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日付変更線の女
時計の針は午後11時を回っている。
来る
きっと来る
絶対に来る。
ピンポーーン
ほらやっぱりだよ。
えっちゃん(仮)いらっしゃい・・・。
えっちゃんは私の保育専門学校の時の同級生だ。
同級生だけど、2歳年上。(なんでだったかは忘れた。)
ちょっと見は小柄なヤンキー。
髪はソバージュ。スタジャンにデニムで肩で風切って歩く。
保育士の学校にはあまり似つかわしくない彼女と私を含む数人は、なぜかすごく気が合った。
地元生まれのえっちゃん以外はみんな地方から札幌に出てきていて、独り暮らしか寮に入っていた。
えっちゃんは一年生の時から車を持っていた。
学校にも車で登校していた。
だから、いつでもどこにでも好きなところに行けるのだ。
えっちゃんは田舎者の私たちをいろんなところに連れて行ってくれた。
キャンプをしに積丹へ行った。
ドライブしてたら支笏湖についてたことがあった。
すすきのに初めて行ったのも、えっちゃんに誘われてだった。
ディスコもスナックもバーも えっちゃんと一緒に行った。
私にはあまり恩恵はなかったが、世の中はバブル景気の真っただ中。
お金なんかなくても、ディスコは女子限定のタダ券を駅前で配ってたし、二次会はナンパしてきた男子が払ってくれたし、女子だけで行ってもそこにいるおじさまが全額払ってくれたりもした。タクシー代をもらったこともある。
いい時代だったな。
えっちゃんは、どうしても行きたかった大学に合格して2年生になる前に退学したけれど、私達の関係は変わらなかった。
月に1・2回は一緒にすすきのに行っていた。
それ以外にも えっちゃんに会うことがあった。
彼女は時々、23時過ぎたころコーラとお菓子を持って私のアパートのドアチャイムを鳴らすのだ。
何の前触れもなくやってきて、ベッドに横になっている私の隣に腰かけて何のことはない話をして大笑いして帰っていく。
それは私に限ったことではなく友達の部屋を、しょっちゅう転々としていたらしい。
どの友達の部屋でも、えっちゃんが帰る時間は必ず0時をまわっているので
仲間内で彼女のことを
「歩く日付変更線」
と呼んで、笑いながらも「今日は誰の部屋だ?」と恐れていた。
その歩く日付変更線が頻繁に私の家に来ていた時期があった。
えっちゃん一人だけの時も、なまら眠そうな友達も一緒だったこともあった。
それは私が3年付き合った彼氏と別れた後、悲しくて苦しくて泣いてばかりいて、学校は休みがちになり、えっちゃんに誘われても断って部屋に籠りがちになっていたころだ。
23時前後にやって来て、何も答えない私を前に一人でしゃべって一人で笑って日付変更線は帰っていく。
友達と一緒に来て私の前でワイワイやって、部屋中取っ散らかしたまま日付変更線をまたいで帰っていく。
正直最初の頃は帰ってほしかった。いい加減にしてと言いたかった。
けれど、私は言わなかった。
本当は帰ってほしくなかったのだと思う。
そんなことが続いていたある時、
声を出して笑っている自分に気付く。
みんなの話が可笑しくて、一人じゃないことがうれしくて、涙が出るほど笑っている。
きっとえっちゃんも気付いていたと思う。
けれど彼女はおしゃべりを止めず、友達もずっと笑い続けていた。
少し元気になったころ、えっちゃんは私を海に連れて行ってくれた。
「○○(私を振ったやつ)のばかやろー!!!」
って叫んだ。
すっきりして振り向くとえっちゃんが笑っていた。
「ちはが笑えるようになって良かったよ。」
って言った嬉しそうなえっちゃんを見て、私も嬉しくて笑った。
えっちゃん
私を笑顔にしてくれたあなたに、私はちゃんとお返しできていただろうか。
えっちゃんは自分が辛い所を見せてくれなかったから、私はあなたのために何か行動をしたという記憶がないのだ。
ただ、
一緒に泣いたね。
一緒に怒ったね。
一緒に笑ったね。
それだけで良かったのかな。
えっちゃん
連絡が途絶えてずいぶん経つけれど、元気でいるよね。
いまさらだけど言うね。
あなたのおかげで私は今幸せです。
ありがとう。
えっちゃんも
幸せだといいな。
~本当にあったちはの話その2は次回更新いたします。~
◆バトンリレー企画
この記事は、チェーンナーさんのバトンリレー企画の参加記事です。
この企画です。
【バトンリレールール】
1.バトンが回ってきたら、noteを書いていただきたいです!
2.noteを書いたら、次にバトンを渡すnoterさんをご指名します!
指名したことがわかるように、指名するnoterさんの一番最新のnoteをシェアしてあげてください
3.指名するnoterさんは、最大2名まで!
あまり多いとご負担になりますので、1名~2名でご指名ください!
4.ぼくが追いかけてシェアしますし、マガジンに追加しますので、ぼくにわかるように、ぼくの今回のこの記事もシェアしてください!
5.ハッシュタグ、「人生は人喜ばせ合戦」を入れてください!
【企画期間】8月10日(木)まで
バトンリレーのお返し制度
1.バトンをもらったけど、「人生は人喜ばせ合戦」を書きたくない、という方は、バトンをぼくにお返しください!
方法はこちらの2点です
①チェーンナーに返します、というnoteを書いて、今回のnoteをシェアしてもらえば、ぼくが引き取って、ぼくの「人に喜んでもらったこと」「してもらって嬉しかったこと」を書きます!
②また、noteを書かないで、このぼくのnoteのコメントで、バトンを返します、とお書きいただいてもOKです
2.バトンをもらってnoteを書いたけど、バトンを誰かに渡したくない、という方は、ぼくにバトンをお返しください!
3.アンカー宣言
ぼくに回すのも申し訳ない、といった方のための方法です!
「人生は人喜ばせ合戦」をお書きになった後、「アンカー宣言」をしてそのままゴールを切ってください!
バトンをぼくが受け取って回すことなく、終了となります!
私に、なまらプレッシャーをかけてバトンを渡してきた方はこの方。
奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家 さん
じょーじさんのバトンリレーの記事はこちら。
この記事のコメント欄でやたらプレッシャーかけてきやがってるきてます。
初めての企画参加でお題に添って記事を書きました。
悩みながらも書き終えてほっとしています。
チャレンジのチャンスをいただいて感謝です。
これはバトンリレー企画です。
この企画が目指しているのは繋がりを広げていくことなのだと思っています。
なので
私がバトンを渡したいと思ったnoterさんはこの方です。
Aouekoさんのこのショートショートが大好きです。
Aouekoさん、受け取ってくれるかな。
負担にならないようにしてくださいね。
もし、やめとくわ~って思ったらチェーンナーさんにお知らせくださいね。
最後に今の私をもっとも喜ばせてくださってる神と言えば ご存じ
シゲちゃん。(戸次重幸)
の舞台があります。
シゲちゃんはなんと沙悟浄 ではなく
猪八戒です。
うわぁぁぁ
かわいい かわいいぃぃぃぃ
観に行きたいっ
じょーじさん
年末年始
名古屋公演ありまっせ!
ぜひ!
したっけ
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![蛍諸 ちは keisyo tiha](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113483079/profile_89a4d89371d3ac7f56c6fde8aad50752.jpg?width=600&crop=1:1,smart)