027.日本に実施せられたる幾多の改良
スピーチは主として「伊藤博文伝(上)」(②春畝公追頌会、統正社)によります。以下文中( )内は、筆者付記です。
ここまではイントロ、相手国に対する儀礼とあいさつですね。
当時のアメリカは前述したように、独立を果たして100年、南北戦争も北軍の勝利で奴隷解放が進み、また、大陸横断鉄道も完成したばかり。蒸気機関や産業革命の成果を積極的に導入し、自らも工夫改善を進めて経済発展に自負を持っている時期です。
アメリカ人の日本への知識については、前年、伊藤博文がニューヨークに滞在していたときに、ペリーが帰国後に表した「日本遠征記」が公開されていることを確認し、米国内に「後進国=日本」のイメージが定着しているのを知っています。
そんな空気も感じたのでしょう、伊藤は、「今夕は、日本に実施せられたる幾多の改良に就き、精確なる概要を述ぶべき好機会なるべし。」と述べています。
日本国内では、1865年には横須賀に製鉄所が建設されて戦艦づくりが始められ、使節団が出発する時には、すでに新橋―横浜間の鉄道の工事も始められていて、半年後には品川―横浜間が仮営業します。「日本遠征記」の時代から、十数年が経過した現在、日本は急速に改良を遂げ、いまや昔の日本ではないぞ、ということを伝えておきたい。今日こそ、待ちに待ったその絶好の機会!という気負いがスピーチに溢れています。
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