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「(芸人殺し)の功罪」

2月2日放送「情熱大陸(MBS)」を視聴。アンガールズ田中卓志に密着し、「キモカワ芸人」の歴史と新たな進化を掘り下げる。

「天然系キモカワ芸人」として「エンタの神様」などでブレイクし、紆余曲折ありつつも大御所芸人の一角に上り詰めた田中。「爆笑問題のバク天!」の頃からアンガールズを見てきた私としては、シュールでよくわからないコントばかり披露していたひょろ長芸人がまさかここまで大物になるとは、想像もできなかった。

番組ではリアクションからMC、賞レースの審査員まで、アンガールズ田中の幅広い仕事ぶりを過不足なく掘り下げつつ、芸人としての本質に迫っていく。

一方で、「情熱大陸」のような密着型ドキュメンタリーは「芸人殺し」の側面を持っている。

本来ならばピエロであり、裏に隠されるべき芸人の真摯な部分、努力を密着カメラは容赦なくあぶり出す。

以前、ものまね芸人の福田彩乃「情熱大陸」に出演し、ラストで新ネタを披露していたが、無観客ということもあり、ひとつも笑えなかった。

芸人が笑いのない中でネタをやる様子は、まさに地獄絵図である。

ベテラン芸人の関根勤は、NG仕事についてインタビューで問われた際、「情熱大陸だけはオファーがあっても絶対に出たくない」と語っている。

「芸人は裏の努力を見せるべきではない」という美学があるようだ。

時として芸人を殺してしまう密着ドキュメンタリーの本質を見抜いているのだろう。

方や、爆笑問題はコンビ揃って密着されているが、芸人としての本質をあぶり出された印象はない。

神田伯山が揶揄する「ピカソ芸」など、確かに芸人としてのメッキがはがされた感はあるのだが、それでも芸人として死んだわけではない。

太田光の持つ「底知れなさ」がカメラの残酷さを凌駕しているからだろう。

太田光は密着を受け入れたが、松本人志は頑なに拒否しそうな気がする。

まあ、見てみたい気もするけれど。

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