見出し画像

グレタさんについてどう思うか、ヨーロッパの人たちに聞いてみた

今回は「聞いてみた」シリーズ。

僕はここ最近の8年間、日本を離れてドイツに住んでいて、この度また日本へ戻ってきた。

日本を離れる前と今の日本を比べてみると、良くも悪くも変化したことはあまり多くないと感じる。せいぜい、街の中を歩く人々のうちで結構な割合の人が、まるでスマホに操作されているかのように周りを見ずに歩くようになったこと。あとは電子マネーでの買い物が一般的になったことと・・あとは女性の化粧の雰囲気が大きく変わったことくらいかなぁ。

・・・せいぜいそれくらいかと思っていたら、夏になってからもう一つ発見したことが。

この8年の間に、日本の本州が、温帯湿潤気候から熱帯気候に変化していた。

いや、別に学術的な定義自体が変更されたという事実は無いと思う。

けど、日本を離れる前と比べると、同じ季節でも気温が格段に上がっている。体感的にはもはや熱帯と言った方が自然ではないだろうか。

よもや、わずかな短期間で気候がこんなに変化するとは思ってなかった。けれどもこれが現実だから、受け入れねばならぬ。


ということを経験して思い出したのが、ドイツに住んでいた当時(2020年)に、周りの友人に聞いてみた話。

環境活動家の「グレタさん」についてどう思うか聞いてみたところ、人によってコメントがかなり違っていて興味深かった。

グレタさんについて簡単におさらいすると、彼女は北欧スウェーデンの人。気候変動に対してあまり対策が取られていないことに対して抗議するため、15才だった2018年から学校でデモやスピーチを開始。

有名なのは、毎週金曜日に学校を欠席してデモを行っていたこと(「未来のための金曜日」)と、国連気候変動会議で挑発的な演説したこと。他にも、アメリカの当時のトランプ大統領とツイッターで皮肉の応酬を行ったり、何かとニュースの紙面を賑わしてきた。

画像7

そんなグレタさんについてどう思っているのか、ドイツに住んでいる人たちに聞いた話を書いてみる。

なお、話を聞いた相手はみなさんドイツに住んでいる人たちだけど、国籍はまちまち。もちろん各国を代表した発言ではなく、みなさん個人としての発言です。あと、この話題は年齢も影響するところが大きいので、ざっくりした年齢も書いておこう。

また、僕自身はここで特に何か政治的な主張をしたい訳ではありません。

「グレタさんについて、あなたはどう思うか?」

ハンガリー人女性(30才くらい)
「彼女は素晴らしいと思う。環境問題はみんなが意識して行動を起こさないといけない重要な話なのに、これまで捨て置かれていた。彼女はその話題を取り上げて、多くの人の注意を惹いて、実際に多くの行動を巻き起こしている。これは素晴らしい成果だよね。

彼女のことを『背後にいる国や組織の操り人形だ』と批判する人もいるけど、それを言う意味が分からない。誰から操られていようが、関係なくない?だって大事なことを大事だと言ってるんだから


ドイツ人男性①(40才台)
「地球は温暖化しているんだろ?それは事実だと思っているから、対策しないといけないよね。でも、彼女は注目を集めるのは良いが、学校を休んでデモに参加するのは感心できない

あと、人々への敬意を欠いていること、これは問題だと思う。例えば、ドイツの大企業のS社が環境を破壊しているって批判していたけど、でもその会社は世の中の役に立つ製品やサービスをたくさん提供している。それを無視して、環境を破壊している会社だと罵倒するのは如何なものか。

それにしても、大人になると、環境保護を主張しにくくなるよね。例えば僕は、車に乗って会社に来るし、家族を養うお金を稼ぐ必要もある。となると、エコに移行するのも一足飛びにはいかない。でも若い人たちはそういうしがらみがない。だから、彼女みたいに劇的な変化を主張することができるよね」

画像3

ドイツ人男性②(50才台)
「彼女は、ちょっとどうかと思うところはある。デモもよいが、まず学生だからきっちり学校へ行くべきで、学業をおろそかにするべきではない。

でも、僕がそれより問題だと思っているのは、彼女の影響力を恐れて、政治家たちが彼女におもねっていること。政治家が言うべきことをきちんと言えていないから、みんな環境についてちゃんと議論ができていない。事実に基づいて正しい議論を交わす、そうすれば僕たちは正しい方向に進んでいけるはずなのに、グレタへの反対派も賛成派も、感情的になって反目して強い言葉で非難し合うだけになっている。そうじゃなくて、正しい議論が必要だ」

画像4

バングラデシュ人男性(40才くらい)
「彼女が言っていることは何も新しいことはない。全て既に分かっていることを言っているだけだ」


トルコ人男性(20才台)
「彼女はダメだ。彼女は何者かによって操られている。しかも、今日この生活があって、急に明日からエコだとかの生活に変えられるわけないじゃないか。そんな無理難題を声高に叫ぶなんて、どうかしている。明日から急に車に乗らない生活に変えられると思うか?人は失敗して、その時にようやく反省して行動を変えられるものだ。今の状況じゃ変われないよ」

画像6

こんな感じ。これほど賛否が分かれる人もめずらしい。

ところで原点に立ち返ってみて、彼女の主張の根本は何だろうか?

グレタさんの主張は?

僕がざっと調べた範囲では、主に以下の3つくらいだろうか。

(1)科学的な事実を直視するべし

(2)温暖化は必ずしも一定のペースで進んでいくわけではなく、どこかの臨界点を越えた時点で、人類が制御できない形で不可逆的に気候体系が変化してしまう可能性がある

(3)それら気候変動の全ての結果は、消費社会の恩恵を享受してきた大人たちよりも、より長く地球で生活する子ども世代が負うことになる

といった内容で、主張自体はごく一般的なことを言っていると思う。表現や伝え方はドラマティックだけど。

でも、結果としてニュースではワイドショー的な取り上げられ方をされることが多く、これらの主張がどこまで我々に届いているのだろうか。

ひとことコメント

一つだけ個人的な思いをコメントさせてもらうと・・・、前回のnoteで書いた「ドイツの湖文化」。

うちの息子は子ども時代の思い出として、ドイツの素晴らしい自然を満喫することができた。日本に帰った今でも、当時の自然体験を手放しで賛美している。

でも、例えば息子が今後50才になったころ、自分の思い出の場所としてこれらの湖を訪れたとしても、もうあんな美しい自然は残っていない可能性が高いと思う。それくらい、気候の微妙なバランスの上に成り立っている湖だと思うから。

画像7

ヨーロッパの人たちの多くも、こういった豊かな自然を身近に経験してきた。さらに自分の子どもたちにも、夏休みや日常の中で自然を経験させている。

親心としては、自分の子ども達の幼い頃の思い出は、彼ら/彼女らが大人になった時にも残っていてほしいと願うもの。

となると、ヨーロッパの人たちが環境問題に敏感になることも、そしてそれを解決しようという情熱を持つ人が多くいる理由も、なんとなく理解できるような気がする。

by 世界の人に聞いてみた

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?