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小説(しょうせつ)

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noteに掲載している小説や脚本をまとめたマガジンです。
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2023年10月の記事一覧

連載小説|恋するシカク 第11話『カオス』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第11話 カオス  嫌なことを忘れたくて、その夜はシナリオの執筆に没頭した。気づけば窓から朝日が差し込んでいた。だけどその甲斐があって、映画の脚本はついに完成した。  物語の主人公は等身大の男子高校生。彼が所属する吹奏楽部の合宿中に殺人鬼が現れて、部員たちを血祭りにあげていく。中盤の展開では、殺人鬼の正体がヒロインの元彼であることが判明する。ちなみにこの殺人鬼のイメージは林原と決まっていた。でも彼は映画に出ないから寺

連載小説|恋するシカク 第12話『安西姉妹』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第12話 安西姉妹  昼休みがきて、僕は学校を抜け出し安西さんの家にむかっていた。過去に美術部のみんなと遊びに行って住所は知っていたけど、こんな風に授業をさぼったことはこれまで一度もなかった。  安西家は瀟洒な住宅街にある一軒家だ。僕は門の前まで来て、呼び鈴を鳴らすのをためらった。  彼女の返信を見た勢いで思わず来てしまったけど、冷静に考えればここまでするのはやり過ぎだと気がついた。最悪、不審者と思われる可能性だっ

連載小説|恋するシカク 第13話『怒り』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第13話 怒り 「先輩、私の部屋に行きませんか?」  安西さんがスッと立ち上がって僕の目を見た。 「あれ、ごめんね。邪魔だったよね?」  直子先輩に見送られ、安西さんに続いて二階に上がると、丸い文字で《なこ》と書かれたプレートの下がったドアが視界に入った。つまり僕は今、ずっと好きだった安西さんの部屋の前に立っていた。 「急に来ちゃって本当にごめん」 「だったら何で来たんですか?」  安西さんは依然として冷た

連載小説|恋するシカク 第14話『衝突』

作:元樹伸 第14話 衝突  学校に戻り、正門をくぐるとすでに放課後だった。その足で林原のクラスにむかったけど、奴は教室を出た後だった。  学内を探しても見つからず、電話で呼び出そうと考えた頃には少しずつ頭が冷えてきた。林原を殴って何になるのか。そんなことをしても安西さんに迷惑をかけるだけじゃないか。  何もする気が起きないまま、いつもの習慣で美術室に行くと手嶋さんがいた。彼女はキャンバスにむかって絵を描き続けていた。案の定、こちらには見向きもしてくれない。集中してい

連載小説|恋するシカク 第15話『転機』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第15話 転機  翌日、美術室に行くと手嶋さんと安西さんがいた。二人は隣同士で並んで座り、同じヘルメス像を描いていた。安西さんの絵はいつも通り繊細で、手嶋さんの絵は不器用だけど力強かった。 「その顔、どうしたんですか?」  安西さんが口元の絆創膏を見て驚いた。昨日、手嶋さんが貼ってくれたものだ。 「ヘンなのに絡まれちゃってさ」  本当はヘンな自分が林原に絡んだからだけど、事情を知る手嶋さんが口をはさむ様子はなか

連載小説|恋するシカク 第16話『恋愛の先輩』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第16話 恋愛の先輩  午後五時。僕たちは打ち上げ会場のファミレスに入ると、ひとつのテーブルを囲んで座った。僕のむかいには手嶋さん、そして隣には安西さんが腰を下ろす。いつもはひとりでいるテーブル席も、四人で座るとかなり手狭に感じた。  メニューを手にとり、簡単な料理と全員分のドリンクバーを注文した。  ドリンクコーナーにむかった寺山がすぐに戻ってきて、黒い液体入りのグラスをテーブルの上に置いた。グラスの中身はコーラか

連載小説|恋するシカク 第17話『暗雲』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第17話 暗雲  文化祭が二週間後に迫っていた。編集作業も佳境に入り、映画がちゃんと完成するかどうかは、僕の体力とやる気にかかっていた。  鞄を背負って教室から出ると、廊下に林原がいた。 「よお、元気か?」  どうやら彼は僕を待っていたみたいだった。 「何か用か?」  前にあんなことがあったので、つい刺々しい態度になった。 「そうだな、まずは謝るわ。この前は殴っちまってすまん」  林原が頭を下げた。周りの

連載小説|恋するシカク 第18話『悲劇』

作:元樹伸 本作の第1話はこちらです ↓↓↓↓↓↓ 第18話 悲劇  部活の名簿にあった住所を頼りに手嶋さんの家へむかった。彼女が住んでいるのは集合住宅の五階だけど、エレベーターがないので階段を使った。  林原がインターフォンを鳴らすと、少し間があってから声がした。 『誰ですか?』 「美術部の河野です。手嶋さんだよね?」  林原に急かされてマイクに話しかけた。 『トン先輩、何で?』  元気のない声だけど、手嶋さんに違いなかった。 「ずっと休んでるから心配に