京丹後の夏旅
京丹後の海が美しいことを知ったのは、去年のことだった。
夏の陽光がまぶしい7月半ばの週末だった。
天橋立ビューランドから、その名前の由来ともなった、天に掛けられた橋のような地形を眺めた。
そして、ひときわ白く輝いていた砂浜部分の天橋立海水浴場で泳いだのだ。古くから歌にも詠まれた天橋立で泳げるなんて知らなかった。
京丹後の海旅はさらに続き、伊根の舟屋まで足を延ばした。
透きとおった宝石のように青く煌めく穏やかな湾。
水際に沿って舟屋がならんでいる。
日本のヴェニスと言われる実に美しい風景である。
冷たい青い飲み物で身体を満たして、心まで透き通っていくような気持になった。
次に京丹後を訪れたのは、去年の9月後半のこと。過行く夏を追いかけるように旅をした。
朝早く、トイレ休憩とお昼ご飯の下見をするべく、京丹後の道の駅「丹後王国 食の都」に立ち寄った。
ちいさな動物園があり、王様のようなヒゲを蓄えたヤギが高いところに登って「王国に朝が来た!」と叫ぶように鳴いていた。
ヤギの鳴き声があんなに大きくて人間のような声だとは知らなかった。面白くて声がするたびに笑ってしまった。
どうやらおひるごはんはBBQかな?と検討を付けてから、琴引浜に向かった。
琴引浜はキャンプ場があり、2023年の駐車場料金は1000円で、浜の管理に充てられるとのことだった。
トイレも水シャワーもあり、設備が充実している。
キャンプ場側の駐車場から浜へ降りていくと、係員の方が鳴き砂の実演をしてみせてくれた。きゅ、きゅ、とかわいい音がする。
乾いているとよく鳴くという。その日は雨の翌日で浜はまだ乾いていなかった。
9月後半なので、泳いでいる人はあまりいなかった。
浜に温泉があり、足湯としてあたたまっている人々がいた。
この温泉が気持ちよかった。常にたっぷりのお湯がホースからジャボジャボ出ている。海を眺めながら温泉につかれるなんて最高だ。
海は少し荒れているようだったが、入ってみると水が透き通っていて、海藻が多く、小さな魚やボラがたくさん泳いでいた。
フグやカワハギ、タコもいた。
ここは面白い!夢中になって泳いでいると、そのうち一緒に泳いでいた兄がいないことに気が付いた。
浜の方を眺めると、温泉につかって温まっているようだった。
ああ、よかった。温泉があると助かるなあ。
水温はそんなに低くなく、夏の名残の熱がまだ海に残っているようだった。しかし、9月も後半である。
さすがに、寒くなったので温泉つかる兄に合流して暖をとった。
冷えた身体が足湯でぽかぽかになった。いいお湯だなあ。
次回は絶対トップシーズンにこよう、と心に誓った。
その思いは次の京丹後の旅へとつながるのであった。