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龍神さん

 龍神さんは九州の人で、看護だか介護の仕事をしていたらしい。
 龍神さんは、とある村で人々の悩みの相談をしたり、時には全身に塩を擦り込み、五穀豊穣や無病息災の行などをしていて、昔だったらそれだけで謝礼をもらったり家を建ててもらったりするものだが「今はそんな時代じゃない。」と言って名古屋に来て仕事をしているのだそうだ。

 龍神さんの右腕には以前精神科の看護師をしていた際に、患者に斬りつけられた傷あとが前腕から二の腕まで真っ直ぐに入っている。

龍神さんの面白い話しにこんなのがある。龍神さんは地下鉄に乗れないそうで、何故か尋ねると地下鉄には生きている人と死んでいる人が大勢いてどっちがどっちなのか、わからないからだそうだ。

龍神さんは気さくな人で、そのころ鬱病が酷かった私にアドバイスをしてくれたり仕事を手伝ってもらったりして大変世話になった。

 龍神さんとは2〜3年一緒に働いていたのだが、彼女と結婚するという流れで九州に帰ることとなった。

 それからしばらくはLINEで近況などを話し合っていたのだが、ある時龍神さんにとても不幸な事が起こりそれ以降連絡は途絶えたままになってしまった。

 あれから10年以上経つが、元気にしておるだろうかとよく思う。哀川翔に似てるとか、手相のここが真っ直ぐだったら徳川家康になれたとか、話半分ではあるものの、自分が励ましてもらった分、龍神さんにはしあわせになってほしいと願う。でも今となってはその頃を懐かしむだけしか出来ない。

 テレビでは霊が見えます。とか、娘が持ってきた未来が予言できるユーチューバーがいるだの、そういうよく分からない人たちが出てくる番組がたくさんあるが、龍神さんにはかなわねぇなあ。と、昔のことを思い出しながらひとり寝転んでぶつぶつと文句を言っている。

                  了

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