デザイン会社がSaaS企業をつくるまで 〜CREATIVE SURVEY誕生ヒストリー〜
こんにちは、クリエイティブサーベイ採用コンテンツチームです。
クリエイティブサーベイの事業・仕事・ヒトについて、裏話も含めながら発信していきます。
今回は代表取締役社長の田口さんに、CREATIVE SURVEY誕生のヒストリーと現在までの道のり、そして未来について語ってもらいました。
CREATIVE SURVEYの初期プロジェクトはデザイン調査ツール
――CREATIVE SURVEYはフォーデジットの社内プロジェクトからスタートしました。デザイン会社が、なぜサーベイツールを開発するに至ったのでしょう?
社内プロジェクトとしてサーベイツールを開発スタートしたのは2010年のことです。この頃まではWebの立ち位置が、広告媒体のひとつといった扱いでしたが、情報を集めるだけでなく、買い物をしたり、SNSといった形でユーザー自身が利用するものへと大きく変わっていきました。
UX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉が一般的になり、より良いユーザー体験を提供しなければならないという考え方がどんどん浸透していった時期です。フォーデジットもそこに取り組むことにしたのですが、そのためにはユーザーを理解し、深く知り、共感することが重要でした。
ユーザーの年齢・居住地といった属性情報は定量調査で調べられますが、私たちが一番気になっていた「どんなデザインがいいのか」、これを明らかにすることに取り組もうと考えました。
たとえば、同じ商品でもトップページのビジュアルを変えると、ポジティブ・ネガティブの反応がどう変わるのか、クリックなどの行動がどう変わるのかということです。これを調査できないかなと。要するに「ビジュアルを定量的に評価する」ということをやろうとしたわけです。
最初に取り組んだのは、あるビジュアルを見せたときにどういう意見を持つのかを取得できるツールを作り、リサーチ会社のパネルを使ってアンケート調査をするという方法でした。
――今でいうABテストとかアイトラッキング的な要素を入れたツールを自社開発したのでしょうか?
そうですね。最初はその時にあったアンケートツールも試してみましたが、デザインに関する調査ができるものはなくて、自社開発に踏み切りました。
どういうものか例を挙げていうと、トップページのビジュアル案を3つ用意して500名のパネルに提示し、どういう印象を持つのかを調べるというものです。アンケートにビジュアル案を画像として表示して、回答者が画像の一部分にコメントを残せるという機能を付けました。
その箇所のコメントがポジティブなのかネガティブなのか結果がヒートマップ化される仕組みになっていて、単にAかBかを選ぶというのではなく、ヒートマップとコメント付きで調査できるのが大きな特徴でした。2010年に開発したのですが、当時としてはかなり新規性のあるツールだったと思います。
――デザイン調査ツールとして販売したのですか?
最初は社内で試し、プロジェクトの中でも活用していくと、良い成果が出たので「これは高く売れるのでは」と思い外部へ販売に踏み切りました。Webビジュアルだけでなく、パッケージデザインが重要になる飲料メーカーや食品メーカーにも興味をもっていただきました。
ですが、ビジネスとしてはうまくいきませんでした。というのは、当初は導入企業が自分たちのツールとして利用していただくモデルを想定していたのですが、一般的になっていない調査手法であり、調査に関する専門性が高かったこともあって、お客様がリサーチ設計や導入の段階でつまずいてしまうということが起きたからです。
そのため、リサーチ設計や調査コンサルティングも並行して行わなければならず、ツールを売るというよりも人的サービスのような形になり、やれる人が増えない限りは売上が伸びない状態になってしまったわけです。
このままでは違うなと思い、もっと幅広く導入企業が自分たちで使えるアンケートツールの形にピボットすることにしました。改めて、独立したチームでサービスを作る決意を込めて会社化をし、クリエイティブサーベイ株式会社がスタートしました。
ただ、デザイン調査機能自体は一定の評価を受けていまして、『日経デザイン』の中のパッケージ調査コーナーを担当させてもらい、缶コーヒーなどいろいろなジャンルの調査を行ってきました。このコーナーは今も継続しているので、興味のある方は、マーケッターのための「売れる!パッケージデザイン」はコレだ|日経ビジネスを見てみてください。
――フォーデジットの社内ツールとして継続するか、アンケートツールとして事業化するか。2つの道があったと思いますが、後者を選んだ理由は?
デザインのためのツールとして社内で使っていくという選択肢もありましたが、当時はWebビジネスが急速に発展していて、いわゆるSaaSベンチャーがすごく盛り上がっていました。成功モデルもたくさんあったので、アンケートツールとしてビジネスを切り出す障壁が少なかったことが理由の一つ。
もう一つは、ツールとしてちゃんと事業を成り立たせる意思がないと、そのプロダクトは死んじゃうなと思ったこと。メイン事業があって、おまけのような感じで捉えていると、どこかでそのプロダクトは継続する必要がなくなります。どんなスタートアップもリスクを取って必死にプロダクト開発とビジネス展開をやってる人たちがいるわけで、そういうチームに勝てないと思いました。
やめるか切り出すか、どちらかの選択でした。ユーザーの声を集めること自体の価値はわかっていたので、アンケートツールとして事業化し、広く使われる形を目指すことにしました。そこから、クリエイティブサーベイ株式会社として法人化したのが2014年のことです。
それぞれの会社・ブランドにフィットするデザイン機能を付加
――法人化してアンケートツールを提供し始めた当初は、どのようなビジネスモデルだったのでしょうか?
最初は、当時のアンケートツールでは一般的だったフリーミアムモデルを採用しました。無料から使えて、もっと機能を使いたい場合は月額数千円程度で利用できるという料金体系です。
――機能面でとくにこだわった点は?
広く使われるアンケートツールにするためには、基本機能を充実させるだけでなく、デザインの自由度を高める必要があると考えました。背景の色やフォント、ボタンのスタイルを選べるなど、様々な会社やブランドにフィットするデザインを簡単に作れる機能をつけました。
アンケート調査をしたい企業側からすると回答を集めるためのツールですが、当時私が思っていたのは、回答する側にすごく負荷があるということ。「回答画面がややこしい」「めちゃめちゃ調査されている感がある」など、答える側がちっとも楽しくないなと感じていました。
回答者側の体験をどう良くしていくかというのは、開発当初からのテーマです。アンケートは単なる一方的な調査ではなく、ユーザーとのコミュニケーション手段の一つであり、デザインや見た目、使いやすさは企業やブランドの姿勢を伝えるものだと思っています。
今もこの考え方がベースにあり、クリエイティブサーベイのアンケートツールはコミュニケーションツールであるという思想のもと、「アンケート・コミュニケーション・プラットフォーム」を目指すというビジョンを掲げています。
――法人化した後、事業戦略として何から着手しましたか?
フリーミアムモデルでしたので、まずはユーザー数を増やすことから始めました。広告を使ったり、ユーザーのアンケートをピックアップしてTwitterに出したり、メディアと組んで調査をするなど、認知度を上げるための地道な活動を続けました。
設立当初は4~5名でのスタートだったので、私自身も広告デザインやバイイング、営業、プロダクトのUI、Webデザイン、カスタマーサポート……ありとあらゆることをこなしていました。
――認知度がグッと上がった取り組みはありますか?
フリーミアムだったこともあり気軽に使っていただいたことでさまざまな活用がされました。アニメのキャラクター投票に使われたり、学生のミスコンに使われたりするとバズっていました。アンケート自体のデザインができるので、にぎやかな投票画面を作れるということもあり、楽しいアンケートを作りたいというニーズにフィットしたのだと思います。
他にも自治体や企業内グループ、地域団体などもユニークな使い方をしてくれて、そうした無料ユーザーさんが積極的な使い方をしてくれたことで、認知度が上がっていく一つのきっかけになりました。
エンタープライズにピボットして単月黒字化
――2017年に法人向けの『CREATIVE SURVEY for ENTERPRISE』をリリースして、ここでまた大きく舵を切りました。
フリーミアムモデルとしてはユーザー数が着々と増えて10万アカウントまで到達したのですが、ビジネス的にはうまくいっているとはいえませんでした。法人ユースに特化したほうがよいだろうと考え、ここでまたピボットしました。
というのも、アンケートツールを利用してくれているユーザーさんの中には法人の方が多く、法人ならではのニーズがあることがわかっていたからです。複数の大手企業さんから、法人ユースでやってほしいという要望もきていました。
法人ユースになると、求められることが大きく変わります。たとえば、会社で使っているツールとの接続ができるか、回答結果をセグメントできるか、ドメイン設定の自由度やセキュリティ要件などです。これらを精査して法人が求める機能を新たに開発し、ENTERPRISE版をリリースしました。
ツールとしての立ち位置が変わるので、契約面も含めて、しっかり対応していかなければなりません。営業スタイルもがらりと変えて、お客様が求めている導入サポートや運用支援などを手厚くしていくことに軸足を置きました。
エンタープライズに切り替えたときは、まだ4~5名体制のままでしたが、1年後に単月黒字化することができました。
――2019年にSansan株式会社から2億円の資金調達をしました。協力体制をとろうと決めた理由は?
Sansanはビジネスツール領域のパイオニアで、昔からある“名刺”というジャンルでイノベーションを起こして成長してきたすごい企業です。クリエイティブサーベイも“アンケート”という決して目新しくはないジャンルをアップデートすることでイノベーションを創出していくという共通点があるので、彼らの知見も拝借しながら一緒にやろうという選択をしました。
これを機に、採用を積極的に行って組織体制の強化に取り組みました。また、2020年にSalesforceと連携したアンケートツール『CREATIVE SURVEY for Salesforce』をリリースして、法人向けソリューションの拡充を図ってきました。役員体制も変えて、Sansanのみなさんにいろいろな面でサポートしていただけるような座組にしています。
ここから“エキサイティングな成長ステージ”へ
――クリエイティブサーベイはベンチャー企業としては珍しいほど、ナショナルクライアントなど名だたる大手企業が数多く取引先となっています。評価されているポイントはどこだと思いますか?
そもそもアンケートツールの市場自体、プレイヤーがそれほど多いわけではありません。法人ユースでは、オンボードプロセスやサポート体制がしっかりしていることや、高いセキュリティ要件もクリアできるといったことが重要になるので、それらに対応できるツールであり、企業であることが評価されているのだと思っています。
ツールとしては、導入するだけではなく、ちゃんと継続的に使ってもらえるよう価値を提供していくことが大切だと思っています。とくに大手企業さんは契約面やセキュリティ面で一定上の基準をクリアしなくてはならないので、そのあたりの対応もしっかり行ってきました。単に売るのではなく、長く使ってもらえるためのサポート体制も充実させています。
――今後、どのような展開を考えていますか?
単にアンケートを取りたいということだけであればGoogleフォームなどの無料ツールでも可能ですが、今はアンケートツールに対する捉え方が変化しつつあります。
アンケートはユーザーや従業員との重要なタッチポイントであり、フィードバックをより迅速かつ効率的に収集したり、インサイトを抽出したりして次のアクションに活かしていくという、カスタマーエクスペリエンスをマネジメントするためのツールという文脈に変わってきています。
そうした中で、クリエイティブサーベイが目指すのは「アンケート・コミュニケーション・プラットフォーム」というポジションです。
今後の展開として考えているのは、大きく二つ。
一つ目は、データを集めるための最適な方法を提供すること。企業が顧客接点を持つ場面はオフライン・オンライン含めていろいろありますが、あらゆる場面において最適なデータ収集の手段を提供していきたいと考えています。たとえば、チャットで集める方法もあれば、音声で聞く手段があってもいい。将来的にはもっと別の手段も考えられます。
二つ目は、集めたデータを処理する機能です。たとえば、テキスト情報をポジティブ・ネガティブに自動判別するAI機能、相関関係を自動分析する機能、他のSaaSサービスとの連携など、いろいろ考えられます。あらゆるシーンで、いろいろな形で使われるツールとして発展させていきたいと思っています。
――クリエイティブサーベイの未来をどう考えていますか?
クリエイティブサーベイが今どんなフェーズにあるかというと、サービスがある程度出来上がっていて、お客様が着実に増え、継続して使っていただける状態だと思っています。次の大きな成長ステージに上がる一歩手前の段階です。
今は従業員が17名ですが、ここから50~60人と増えていき、ちょうど大きく伸びていくエキサイティングな成長フェーズに入ります。デザイン視点から始まったツールがCXM(カスタマーエクスペリエンス・マネジメント)の領域に発展していき、グローバル市場に進出していく。そんな未来を創っていきたいと考えています。
組織として大きくなるときは、会社という船に乗るというより、砂地に半分かかってる船を海へ前進させるようなイメージだと思っています。ときには、全員で息を合わせる必要もあるし、決めた役割をきっちり果たすべき時もあるし、アイデアとエネルギーで乗り切るような時もある。
当社は今、1を10にするというフェーズにありますが、これを実現できるポテンシャルを持っている会社というのは、実はそれほど多くありません。クリエイティブサーベイはその中の一つであると自信を持って言える状態になりました。
今はまだ人数が少ないので、これから入社される方にとっては自分の力でビジネスを推し進めたり作っていったり、成長の原動力となれるチャンスがあると思います。一人の力がチーム全体の力になり、会社の成長につながっていく。気がつけばこんなにすごい体験をしてたんだなと思えるはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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