を限定してテストしている。商品は30元(約480円)前後とスタバと似ている。

lucking coffeeよりもだいぶ早くサービスロンチしていたが、その座を奪われた形になっている。ビジネスモデルもほぼ同じだが、Coffee Boxに関してはミニマムアセットで展開をすることで早いうちから利益を出すことに成功している。

ratio(比率) (中国)

2018年夏、上海のショッピングモールK11にオープンしたロボットがエスプレッソドリンクとカクテルを作るカフェバー。WeChatのミニプログラムを通じ、ユーザーの好みに合わせてカスタマイズして注文することができる。店内にもちろんキャッシャーはなく、出来上がったドリンクには名前入りのシールが貼られ、それをスタッフが持ってくる。

スタートアップとはまた違った形態ですが、自動化できる大部分をテクノロジーで置き換えているという部分で、これからのOMOの在り方が見えてきます。ratioはまだコンセプト段階としていますが、ユーザーの注文を保存し、AIを使用して好みを学習、次回以降の来店時にレコメンドをするみたいです。

Fore Coffee (インドネシア)

2012年の創業したOtten Coffee(普通のコーヒー屋)が2018年8月からデリバリーに移行。スペシャルティコーヒーのみを使ったオンデマンドコーヒーデリバリー。主要ショッピングモールなどを中心に2019年3月で35店舗を展開。1月時点では19店舗だったので約2倍に拡大した。

注文と決済は専用のアプリを使用、配送プラットフォームとしてGo-Jek、Grab、など既存のサービスを使っている。アプリは50万ダウンロードを記録。

2019年1月からのシリーズAラウンドでトータル950万ドルの資金調達をしている。2019年6月末までに既に100店舗をオープンすることを目指している。

インドネシアは人口約2億3000万人と日本よりも多いのですが、焙煎コーヒー豆のマーケットは日本と比べ約2/3と小さいようです。弊社PostCoffeeと同じスペシャルティコーヒーに特化したコーヒースタートアップが10億円規模の資金調達をしたのに驚きました。インドネシアはスペシャルティコーヒーの生産国としても有名なので、農園も含めたバリューチェーンがエコシステムの確立に寄与すると考えられます。

Kopi Kenangan (インドネシア)

2017年8月に創業。Fore Coffeeと同じくテイクアウトとデリバリーを主軸としたコーヒーチェーン。2018年10月に約8億7400万円の資金調達をしている。2019年2月時点でジャカルタに22店舗という記述があるが、現在(2019年5月)わずか3ヶ月で72店舗に成長している。以降100店舗の展開を目指している。

Fore Coffeeと比べるとコーヒーが安価、そしてコーヒーカップのフタがビニールのラッピングになっているのがポイントですね。(タピオカドリンクみたいな)

前述のFore Coffeeといいインドネシアのコーヒー市場はもっと大きく成長しそうです。それに伴って、アジア全域でもコーヒーをオンデマンドでテイクアウト、デリバリーというのが一般化してくると思います。

Hook Coffee (シンガポール)

2016年1月創業。コーヒー豆のサブスクリプションサービス。コーヒー豆の好み、飲み方、飲む頻度などパーソナライズしサブスクすることができる。商品は豆だけではなく、ドリップバッグ、抽出方法別のスターターキット、ギアなどをラインナップしている。

助成金5万ドルで創業し、1年半の間に1万ユーザー、50万杯以上のコーヒーを売り上げている記録がある。2017年に海外展開を視野にいれ、追加で25万ドルの資金調達をしている。

Hook CoffeeのWebサイトでプランをカスタマイズし、メール便でコーヒーが届くスタイルはPostCoffeeと似ています。シンガポールは世界的にも有名なローカルコーヒーショップがいくつか存在します。ただし実際シンガポール国内の焙煎珈琲豆の市場はとても小さく、日本の数%程度というデータもあります。ただし市場の成長率はまだ高いこともあり、後述のPerk Coffeeのようなサービスと共にさらに競争は激化していくと考えられます。

Perk Coffee (シンガポール)

2015年10月創業。コーヒー豆のサブスクリプションサービス。Hook Coffeeと同じく、Webサイトでサブスクリプションプランをカスタマイズする。他にもギアやギフトなどもラインナップする。シンガポール国内だけではなくマレーシア向けにも配送をしている。コーヒー豆は主にスペシャルティコーヒーを使用し、シンガポール国内で焙煎をしている。

サービス内容はHook Coffeeと瓜二つですが、創業者がオーストラリア出身ということもあってか、全体のクリエイティブが欧米な雰囲気が出ています。シンガポールはもともとお茶文化があったのですが、2011年を皮切りに急にコーヒー市場が成長してきました。その一因として、ネスカフェのポッド型インスタントコーヒーがバカ売れした時期があったようで、その名残がこういったサービスの商品ラインナップに残っていますね。

CAFEBOND.COM (シンガポール)

オーストラリアを中心とした有名ロースターのコーヒー豆をオンラインで販売しているスタートアップ。MaGICなどいくつかのアクセラレータープログラムを経て、資金調達をし2016年6月に創業。

いわゆるコーヒーのセレクトショップですね。海外のロースターは国際便を取り扱っているところも多く、日本からでも購入できるところがあります。ただし、わずか250gのコーヒー豆を送ってもらうのに送料が30〜40ドルほどかかることがほとんどです。これをCAFEBONDは自社で大きく仕入れて、国内そしてマレーシアへオンラインを通じて販売しています。

Medano Coffee (シンガポール)

2014年創業。ネスプレッソやドルチェグストなどで使用するコーヒーポッドをオンラインで販売、サブスクリプションを提供している。アラビカ種100%を使用し、最高品質のコーヒーポッドを謳っている。また最も高価なコーヒーポッドのギネス記録も持っている。

シンガポールならではのコーヒーポッドに特化した異色のコーヒースタートアップ。自らをスタートアップを称していますが、資金調達などのニュース、リリースは見受けられず。。

CoffeeBot (マレーシア)

本格的なエスプレッソドリンクを提供する自動販売機のスタートアップ。2018年に第1号機を設置してから現在でおよそ25機をクアラルンプール中心に展開している。

日本ではいつでもどこでも目にする自動販売機ですが、海外はセキュリティの観点から設置場所はショッピングモールやホテルなど限定的です。マレーシアでも同じで、かつ自動販売機はどちらかというと無人コンビニとして販売商品にバリエーションをもたせたものが多いみたいです。

コーヒーをその場で抽出してくれる自販機は日本ではさほど珍しくありませんが、写真のように前面が大型ディスプレイになった筐体は海外では珍しく、スタートアップとしてスケールする見込みがあるのでしょうか。

具体的なスケールの計画などは見られませんでしたが、自販機管理の求人は多く出しているようなのでこれからも設置数を伸ばしていくようです。

Copper Cow Coffee (ベトナム)※アメリカで展開

2016年に創業、500 Startupsのアクセラレータープログラムを経て、1億1000万円の資金を調達後、2018年11月に2億2000万円の資金調達を終えている。ベトナムコーヒーをフィーチャーし、ドリップバッグと甘めのミルクをセットにしたものをオンラインで販売、他にサブスクリプションを提供している。商品はベトナムコーヒーを軸に、タイティーやフレーバーのついたラテなどユニークな商品ラインナップ。スーパーや量販店にも卸している。

ベトナムコーヒーにフォーカスして、アメリカで展開するという面白いサービス。たしかにベトナムはコーヒーカルチャーがガラパゴス化されており、今回コーヒーのスタートアップをリサーチするも見つからずでした。そこを逆手にとって、コーヒーカルチャーが根強いアメリカで展開をしたのが成功の鍵だったのかもしれません。

日本はどうなの?

実は国内のコーヒー業界は20年以上前にスタバが上陸してからずっと、ビッグプレーヤーが出ていない業界です。そのため日本のコーヒーのメインストリーム層はだいぶ遅れをとっているのが現状です。スペシャルティコーヒーの消費量の割合がアメリカだと50%以上なのに対し、日本ではまだわずか5.8%日本人はみんな不味いコーヒーを飲み続けています。。

PostCoffeeは美味しいコーヒーまでの距離をできる限り近くして、いつでもどこでも美味しいコーヒーを飲める世界を作っていきたいと思っています!ご意見、アドバイス、相談、紹介などなど、twitterまで気軽にメッセージいただけると嬉しいです☕

追記 (2019/06/13)

実際にアジアのコーヒースタートアップを体験してきました。


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