【続いてる写経 1106日め】〜ミュシャ展@八王子市夢美術館で学んだこと
所用にて八王子に行ったら八王子市夢美術館のポスターに目がいきました。
昔アール・ヌーヴォーにハマったことがあり、ウイリアム・モリスの装飾や、クリムトの絵画、もちろんミュシャのポスターも大好きでした。
今も変わらず妖艶な女性の姿に、心動かされます。
久しぶりにじっくりと観たくなって、用事のあとに立ち寄ってきました。
ふらっと寄るには、結構な枚数!!
ミュシャの描いた美女に囲まれる恰好でした。
今回の展覧会はミュシャの功績を順に紹介する形式。
彼を一躍人気画家に押し上げた《ジスモンダ》や、《黄道十二宮》など、有名な作品のリトグラフがずらり。
「アール・ヌーヴォーの帝王」として、一世を風靡したミュシャは、オーストリアから独立したチェコの名士として、お札や切手の図柄、さらには保険証書や有価証券のデザインまで手がけていました。
さらに、彼はアメリカでも大人気だったとのこと。
《スラブ叙事詩》という、スラブ民族の歴史を描いた作品群の製作費を稼ぐため、アメリカにも度々赴き熱心に仕事したそうです。
《スラブ叙事詩》は2017年に新国立美術館で、チェコ国外で初めて全作品が公開され、ワタシも観に行ったのですけれど、その時は
ミュシャにしては地味よね…。
と、そのライフワークを理解しかねました。せっかく大作実際に目にする貴重な機会だったのにも関わらず…。
当時、スラブ民族の歴史に馴染みがなかったこともありますね。
しかし、今や「スラブ民族」は時代のキーワード。
まさに今紛争地となっているウクライナ、ロシアはスラブ民族の国。
本来ならば「同胞」、なのに争っている悲劇。
その文脈の中、かなりセンシティブな作品も展示されてました。
革命後、貧困にあえぐロシアの復興を呼びかけ、描かれた《ロシア復興》。
展覧会主催側も、この作品に細かく解説と注意書きをつけておりました。
「決してロシアによる軍事侵攻を正当化するものではありません」
そうよね、色々な人がいるからねえ…。
今ミュシャが生きていたら、どんな立場をとったのか?
そんなことも想像してみてくださいと、呼びかける主催者側の誠意と、勇気を感じました。
ちょうど100年前には他国から支援を受けるほど貧しかったロシアが、紆余曲折を経て、今は世界のパワーバランスを撹乱し、隣国ウクライナを脅かし、「スラブ民族」同士で争っている。
ミュシャはもちろん、当時ロシアを支援した人々は、後々このような悲劇が起こるとは予想できなかったでしょう…。
《スラブ叙事詩》はパネル展示だけでしたが、以前観た時よりは、作品に込められたミュシャの同胞愛と熱量を感じられたように思いました。
ミュシャという人物とその作品の歴史的な立脚点がよくわかる、小ぶりながらもよい展覧会でした。
なんたってチケット代が非常に良心的、800円!!
写真撮影も全作品OK。
八王子夢美術館は、なかなかエッジが効いた企画展が多いのです。
今松濤美術館でやっている、アメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリーの作品展も、いち早く開催してました。
都心からも、しかも八王子駅からも徒歩20分弱と、ちょいと遠いですけれどね…。