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Cu Sith
2020年9月12日 04:42
零 そこに居ぬモノ月明りの夜。穏やかな海。小舟が一艘、浮かんでいる。船縁に括りつけられた篝火が、ゆらゆらと揺れている。炎に照らされて、微かな人影が二つ、船の上に見える。大柄な男と、少女。そんな風に見える。「物好きだね、こんな夜にさ。生粋の船乗りだって、小舟で夜に繰り出したりしないよ」艶っぽい女の声。「波の上で感じる夜風ってのは、格別だろ?おまえだって、なんだかんだ、つきあってるじゃねえ
2020年9月4日 00:04
任官のため大和国を旅していた侍が、ある小さな村で怪異の噂話を聞く。それは、村からしばらく歩いた山の麓に生える柳の大木に、夜な夜な怪しく青い火が灯る、というものだった。そして時にはその火がふらふらと村にまで飛んでくるのだという。不思議と、火が落ちても燃え広がるようなことはなく、暫く燻ってそのうち消える。しかしその怪火を見た者が気を失ったり、家人が病いになったりという不幸も多発し、村人たち