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いい休日と、マイブーム。

秋の陽が心地よい休日。

いつも通りパンとコーヒーで朝食を済ませ、まずは洗濯機のスイッチを入れる(今日はよく乾きそうだ)。秋晴れの空に洗濯したてのシャツやタオルを目一杯干したあと、今度はしばらく洗っていなかったマイカーを洗車機にかけようと家を出る。それが終わったら一週間分の食料の買い出しをして……なんて事をやっていたら、午前中はあっという間に過ぎて行った。

お昼は何も作る気になれなかったので、近所のショッピングモールまでテクテク歩き(徒歩3分)、フードコートに入っている丸亀製麺で「とろ玉うどん」と「かしわ天」を食べた。久々に食べたが、美味しかった。

そのままモール内にある紀伊國屋書店へ行く(大体いつもこのパターン)。店内をブラブラしながら(そうだ読みたい本があったんだ)と検索機を使って、本の在庫と置いてある場所を確認する。おーあったあった。探したのは、一穂ミチさんの『スモールワールズ』。

今、私の中では絶賛「一穂ミチ」ブームが起きている。ご存知の方も多いと思うが、一穂さんは今年7月にコロナ禍での犯罪をテーマにした短編集『ツミデミック』で第171回直木賞を受賞された。

しかしながら、私がハマったきっかけは『ツミデミック』ではない。私が最初に読んだ一穂ミチ作品は、BL小説である。

BL、というと「腐女子」という言葉があるように若者文化の一つであり、自分には理解出来ない世界だと思っていた。けどそれは、半分は正しくて半分は違っていた。もちろんBLを好むのは、若い世代の女性が多いというのは間違いないと思う。だが実際にドラマや漫画や小説をいくつか見てみると、理解出来ないどころか、どうしてどうして結構面白いのである。

私がBLを見るようになったきっかけは『僕らの食卓』というドラマだった。人と食事をするのが苦手な主人公の青年が、ある日公園で年の離れた兄弟に出会い、なぜか「おにぎり」の作り方を教える事になる……というストーリー。このドラマをAmazonプライム・ビデオで、(BLものだとは思わずに)何の気なしに見始めたのだが、これが予想外に良かったのである。で、他のも見てみようかという気になった。

正直、ちょっと合わないなと途中でギブアップしてしまった作品もあるけれど、逆に『汝、星のごとく』で2023年の本屋大賞に選ばれた、凪良ゆうさんの小説が原作となっているドラマや、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の脚本家、吉田恵里香さんが脚本を手掛けたドラマなどはかなり面白く見た。

そんな流れからの、「一穂ミチ」ブームである。

一穂さんの小説は、上手く言えないけれど、BLという箱にキチンと収まるようにキレイに書かれているんじゃなくて、箱の中に収まりきらない登場人物たちの人間臭さ、みたいなものまですくい上げて描かれている気がする。

以前noteで紹介させていただいた『あの本、読みました?』という番組に、なんと一穂ミチさんがゲスト出演された回がある。

その中で一穂さんは「人間はミラーボールの様なもの。細かい多面体で出来ていて、その時にどこを見せているのか、どこが輝いているのか、どこが影になっているのか、という事だけなのだと思う」というような話をされていた。

そんな風に考える一穂さんだからこそ、彼女の小説の登場人物たちは(たとえそれが魔王みたいな突拍子もないキャラクターでも笑)、その人はちゃんとそこにいて、手を伸ばせばあたたかな体温を感じられる、そんな気がするのかも知れない。


紀伊國屋を出たあと和菓子屋さんの前を通ったら、おはぎがとても美味しそうだった。

よし、このあとは家に帰って、おはぎを食べながら本を読む。それで決まりだ。そう考えたら心はもうウヒウヒである。

ああ、いい休日って、こういうものなんだなぁとしみじみ思った。

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