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資本主義?共産主義?—日本という不思議な国
十数年前だったか『ブラック・ジョーク』という本を読み、その中にあった話をご紹介します。ブラックユーモアが強めの内容ですが、現在の我々にはとても響く話だと思います。
バージョン1 「日本=共産主義国家」説
ある日、世界の政治学者たちが集まって議論していた。
アメリカ人:「共産主義なんて、国家がすべてを管理して、個人の自由がない最悪のシステムだよ!」
中国人:「いやいや、うちは一党独裁だけど、資本主義的発展もしてるから違うぞ。」
ロシア人:「うちは昔試したけど、失敗したからやめたんだ。」
そこへ日本人がのんびりお茶をすすりながら言った。
日本人:「えっ、日本って共産主義国家だったの?」
アメリカ人:「日本は資本主義の最前線だろ?」
日本人:「でもさ、日本ってみんな平等に貧しくなってるし……」
中国人:「……それは計画経済の特徴だな。」
日本人:「給料は年功序列で決まるし、労働者は長時間働いても革命しないし……」
ロシア人:「……まるでソ連時代の我々じゃないか。」
日本人:「政府は企業とズブズブで、市場をコントロールしてるし、大企業は倒産しないように守られるし……」
アメリカ人:「それ、国家資本主義じゃないか?」
日本人:「でもみんな『自由』って言いながら、実際は管理されてて、組織のルールに従うのが当たり前だし……」
中国人:「ちょっと待て、それ完全に我々の社会主義モデルと一致するぞ。」
日本人:「だろう?しかも、役人が作った規制だらけで、みんな『本当はおかしい』と思っても何も変わらない……」
ロシア人:「……あれ、日本って共産主義の実験に成功した国なのか?」
アメリカ人:「ちょっと待て、それでいて日本は世界有数の経済大国だろ?どうやってるんだ?」
日本人:「まぁ、みんな空気を読んで、我慢してるだけだよ。」
議論が終わった後、全員が密かに「日本が一番共産主義をうまく運用しているのでは?」と考え始めた。
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バージョン2:「CIAとKGB 日本を疑う」
冷戦時代、CIAとKGBのエージェントが日本の調査報告を持ち寄っていた。
CIAエージェント:「日本はアメリカの盟友で、自由市場経済の模範だ。」
KGBエージェント:「それは違う。我々の報告では、日本は共産主義国家だ。」
CIA:「バカを言うな!証拠は?」
KGB:「まず、国民は全員似たような服装をしている。スーツ、制服、作業着、どれもシンプルだ。」
CIA:「……確かに。」
KGB:「労働時間は長く、給料の差は少なく、全員が平等に疲弊している。」
CIA:「……それもそうだな。」
KGB:「政府は企業と密接に連携し、市場をコントロールしている。さらに、国民は政府の方針に従い、デモもほとんど起こらない。」
CIA:「……マジか。」
KGB:「しかも、企業のトップは基本的に党のような組織の決定で選ばれ、世襲も多い。完全な社会主義モデルだ。」
CIA:「おいおい……まさか、本当に日本は共産主義国家なのか?」
2人は沈黙した後、同時につぶやいた。
「もしかして、日本は冷戦の本当の勝者なのか?」
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バージョン3:
ベルリンの壁崩壊を観て嘆くマルクス
天国でレーニンとマルクスが地上の様子を眺めていた。
マルクス:「ああ、レーニン……ついにベルリンの壁が崩壊したぞ。」
レーニン:「おお、歴史がまた動いたな。だが、これは我々の敗北ではないか?」
マルクス:「そうだ……労働者たちは自由を求めて東から西へと雪崩れ込んでいる……なぜだ? なぜ彼らは資本の支配を選ぶのだ?」
レーニン:「おそらく、我々の理想を正しく理解しなかったのだろう。」
マルクスは深いため息をついた。
マルクス:「こんなはずではなかった。資本主義は崩壊し、プロレタリアートが世界を支配するはずだったのに……。」
レーニン:「まぁ、嘆くなカール。ほら、日本を見てみろ。」
マルクス:「ん?資本主義の最前線のはずでは?」
レーニン:「いやいや、労働者は長時間働き、賃金は平等に低く、ストライキも革命も起こらないぞ!」
マルクス:「おお……これはまさに我々の夢見たプロレタリアートの楽園ではないか! しかし、どうやって?」
レーニン:「知らんが、政府は企業を助け、倒産を防ぎ、市場を管理している……計画経済そのものだ。」
マルクス:「労働者は壁などなくても逃げようとしない。むしろ、自らその社会を支えている……!」
マルクスはしばらく考え込んだ後、再び深くため息をついた。
マルクス:「……レーニンよ、もし我々が最初から“日本式”を採用していたら、ベルリンの壁など必要なかったかもしれんな。」
2人は天国で、崩れ落ちるベルリンの壁を静かに見つめ続けた。