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Tシャツから生まれたトニー滝谷

人がどのように発想を
広げていくのか?
そのことにずっと興味が
あります。
なので色んな作家の発想の
プロセスを集めてきました。

この記事では、
村上春樹がTシャツに描かれた
"TONY TAKITANI"という
名前から小説を作った
経緯をまとめています。

マウイ島の小さな町を
訪れたとき、そこに一軒の安売り古物ショップがあった。
一枚の黄色いTシャツが売られているのを見つけた。

胸に"TONY TAKITANI"と黒字でプリントされている。

"TONY TAKITANI"がどういう人物なのか、
そのTシャツがどのような目的のために作られたものなのか、
まったく見当がつかなかった。
名前からして
"TONY TAKITANI"さんは
たぶん日系のアメリカ人
なのだろう。
しかしそれ以上のことは
わからない。

東京に帰って、街にでるときに
そのTシャツをときどき着た。
そして着るたびに、
"TONY TAKITANI"とは
いったい誰なんだろう?
いったいどこに住んで、
どんなことをしているのだろう?どうしてわざわざ
こんなTシャツを作ったんだろう?と首をひねった。

そのように何年かが経過し、
あるときふとこう思った。
この"TONY TAKITANI"という人物について、ひとつ物語を書いてみようじゃないかと。

もちろん僕は現実の"TONY TAKITANI"がどのような人物であるか、知識を持たないわけだから
勝手に想像するしかない。
そして頭の中でものごとを
好き勝手に想像することは、
いうまでもなく、
僕の職業である。

村上春樹雑文集

それで実際に生まれた小説のあらすじになります。

トニー滝谷というのは本名だが、トニーの両親はれっきとした日本人だった。

トニーの父・滝谷省三郎はジャズトロンボーン奏者としてある程度の成功を収めた人物だった。母はトニー滝谷を産んで三日後に亡くなった。

孤独を抱えて成長したトニーは、イラストレーターとして才能を発揮し、その道で成功を収める。

やがて、着こなしの美しい娘に恋をし結婚するが、
妻の度を越した衣服に対する執着は彼女を死に追いやってしまう。

トニーは亡き妻の大量の衣服を着てくれる女性を雇おうとするが、やがて部屋いっぱいの衣服は妻の存在の影に過ぎないことを感じ、女性に断りの電話を入れて妻の衣服をすべて売り払う。

父の死後、彼はその遺品である膨大なレコード・コレクションを売り払い、本当に独りぼっちになった。

トニー滝谷 Wikipedia

それで、このTシャツは実際なんのための
モノだったのか?それは

このシャツは
1980年代始めにハワイ州上院議員選挙に民主党から立候補したという事実が明らかになった。

つまりそのTシャツは彼の選挙運動のためのシャツだったのだ。
なるほど。それで話が通じる。

村上春樹雑文集より

ちなみにこの小説は
映画化されています。
映画の作りが面白く
1つのセットで
全てのシーンが撮られています。

また小説内の言葉が
そのままナレーションに
なっていたり

小説では描かれていない
裸体デッサンの描写も
あったりします
(全く温かみのない金属のような質感の肌。
トニー滝谷が人の温もりを
察知できない感じが絵に現れています)

と、ここまで書いていますが、、、
正直、誰かに勧めたい
という映画ではありません。

見終わった後、心にぽっかりと穴が空いたような、とても寂しい
気持ちになる映画だからです。

ただモノ作りの視点から
小説や映画を眺めると
多分に発見があり、個人的には、
それがとても面白いです。

1つの名前からなんでだろう?と
疑問を重ね。こうではないか?と
自ら答えていくうちに
物語が立ち上がって
いったのが想像されます。

ほとんど自分のために
まとめた記事になりました。

ここまで読んでくださり、
ありがとうございました。

映画のキャスト

イッセー尾形
宮沢りえ


まだサポートを受けるところまで気が回っていないのですが...作っているカルタの印刷費にまずは回して形にしようと思います。作っているものを自費で作って営業がかけられるようにしようと思います