
「たりないふたり」
映画「ホールド・オーバーズ~置いてけぼりのホリデイ~」をAmazonプライムビデオで鑑賞。
アメリカの寄宿学校を舞台に、クリスマス休暇にも自宅に戻れない「置いてけぼり」の生徒たちと偏屈な教授の交流をビターに描いた大人のコメディ。
(あらすじ)
「ファミリー・ツリー」「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」の名匠アレクサンダー・ペイン監督が、「サイドウェイ」でもタッグを組んだポール・ジアマッティを主演に迎えて描いたドラマ。物語の舞台は、1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることに。そんなポールと、母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見る一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしたメアリーという、それぞれ立場も異なり、一見すると共通点のない3人が、2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすことになる。ポール・ジアマッティが教師ポール役を務め、メアリー役を「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」「ラスティン ワシントンの『あの日』を作った男」のダバイン・ジョイ・ランドルフ、アンガス役を新人のドミニク・セッサが担当。脚本はテレビシリーズ「23号室の小悪魔」「ママと恋に落ちるまで」などに携わってきたデビッド・ヘミングソン。第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、ダバイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞した。
(ネタバレ感想)
わけあり生徒と、クセの強い教授。
いかにも何かが起こりそうな、コメディにはうってつけの設定だが、期待に違わない納得のクオリティだった。
冒頭で取り残された生徒が5人ほどいたので、てっきり群像劇に近いテイストになるのかと思いきや、序盤早々ちょっとした展開が差し込まれ、1対1の人間ドラマが加速していく。
偏屈一辺倒で、完璧に見えていた教授の威厳が終盤にかけて徐々に崩れ去り、1人の「情けない男」になっていく。教授の人間味が描き出される過程は丁寧で、時としてシニカルな笑いを誘う。
教授の弱さを時に突き放しつつ、それでもどこかで受け入れていく青年・アンガスの心理描写も心に刺さる。
クリスマスでなくても観たくなる名作である。