日本が世界に誇る究極のプロダクト
日本が世界に誇るプロダクト
日本が世界に誇るプロダクトは数々存在する。
陶磁器、漆器、金工品、木工品、竹細工、ガラス細工などの数々の伝統工芸品は、日本が世界に誇るモノである。
職人さんが愛情を込めて丁寧に作ったモノは、非常に繊細で手になじむ。
それは、職人さんの手の感覚や感触、長年の勘をもとに作られたモノには、膨大な情報が落とし込まれていて、私たちがそれを無意識に感じ取っているからなのだろう。
昔は、それほど伝統工芸品に興味を持っていなかったが、一人の佐渡・無名異焼の窯元さんに出会い意識が変わった。
試作と実験を繰り返し、納得いくものだけを世に出す姿勢に感銘を受けた。
私も、ここ最近は伝統工芸品に惚れこみ、少しずつ気に入ったものを収集している。
究極のプロダクト「割り箸(わりばし)」の話し
大学院時代、恩師が私たちゼミの学生を連れて、よく食事会へ招待してくれた。
夕方にゼミが終わり、そのままバスと電車を乗り継いで繁華街へと繰り出した。
恩師曰く、「昔は、よく年配の方に食事に連れて行ってもらっては、多くの事を教えてもらった。次は私が伝える番である。」と。
そう云い、懐石料理、イタリア料理などのお店に行っては、日本文化や食事の作法を教えてもらった。
今となっては非常に貴重な経験で、恩師には感謝してもしきれないくらいである。
そのような食事の席で、恩師がこんなお話しをしてくれた。
「割り箸」には“最高のおもてなしの心”がつまっている。
二つに割る前は、何も変哲もない木の棒であるが、二つに割った瞬間から箸としての「機能」が生まれる。
つまり、割り箸を客人に提供するという行為は、「あなたの為だけに誰も使っていない箸を準備しました」とのメッセージが込められており、最高のおもてなしの心がつまっていると。
また、現在の割り箸の約9割以上は輸入品に頼っており、森林伐採などで地球環境負荷の原因となっているが、
本来ならば間伐材や建材の端材を使用していたため、地球環境にやさしいものであったとのお話をしてくれた。
学生時代の私にとって、この話はとても衝撃的で感動したことを覚えている。
ただの平たい木の棒に、割れ目が入っているだけ。
意匠上、それ以上、そぎ落とすところがなく、機能美にあふれている。
おもてなしの心の意味付けが、後世に生まれたものであっても素敵なストーリーを秘めている。
正に「日本が世界に誇る究極のプロダクト」である。
いつかは私もこの割り箸を超えるモノを作りたい。
割り箸のためになる話
①「濡れ箸」「利休箸」について
よく懐石料理において、お箸が濡れた状態で出てくる事がある。
それは「濡れ箸」や「利休箸」と云い、箸に料理がつかないようにする配慮や、木製の箸に味が染み込まないようにする配慮がとられているからだ。
また別の理由として、客人に対して今の今まで貴方のために“おもてなし”の準備をしていましたとの意味合いが込められている。
②「箸袋・箸帯・箸飾り」について
割り箸は、紙でできた袋に入っていることが多いが、それらは大正5年に大阪の職工が駅弁用に袋に入れた衛生割り箸が始まりとされている。
衛生に配慮した“おもてなし”の心が込められている。
③割り箸にまつわる「ハレとケ」
来客用、営業用として使用される「ハレとケ」の兼用の箸である。
神事や祝い事は「ハレ(晴れ)の箸」、普段使うのは「ケの箸」、この両方を兼ね備えているのが割り箸である。
割り箸を割る行為は神事や祝事などにおいて「事を始める」という意味がある。
※上記の話には諸説あります。
最後に
現在、恩師が生きていたならば、今度は私が食事に招待したかった。
今はその願いが叶わないけれど、一人前になって次の世代に伝えたい。
先生、ありがとうございました。