津次郎

映画レビューなど。 vulnerable9115b.hatenablog.com

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最近の記事

もうデヴィッドボウイもプリンスもいないんだなあ・・・洋楽厨だったあの時代を思い出すサントラ プリティ・イン・ピンク~恋人たちの街角

むかし映画フットルース(1984)というケヴィンベーコン主演のダンス映画があり、そのサントラがものすごく売れるという現象があった。 そして、フットルースのサントラを買ったり聞いたりした人のほとんどが「サントラというものはやたら魅力的に感じられるのに反して、じっさいにはさほど聴かないもの」と知ることになった──のだった。 しかしそれを知った人でも、映画を見て衝動的にサントラを買ってしまうことがあった。 わたしにとって最も思い出深いサントラはプリティインピンク/恋人たちの街角だ

    • 遺跡への旅路 コンパートメントNo.6 (2021年製作の映画)

      Kanozero Petroglyphsはロシアにある遺跡だそうだ。岩石に動物の絵や文字が刻まれているが、意味はまだ解明されていない。フィンランドの女学生が列車に乗ってその遺跡を見に行く。その道中劇。 カンヌのグランプリ(二席)になりアカデミーの国際長編映画賞にもノミネートされている。が、個人的には当初の印象はあまりよくなかった。 主人公は女性だが寝台列車で見ず知らずの青年と相部屋になる。青年は狭いコンパートメントでタバコをふかし酒を飲んで酔っぱらっている。ロシアだから野

      • 35年ぶり ビートルジュース ビートルジュース (2024年製作の映画)

        ビバリーヒルズコップは(4つ目の)続編までに30年かかったがビートルジュースは35年かかった。 3作目の可能性について聞かれたバートン監督は「これつくるのに35年かかってるんだから計算したらつぎは僕も100歳超えてることになるわけで科学が進歩するにしたって無理ゲーだわ」(意訳)と言った、とのこと。 来歴によるとビートルジュースは1988年初作のあとすぐに続編の告知がなされ、恋するビートルジュースとか、ビートルジュース・ゴーズ・ハワイとか、ビートルジュース・ゴーズ・ウェスト

        • 日本酒、酒販における蔵元の哀愁

          webで拾った情報だが長野県には日本一多い7名の女性杜氏がいてそれぞれが評価の高いお酒をつくっているのだそうだ。(2022年のweb情報) 女性杜氏にはますますご活躍いただきたいと思うが、女性を押し出してマーケティングをはからざるを得ないところに日本酒の哀しさを感じることがある。 誤解のないように言っておくが、活躍中の女性杜氏は、女性であることを加点優遇されて酒が評価されたわけではなく、酒造りの実力が鑑評会等の公的機関から認められている。 彼女らには良酒を造る才能があり、

        • もうデヴィッドボウイもプリンスもいないんだなあ・・・洋楽厨だったあの時代を思い出すサントラ プリティ・イン・ピンク~恋人たちの街角

        • 遺跡への旅路 コンパートメントNo.6 (2021年製作の映画)

        • 35年ぶり ビートルジュース ビートルジュース (2024年製作の映画)

        • 日本酒、酒販における蔵元の哀愁

          人の頭んなかの解らなさ ヨーロッパ新世紀 (2022年製作の映画)

          映画は2020年におきたディトラウ外国人排斥事件というじっさいの事件にもとづいているそうだ。 ルーマニアのディトラウという村で、パン工場がスリランカ人を雇用したことに抗議し、ハンガリー系住民が牧師を陣頭に1,800の署名を集め市役所に嘆願書を提出した。 もともとパン工場の労働条件に不満があったことと移民への差別感情が重なり、嘆願書には労働条件の改善、移民の受け入れ停止、住民への補償や謝罪などの要求が盛り込まれた。 この事件はメディアで大きく取り上げられ、多数派ルーマニア民族

          人の頭んなかの解らなさ ヨーロッパ新世紀 (2022年製作の映画)

          教授のメランコリー 家族の肖像 (1974年製作の映画)

          若さを失うほど、若者との隔意とともに「おれはもう若くないんだな」という実感がやってくる。おおむね30代以降にそれがきて年をとるほどゆるやかに静まっていく。ゆるやかに静まっていかない奴もいて、そんな奴が若い女に執着して事件化することが定期的にある。 たとえば職場で若いアルバイトたちが休暇の旅行計画をねっしんに話し合っているのを小耳にはさむ。そこに仲間入りしようとは思わないが、もし誘われたらほいほいとついていくかもしれない。 じっさいには面倒だから仲間になりたくはない、だとし

          教授のメランコリー 家族の肖像 (1974年製作の映画)

          捕食の恐怖 アイズ・オン・ユー (2023年製作の映画)

          Woman of the Hourは殺人鬼Rodney Alcalaの実話。 1978年、当時身辺調査が緩かったためAlcalaはすでに5人の女性を殺害し12歳の少女に対する殺人未遂で有罪判決をうけていたにもかかわらずデートゲームという男女マッチメイク番組に出演した。 Alcalaによる被害者は警察の怠慢で累増し、後年DNA鑑定の進歩によって、じっさいには130人の殺害に関与したとされている。 カリフォルニア州が2019年に死刑執行の一時停止を宣言したためAlcalaの死刑執

          捕食の恐怖 アイズ・オン・ユー (2023年製作の映画)

          タイタニックミー 恋するプリテンダー (2023年製作の映画)

          グレンパウエルというとThe Dark Knight Rises(2012)のちょい役のイメージがあり、他の映画でも端役と脇役の中間のような扱いだったからブレイクは意外だった。晩成感があるがまだ35歳(2024年)だそうだ。 がちむちな男っぽさと適度なダサさで、見ているうちに意外性は消えた。頼れる男の気配とリラックスさせてくれる老成感(いい意味のおっさん臭)を持ち合わせていて、今後も高需要を維持する気がした。 導入のいかにもロマコメな出会いのエピソードに引き込まれたが、そ

          タイタニックミー 恋するプリテンダー (2023年製作の映画)

          色あせない青 パーフェクトブルー (1998年製作の映画)

          imdbに公開当時(1998年)のパンフレット画像があった。 パンフレットには大友克洋とロジャーコーマンと藤井フミヤの賛辞が載っていた。 そこで大友克洋はこう書いていた。 これはアニメであることに囚われずにつくった結果、PERFECT BLUEはアニメ映画としてでなく、たんに映画として人々に認知され評価されたという現象を、これより10年前の1988年にAkiraをつくった大友克洋が敷衍したものだ。 そしてPERFECT BLUEが、人々の記憶の映画棚に、アニメ映画という注

          色あせない青 パーフェクトブルー (1998年製作の映画)

          性格も古典 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ (2023年製作の映画)

          目的が功名心にまみれている──と思うことがある。 何をするにも、自分の内心に承認欲を感知してしまう。 ほめられたい、好かれたい、栄誉をさずかりたい、バイトくんから尊敬されたい、さりげなく自慢したい、多数のいいねやフォロワーがほしい──そういうことを、日常の端々で、連続的に思っている自分に気づくことがある。 しかし、それを言うなら世の全体がそうである。 大谷翔平のような天才ではないわたしたちは誰もが浮かばれるチャンスをねらっている承認欲のごまめである。SNSは謂わばその歯ぎし

          性格も古典 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ (2023年製作の映画)

          勝ち気な女 パスト ライブス/再会 (2023年製作の映画)

          相手を翻弄する女の人がいる。 じぶんは男だから、女の人は反発するかもしれないが、自由奔放でサクッと思い切ったことをする女の人がいる。 たんに男と女のちがい、ともいえるし、めずらしい現象でもないが、ナイーブな男は、そういう女に振り回されることがある。 映画はよかった。初監督となる新人だが日本の新人監督とは別物。しかるべき場所でしっかり映画を学んだ痕跡のある映画だった。事実あちこちで賞をとりアカデミー賞でもノミネートされている。(作品と脚本。) が、ノラ役のGreta Lee

          勝ち気な女 パスト ライブス/再会 (2023年製作の映画)

          日本人の良心 たそがれ清兵衛 (2002年製作の映画)

          真田広之は『SHOGUN将軍』のエミー賞受賞ですっかり時の人になった。ふしぎなほど(日本へ)戻ってこない人だったから特大の成果が出てよかった。安堵した。 侍の話なのに外国人にウケるつくりになっていることが賛否になっていたが映像作品は俗受けこそが正義。監修に飛躍が入っても構わない。ウケなければ何も伝わらない。ドラマも映画も観る人にウケることが大前提、じぶんは中華戦記のキングダムがしぬほどきらいだが、大衆にウケたならそれが勝ちであり正義だ、そういうものだと思っている。 『SHO

          日本人の良心 たそがれ清兵衛 (2002年製作の映画)

          熱演なのはわかる ミッシング (2024年製作の映画)

          沙織里(石原さとみ)は必死さをだそうとしているのがわかった。が、必死さをだそうとすることと、必死に見えるのはちがった。 砂田(中村倫也)は局の方針に疑念をもつ情け深い記者──という設定だが、昨日今日番組づくりをはじめた──わけでもない局内でヒューマニズムと視聴率主義が対立している様子にはムリがあり、結局憐憫をかせぐ状況をつくりだそうとしている気配が、リアリティを上回ってしまっていた。つまり世間の冷たい風にあてられる沙織里たちと、局内で葛藤する砂田を描くことで、惨禍を盛り上げ

          熱演なのはわかる ミッシング (2024年製作の映画)

          不幸の連鎖 あんのこと (2023年製作の映画)

          まず売春と薬物常習者である杏(河合優実)が描写される。底辺な生活環境と、母の春海(河井青葉)の毒親ぶりも併せて描かれる。 個人的に日本映画の壮絶人生描写には、はいはい悲惨ですね──という印象しかおぼえない。日本映画の、なんか衝撃を与えようとしてくるところが嫌だわ。 不幸な状況ほど淡々と描くべきだと思うが日本映画が100あると99は不幸盛り描写をしてくる。 この人物が不幸であることを否定するつもりはない。ただし不幸はたんたんと描かないと、凡百の日本映画に埋もれますよ。と言いたい

          不幸の連鎖 あんのこと (2023年製作の映画)

          腐敗した警察との闘い レベル・リッジ (2024年製作の映画)

          Jeremy Saulnierが書いて製作も編集も監督もやっている。やはりSaulnierが書いて監督したBlueRuin(2013)やGreenRoom(2015)をよく覚えている。独特でギリギリで苛烈なアクションスリラー。主要人物を絶対絶命or四面楚歌なシチュエーションへ落とし込んで、はらはらどきどきさせるのが巧い。本作でもその本領が発揮された。 現代劇だがプロットは西部劇のそれ。 足は馬ではなく自転車だったが、テリー(Aaron Pierre)は通りすがりのよそ者であ

          腐敗した警察との闘い レベル・リッジ (2024年製作の映画)

          思春期のメカニズム インサイド・ヘッド2 (2024年製作の映画)

          日本語脳で考えると頭の中の話なんだからインサイドヘッド。 邦題に文句をたれることがよくあるが、これは邦題のほうがしっくりくる。 しかし、それならinside outってのはどう訳したらいいのか。検索して意味を見ても分からなかった。 inside outは片耳に天使がいてもう片耳に悪魔がいて双方が交互に囁きあっている──という定型の心象葛藤表現を複雑化&可視化させた映画といえる。 前作のレビューに『悲しみを乗り越えて、崩壊した自我が戻ってくる過程=ヨロコビがカナシミの存

          思春期のメカニズム インサイド・ヘッド2 (2024年製作の映画)