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【短編小説】隙間のない家
伯母が死んだ。
母の妹である伯母とは特に思い出とも呼べるような交流も無かったので、両親にそう告げられても、特に悲しいとも思えなかった。真剣な顔で私にそう告げた父の隣に座っていた母も、妹が死んで悲しいとはとても思っていなさそうな顔をしていた。安堵のような、諦めのような、とにかくそういう顔をしていた。
まだ小さかった頃は、伯母はいつも母方の実家にいた。けれど、家族の集まりに参加するわけでもなく、基本
青に溶ける《下》短編小説
青に溶ける《上》はこちら
アオがいなくなった俺の生活は、とても充実しているとは言い難かった。今思うと、当時はそれなりに楽しいと思ってはいたが、苛立ちもストレスも些細なことも全てアオへの暴力と暴言で発散していたおかげで、酷く暴力的なガキ大将になっていた。俺と同じくらい負けん気が強いか、ヘラヘラおどおどとした奴だけが残り、後は遠巻きに嫌な顔をするばかりだ。
当然のように、選べる高校など無かったが
青に溶ける《上》短編小説
アオとの再会は、俺に十分すぎるくらいの屈辱を与えた。
山を背に、海を臨む港町で俺とアオは育った。
俺の家は漁師で、小さな町に住む人々のほとんどは当たり前に海の恩恵を受けている。その中で、祖母と暮らすアオは山のほぼ頂上に住み着き、滅多に町に降りてくることもない。自分の祖母に連れられるまで、俺はそこに人が住んでいることすら知らなかった。ボロボロの、今にも崩れてしまいそうな平屋はさながらお化け屋
気の抜けたコーラのような【短編】
コーラをよく飲む。
赤と黒のコントラストが眩しいペットボトルからしゅわしゅわと騒がしい液体をコップに移す。中途半端に残ったペットボトルを、蓋も閉めずに机の隅に置く。
ほとんどの人から「気持ち悪い」と言われるが、炭酸の抜けたコーラが好きだ。
甘ったるいコーラはなんとなくザリザリとしている気がして、口の中に不快感が残るが、何の刺激もない歯の溶けるような甘さは不思議な心地よさがある。
元々炭酸が苦手と