
CRMの軍師がnoteを始めました
EC通販事業のCRM戦略を日々立案しています
こんにちは。
私は山崎といいます。
今は某企業のコンサルティングチームのマネージャーとして、主にEC通販企業のCRM戦略の立案と実行支援を行っています。
「軍師」というのは、仕事の内容がそれっぽいので勝手にそう名乗っています。
“CRM=Customer Relationsip Management”は、業種やビジネスモデルによって言葉の定義や解釈が結構変わってきます。
ことEC通販においては、
「優良顧客育成」
「LTV最大化」
このあたりがCRMのキーワードになります。
従って、私がこれから話していくCRMというのは上記のことを指します。
日々EC通販事業者の現場担当者・事業責任者・経営者の方々とCRMに関するプロジェクトを推進しているのですが、「CRMの設計や考え方がわからない」と悩む方がとにかく多いです。
現場の方はもちろん、経営者の方からもそのようなご相談をいただきます。
私がお世話になっているクライアントだけでもこれだけ多くの悩みを聞くということは、世の中にはかなり多くの悩める人がいるはず。
ということで、個別にコンサルティングをしなくてもある程度の知見をシェアしていこうと思い立ったのが、note投稿のきっかけです。
今回は、以下の話をしていきます。
自己紹介
最初なので簡単に経歴などをお話しします。
私は2021年6月現在、社会人11年目でそのうち半分以上をEC通販業界で過ごしています。
この業界に入る前は専門商社でのルートセールスをしていました。
職種は営業でしたが、既存のお客様とのコミュニケーションを通じて継続的に発注をいただくという点では今行っているCRMに通ずる概念を持って仕事をしてきました。
CRMコンサルタントとしては4年以上活動しています。
化粧品・健康食品などのいわゆる”リピート通販”を中心に30社以上のCRM構築やPDCAの実行支援実績があります。
マネージャーとしてクライアントのCRM構築を推進しながら、コンサルティングチームのメンバー育成やフォローを行う「プレイングマネージャー」です。
noteではEC通販CRMの考え方、事例の紹介や、通販企業のCRMを実際に体験してみてレポートするなどやっていきたいと思っています。
単品リピート通販でCRMが重要な理由
言い換えると「LTVが超重要指標」という話です。
ご存じの方も多いと思いますが、単品リピート通販のビジネスモデルはこんな感じです。
基本的には見込顧客(お試し購入)、新規顧客(本品購入)を広告経由で獲得し、そこから定期コースに引き上げたり、その定期コースを何回か継続していただくことによって広告に掛かった費用を回収していきます。
多くの事業者は、1年以内での回収を目標にしています。
この「回収」のタイミングをどれだけ早くできるかがCRMの役割の1つです。
ポイントになるのは「リピート率」です。
例えば初回購入が980円、2回目以降が4,980円、継続回数の縛りなしの商品の定期コースを販売しているとしましょう。
毎回の継続率が80%だった場合の残存率とLTVは以下のように推移します。
見込めるLTVは19,189円です。
これが、毎回の継続率が70%だとこうなります。
見込めるLTVは12,370円。表1との差分は6,819円。
購入者数が1,000人で、売上としては6,819,000円もの差が生まれます。
これが毎月だったら、年間で8,000万円以上のインパクトです。
仮にこの顧客の新規獲得単価(CPO)が10,000円だった場合、表1では4回目でLTV10,000円を超えるのに対して表2では6回目でようやくLTV10,000円を超えます。
回収できるタイミングは、早い方が良いに決まっています。
だからこそ、いかに顧客に継続をしていただくか(=リピート率)が重要で、それを伸ばすためのCRMがめちゃくちゃ大事なんです。
「CRMやってます」に覚える違和感
冒頭で「CRMの設計や考え方がわからない」という話をよく聞くと申しましたが「CRMをやっていますか?」という問いには大体の方が「はい」と答えます。
皆さん、試行錯誤しながら自社なりのCRM施策を行っているようです。
しかし、EC通販CRMを専門的にやっている身からすると、その中身にはとても違和感を覚えたりします。
その違和感とは何か?を説明します。
違和感1:「仕組み」だけで継続率やLTVを上げようとしている
継続率やLTVを伸ばすために各EC通販事業者が行う施策って「仕組み」が多いなと感じています。
例えば過去に一世を風靡した”回数縛り”とか、最近のトレンドでいうと”おまとめアップセル””W定期クロスセル”とか。
そこに当てはめれば一定のLTVが担保できますっていう施策ですね。
これ考えた人ってすごく優秀だなと思います。
事業者目線でいったら、LTVが担保できるだけでなくキャッシュの回収も早まるんで。
競争が激化するEC通販においては一人あたりのLTVを最大化するための施策はもはや広告と同等レベルに重要だと言えます。
だがしかしですよ。
多くの会社が、これがゴールになってしまっているんです。
CRMのもう1つのキーワードである「優良顧客育成」の観点が抜け落ちてしまっています。
顧客育成ってすごく大事で、長年続いている会社と数年で終わってしまう会社の違いってまさにこの観点を大事にしているかどうかだと思っています。
LTVを効果的に上げていくには「仕組みで手っ取り早く」と「長期的にじっくり顧客に向き合い続ける」という2つのアプローチがあります。
後者の具体的なことはここでは書きませんが、今後は実際に体験した事例なども記事にしていきたいと考えています。
違和感2:やることが他社のコピー
「CRMしっかり構築したいんで、他社の事例どんどん教えてください!」
こういう言葉もよくいただきます。
前提として、CRMをしっかりやろうというその意思はとても嬉しくてできる限りの事例を共有したりその会社にとって効果的なCRMを構築できるように伴走しています。
しかし、結構多いなと感じているのが「事例をそのまま丸パクリして終わる」ということです。
ベストプラクティスから学ぶこと自体はとても良いことだと思うのですが、前提として模範にする会社とは条件が異なっています。
自社の顧客属性や商品の訴求軸に合わせてCRM施策をチューニングすることは必須なのですが、それがなかなかできていないというのが現状です。
EC通販企業が抱えるCRMにおける課題
これだけ重要と言われているCRM。
今後は更に超重要施策になります。
https://netkeizai.com/articles/detail/3847
※日本ネット経済新聞の記事へのリンクです
アフィリエイト広告への規制強化が進むと、EC通販事業者を取り巻く競争環境は更に激化します。
更には人口減少に伴う国内市場の縮小。
越境ECはまだハードルが高い。
こうなると、いかに苦労して獲得した新規顧客のLTVを最大化できるかどうかが、事業成長の大きなポイントになることは間違いないです。
実際にCRM構築に本格的に乗り出す事業者は増えていると感じていて、嬉しいことに私にいただくご相談も2021年に入って2020年の3倍ぐらいに増えています。
ニーズの高まりに伴って「CRM人材の不足」がEC事業者の課題になっているのではないかと考えています。
他業種を含めても、CRMの知見がある人ってまだまだ少数で市場価値がとても高いです。
私も人員拡大のためにいろいろな媒体で人を探していますが、一定レベルの経験者を探すとなると最低でも年収500万円、そこにコンサル経験が入ると更に上がる印象です。
給料が500万円の人だと、保険料なども含め、会社が支払う雇用コストは700~800万円ぐらいにはなるのではないでしょうか。
人が根付かない=CRMが根付かない
「これからはCRMの時代だ!!」
といって気合いを入れて担当者を採用します。
そうなると、次に出てくるのは「退職リスク」です。
CRMって私の経験上多くの事業者は担当者が属人的に進めている施策なので、担当者が退職してしまうとそこまで積み上げてきた財産(※)が一気になくなってしまうことはザラです。
(※)担当者が積み上げてくれる財産が喪失された事例
・分析ツールを使えない
・レポートの作成方法がわからない
・メールや同梱物の制作ができない
・アンケート?顧客インタビュー?なにそれ??
業務が属人的になってしまうのはどの職種にも当てはまることと思いますが、CRMは特にそのリスクが高いかもしれません。
理由はCRMが「やらなくてもなんとか会社は回る業務」だからだと思っています。
経理担当者、広告担当者などはなくてはならない場合が多いですが、CRM担当者って正直いなくても最低限事業は成立します(今のところは)
だから引き継ぎが全然うまくいかないことが良くあり、退職者の人員補充も社内で誰かが何かと兼務しながら、というケースがとても多いです。
兼務の方だと、CRMはほとんど手付かずになる場合があり、何も進まない状態になります。
だからこそ、コンサルのニーズがある
・採用の難易度
・退職のリスク
上記を鑑みると、CRMの構築は外部に任せるのが手っ取り早いのではないかと考えています。
「お前がコンサルだからそう言ってんだろ!」
と言われればその通りな部分もありますが、内製化しようとするとなかなか進まないので最低限の初期構築だけでもアウトソーシングして進めるのが良いと思います。
この時に外注先の選び方だけはお気をつけください。
一言でポイントをお伝えすると「ちゃんと自社の商材や文化を汲み取って設計や制作を行ってくれる」パートナーに依頼しましょう。
・制作会社と直接やりとりするなら、EC通販(特に自社の商材ジャンル)に強いディレクターさんがいるかどうか
・コンサル会社なら、なんでもかんでも自分の成功フレームに当てはめようとしてこないか
このあたりは選定時の指標にしてください。
まとめ
最後は少し宣伝っぽくなってしまいましたが、最後に今回の記事の要点を整理します。
EC通販における新規獲得の競争環境は激化しており、獲得した顧客のLTVをどれだけ高めることが事業成長のポイントになっている
そのための手法としてCRMは必須の施策になりつつある
「回数縛り」「サンクスクロス」「W定期」など、仕組みで継続率やLTVを上げようとしている事業者は多いが、CRMの本質はそこではない
しかし、本質的なCRMを構築できる人材は非常に少なく市場価値が高い
運良く採用できても「退職リスク」がつきまとう
だったらCRMの構築は外注した方が良い
外注先もどこでも良いわけではない
こんな感じで、これからEC通販やCRMに関する自分の考えを文章にまとめていきます。
今回のように広く浅い内容の場合もあれば、1つのテーマを深く掘り下げることもあります。
あくまでも自分の経験と、そこから生まれた持論を展開していくので、1つの考え方として参考にしてやってください。
それでは。