「ペイペイ ペイペ ペイペイ♪」の「ペイペ」とは何か、本気出して考えてみた。
はじめに
皆さんは2019年ころから数年ほど放映されていたのPayPayのCMを覚えているだろうか。宮川大輔さんが、コンビニ店員やシェフなど市井の人々と一緒に「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」という曲の掛け声に合わせ、印象に残る踊りをしながらPayPayの宣伝をしていたものだ。ちょうどコロナ禍にあった時代に放映されていたようにも記憶している。
これです。
さて、このPayPayのCMのなかでどうしてもわからない箇所がある。それは「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」の「ペイペ」の箇所だ。
「ペイペイ」はわかる。PayPayを示している。おそらく繰り返されるもう一度出てくる「ペイペイ」もPayPayなのだろう。
では、真ん中の「ペイペ」とはなんなのか。これが全くわからない。
本稿では、このPayPayの宣伝の歌詞である「ペイペイ ペイペ ペイペイ」のうち「ペイペ」とはなんなのかを何かを考えてみよう。
「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」の「ペイペ」
1 語調をととのえる「ペイペ」
あまり普段意識をしないのだが、日本語には「語調を整える言葉」というものがある。これは古文書を学ぶ時とかに出てくる言葉だ。
例えば江戸時代の古文書ではよく「相成候(あいなりそうろう)」とか「罷在候(まかりありそうろう)」だとかが出てくる。ここでの「相」や「罷」が「語調を整える言葉」となる。
「成候」や「在候」でも意味はそれなりに通るのだが、「相」「罷」をつけることで意味を強め、改まった印象をもたらす、と言われる。
わかるようなわからんような・・・! なんのこっちゃ! と思うかもしれない。
意外に「この語調を整える言葉」は現代にも生きている。
例えば「差す」。私たちは、ものを相手にあげるとき「誰々さんにあげた」「誰々さんに差し上げた」とを無意識に使い分けている。「差し引き〇〇円です」みたいに使うこともある。
例えば後はかなり口語だけれども「打つ」とかもそうかも。「ぶっちゃけ」とかカイジの利根川の「ファ○キュー!ぶち殺すぞゴミめら!」のぶちがそう。打ち明ける打ち殺す。
なくても良いけど、あるとちょっとニュアンスを深められる、そんな言葉。
「ペイペ」はこの語調を整える「ペイペ」なのではないか。PayPayの宣伝のために「ペイペイ」という。ただ「ペイペイ」だと繋がりが悪いから「ペイペ」をつけているわけである。そして「ペイペ」それ自体はなくても良いのだが、PayPayの印象を強め、改まった印象を与えるために機能している。
2 感嘆詞としての「ペイペ」
よく松尾芭蕉が松島で詠んだ……と誤解される
松島や ああ松島や 松島や
という一句がある。実際には弟子の田原坊の作なのだそうだ。しかも、もとは「松島や さて松島や 松島や」なのだそう。誰だ適当に広めたのは!
「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」の「ペイペ」は、この「松島や ああ松島や 松島や」の「ああ」なのではないか。ペイペイや、ああペイペイや、ペイペイや」とするとわかりやすいだろうか。この「ああ」が「ペイペ」なのである。
つまり「松島や ペイペ松島や 松島や」というわけだ。
PayPayの使いやすさや便利さ、ポイントの還元具合などに我々はお世話になり、ときに「こんなに良いの!?」と驚くことになる。その時の感嘆が「ペイペ」なのである。
3 「ペイペ」を概念化させるPayPay社の思考から
「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」のうち「ペイペイ」は意味がわかる。PayPayを指していることが明確だからだ。一方「ペイペ」は意味がわからない。「ペイペイ」ではないのだからPayPayではない。
さて1と2で論じてきた「語調を整える言葉」および「感嘆詞」は、どちらも意味がそんなにない言葉だ。何かに付いて強調したり改める意味はもちろんあるけど、絶対に文章の中に入っていなくてはならないものではない。
「ペイペ」はおそらくかなり意味としては希薄な存在なのではないだろうか。
ここでPayPayは「ペイペ」という言葉を概念化させようとした形跡がある。すなわち「ペイペ」に意味を足そうとしているわけだ。
すなわちPayPay社は2020年頃から超PayPay祭に「ペイペ」というキャラをつくって宣伝をさせているのである。
ここから逆説的に「ペイペ」の単語としての意味不明さが示される。
つまり元々「ペイペ」には充分な意味や単語としての役割がなかったのだ。だから私は疑問に思ってこうしてnoteを書いているのだが、PayPay社はここにオリジナルキャラクターを作り出してはめ込んだ。
「ペイペ」をキャラとして概念化し、「ペイペ」に意味を持たせたのである。
おわりに キャッシュレスサービスのメタ
私たちの身の回りにはキャッシュレスサービスがたくさんある。
PayPayをずるいと思ったことはないだろうか。他のPayはPayの前にオリジナルの何かがついている。LINE PayとかFamiPayとかゆうちょPayとか。
PayPayはずるい。Payを重ねがけして、他のPayよりもメタな視線を有している。そしてそれはキャッシュレスサービスという、現物貨幣やクレジットカードによる掛売りとは異なる新しい支払いサービスというメタ具合と、同調する。
PayPayは現代のふわふわした商品決済の象徴的存在だし、象徴的商品名だ。確かに便利なのだが誰がどうお得になっているのかもよくわからない。
そんなPayPay社のCMで「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」と訳のわからない意味を持たない「ペイペ」が単語として用いられ、そしてそれがキャラクター名となっていく。この流れというか事態は、現代の電子的・電脳的なサービスの希薄さ軽薄さを象徴的に表しているとは言えないだろうか。
「ペイペイ、ペイペ、ペイペイ」「ペイペ」にはむしろPayPayの本質が巧妙に隠されていると言っても良いのかもしれない。