土佐日記はじめました#3 船の上で正月を迎える②
前回お伝えしたのは、船の上で迎えた正月に人からもらったせっかくの正月のお薬をなぜか海におっことしてしまったがっかり事件。
大事なお正月アイテムもないがっかりな正月をユーモアでふきとばす紀貫之
あーあ...なんで小屋なんかにはさんだ....小屋のどの部分に挟むんだいったい...
と読者も呆れますが、紀貫之には追い打ちでさらに寂しい事実。
「芋茎(いもし)・荒布(あらめ)も、歯固めもなし」
なんだか残念そうにあれがないこれがないと言っています。
芋茎とは芋の茎を干したもの、と『要説 土佐日記』には簡単に記してあります。正月との関係走りませんでしたが、画像で調べるとびっくり!高知にきてから初めて食べるようになった、「りゅうきゅう」ではありませんか。
人の庭でもりもりと生えているし、秋ごろにはよくもらっていました。
荒布も海藻の名前、と『要説 土佐日記』には簡単に記してあります。海藻もおせちに必ず食べるなどして正月にはかかせなかったものなのでしょうか。
歯固めは、正月の三が日に食べる食べ物で、歯=年齢を固めるということで寿命を伸ばす意味があったとか。内容は鏡もち、いのしし、しか、あゆ、大根、うりなどとのことですが、正月のために気をつけて用意してないと直前には簡単に集まらなさそうな食材の数々です。そりゃあ旅の船にないよ。
土佐にはこれらがないし、どうせ船の上での正月だから用意もしてません、と本文にありますが、いつも通りの正月を過ごせないことをブーブーいってるような印象です。ここで紀貫之のユーモアがでます。
正月の食べ物もないから、ただ押鮎の口にチューする。
人にチューされること、押鮎はどう思うだろう。
という旨の文章があるのです。え?って感じです。
押鮎というのは塩づけにして押しかため干した鮎のことで、土佐の名物だったそうです。これは固いからしゃぶるしかなく、それをおもしろおかしく表現したのです。平安時代のユーモアに触れることができるのが紀貫之の土佐日記。もっと古文に親しんで、原文のまま「くすっ」と笑いたい!と思わせてくれました。
土佐の名物・押鮎を見つけたい
土佐の名物だという押鮎、気になります!高知に住んで約一年、これまでの人生で食べる機会はそんなになかった鮎をたくさんいただきました。塩焼きにしたり、お寿司にまぜたり、甘露煮にしたり...とにかくおいしいんです。
ですが、ぎゅっとして干した鮎はみたことがありません。ネットショッピングしても見つかりません。平安時代の土佐の名物は現代には伝わっていないのでしょうか。固いからしゃぶりつくしかなかった押鮎にチューしてみたい!
お正月のまとめは次回に続きます。
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