コリアインヴェイジョン 地獄の果てまで連れていく (2025年製作のドラマ)

韓国ノワールを思わせる復讐劇。一話20分でサクサク進むのと佐々木希の見た目によって興味深く見ることができた。丸顔の見本のような丸顔と大きな目と顎から首にかけて谷ができないたまごっぽい容貌。演技力というよりアイキャンディだった。比べて復讐対象となる女優の貼り付けたような笑顔が憎たらしいのなんの。片方にシンパシーを集める効果的な配役だった。

佐々木希というと旦那のスキャンダルが連想されるがおそらく被浮気によって同情票があつまり結果的に価値を高めてくれたことを内心ほくそえんでいるような気がする。芸能界を泳ぐ人がしたたかなのは当然で、うるわしい見た目であれば姫かといえば世の中そんなことはない。ふりかかる慰撫的空気にうるせえわ関係ねえだろという感じではなかろうか。いや他人様の心中なんてわからないが。

オリジナル脚本を書いたイ・ナウォンは日本と韓国でドラマを学んだ人だそうで、ネットで見つけた記事によると──
『韓国の中央大学演劇学科劇作専攻卒業し、韓国放送作家協会教育院卒業。(脚本家のキム・ジウ氏に師事)その後、SBS連続ドラマ『お願い、キャプテン』をはじめ、韓国でドラマの脚本アシスタントとして働く。2016年、日本に留学。東京藝術大学大学院映像研究科脚本領域に入学し、脚本家の坂元裕二氏に師事。卒業後、日本を拠点に脚本を書いている。』と書いてあった。
韓ドラの現場を経験したうえ板元裕二氏に師事というのは最強の経歴ではなかろうか。

韓国にはいじめや大切な人の喪失をへて復讐へ至る映画・ドラマが多い。
パクチャヌク復讐三部作、復讐者に憐れみを(2002年)オールド・ボーイ(2003年)親切なクムジャさん(2005年)や悪魔を見た(2010)がその最適解だと思うが、復讐心が中核にある映画となれば主要韓国映画と監督がそこに入ってしまう。パラサイトやペパーミント・キャンディーだっていわば復讐心である。チェイサーや哀しき獣もいわば復讐心、春夏秋冬そして春の世界観にも復讐心がある。イチャンドン、キムジウン、パクチャヌク、ナホンジン、キムギドク、ポンジュノ・・・現代韓国を代表する監督に復讐テーマは欠かせない。なにしろ怨の国柄、復讐はつきもの&お家芸とみていい。

ただしエンタメに据える復讐はそこまでシリアスにする必要がない。復讐をエンタメ化するときに大事なのは観衆の処罰感情を煽ること。処罰感情を煽るには攻撃者に同情の余地をあたえないこと。悪魔を見たに出てくるミンシクのように比類ない加虐性をもった悪を描き込んでおいてから復讐をねっとりやる。悪いやつを手加減せずどこまでも悪に描くことでスッキリする勧善懲悪へもっていく。それが復讐エンタメの基礎で韓ドラはそれが巧い。なにしろお家芸である。

地獄の果てまで連れていくはその辺りの需要を満たして、深夜ドラマ枠らしく見て寝ることができる軽さも備わり、ちょうどいい感じ。
仇となる麗奈およびインフルエンサー界隈を腹黒い港区女子ぽい雰囲気で描いて、憎たらしさを加速させていく。麗奈役女優の笑顔がうさん臭くて憎まれ天性を感じるのに対して佐々木希が「くいっ」と目を見開いて激高しているのにむしろ微笑ましいという不思議。たとえば狂乱する小沢真珠は演技がじょうずという形容とは違うが楽しい見応えがある。そういう楽しさがあった。

韓ドラが人気なのは以前からだが韓国の脚本家が日本へ進出してくるのは新しいフェイズだと思う。じぶんは保守的だが、ことエンタメ界隈に関しては韓国のインヴェイジョンがこの調子で進行してもいい。日本映画ってぜんぜん要らなすぎる。いっぺん全滅して再構築されたほうがいい。

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