オンラインでのユーザーイノベーション
こんにちは、新卒2年目カスタマーセンターの子です。
#いまマーケティングができること
のキャッチフレーズのもと、先日、日本マーケティング学会の活動が再開し、マーケティング界の第一人者たちによる座談会が開かれた事をお伝えしました。
前回から僅か5日、早くも日本マーケティング学会のリサーチ・プロジェクト(分科会のようなもの)が行われました。
私の所属していたゼミの担当教授でもあり、日本マーケティング学会副会長・西川英彦先生を筆頭に活動しているユーザー・イノベーション研究報告会のリサーチプロジェクト(通称リサプロ)第10回。
今回は、サッポロビールのHOPPIN' GARAGEを取り上げ、運営メンバーをゲストに成功の秘訣を解き明かす座談会となりました。
HOPPIN' GARAGEは、ユーザーからビールのアイデアを募り、実際に試作品製造・実発売まで行ってしまうというもの。
いつもはオフラインで新商品発表会を行うHOPPIN' GARAGEですが、今回新しく誕生したそれが人生の発売日は4月16日。
コロナ禍の中、新商品発表会をオンラインで実施した事でも話題になりました。
今回のリサプロでは、
HOPPIN' GARAGEの仕掛人である、サッポロビール株式会社 新規事業開拓マネージャーの土代裕也さん
「それが人生」の発案者である、コピーライターの石井ツヨシさん
石井さんのストーリーをビールという形に具現化した、サッポロビール株式会社 商品・技術イノベーション部フェローの蛸井潔さん
HOPPIN' GARAGEにデザイナーとして関わった、株式会社スティーブアスタリスクの太田伸志さん
HOPPIN' GARAGEのユーザーコミュニティを運営している、株式会社キッチハイクの山本雅也さん
と主要人物が勢ぞろい。
HOPPIN' GARAGEの成功要因は何なのかというテーマで語って下さいました。
その中で、気になったフレーズが、土代さんが発した一言でした。
土代さん:(成功要因・戦略は何なのかという問いに対して)理論どうこうとかっていうよりも、正直「感じるところ」が大きいんですよね。わざわざ静岡まで発案者自身に来てもらって、一緒に膝を突き合わせて試作品作って、一緒に焼津まで出向いて飲み合わせて…そもそも、そういう熱さみたいなものを、ユーザーさん達から感じるんです。
この話を聞いた時、最初に私が感じた事は、
それだけ懇願されるアイデアを具現化するんだから、品質効果が影響して、機能的にも「本当に、良い商品」が生まれるんだろうな
という事でした。
小川・西川(2006)、Nishikawa et al. (2017)などによると、
ユーザーイノベーションには大きく「品質効果」と「ラベル効果」の2つの作用がある事が知られています。
しかし、ビールは実際に飲んでみるまで味等の「機能」が分からない商材です。品質効果は起きにくいはず。
現に、製造における専門性や高ステータス商材ではユーザーイノベーションが負の影響をもたらす事が知られていて(Fuchs et al. 2013)、特に前者は品質効果に負の影響をもたらすものと言えます。
通常なら、購買意向に負の影響をもたらし得ない状況。しかしそれを逆手に取って強みに変える仕組みをつくったのが、HOPPIN' GARAGEの凄さなのかもしれません。
HOPPIN' GARAGEでは、必ず製品化される前に「試作品」という段階を踏みます。しかも、ユーザーのアイデアを試作品にする段階で、プロの開発担当者がタッグを組みます。
こうする事で、製造の専門性(ここでは、味など)を担保すると共に、一定以上の質のものが仕上がる事が確約されるため社内合意形成プロセスとしても作用していると言えるのです(リサプロ内での西川先生の発言)。
マイナスを、プラスに。仕組み上でのイノベーションが、製品のイノベーションに一役買っている好例でした。