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皇帝ダリアが咲く頃(11月13日)

皇帝ダリアが咲く時期になった。
空に向かってグンと背を伸ばし、空気が冷たくなる時期にピンクの花をつけるその姿が好きだ。

5年前、当時我が家の庭に植えていた皇帝ダリアが咲いたのは11月13日だった。
そしてこの日、父が亡くなった。
あれから5年か…早いものだ。

皇帝ダリアは11月14日の誕生花らしい。日は一日違うが不思議なつながりを感じてしまう。
皇帝ダリアの花言葉は「乙女の真心」「乙女の純潔」だってさ。そういえば親父は花が好きだったな。

父には障害があった。
事故・怪我により両耳の聴力を失った。私が小学校5年生の時だ。
そんなこともあり、親子とは言え十分なコミュニケーションを取ることは出来なかった。
ドラマなどで父親と息子が取っ組み合いの喧嘩をしたり、怒鳴って言い争ったりする場面があるが、我が家には全く縁のないことだった。

その後も脳梗塞で倒れたこともあったが、身体そのものは丈夫だったのでその度に復活してきた。
だが、人は必ず死ぬんだよな。

何の前ぶれもなく、利用していたデイサービスで突然の体調不良。
救急搬送されたが状況的にはかなり厳しいとのこと。
家族内では「何かあっても延命治療はしない」といつも言っていたので、痛みを和らげる処置をしてもらい、後は本人の体力に任せる判断をとった。

一時は容体も良くなったが、さすがに限界だったのだろう。
「脈が弱くなってきています」と看護師に言われ寄り添っていた時だった。姉が父の手を握った瞬間に心電図の波形が止まった。
母と姉、私が見守る中で父は静かに息を引きとった。本当に眠るように。
それはまるでドラマのワンシーンのようだった。

反抗するような存在でもなく、追いつき・追い越すような存在とも思えずに過ごしてきた。だが鬱陶しいと思いながらも、いざ亡くなってしまうと何とも言えない淋しさを感じる。
なんだかんだで父親だったんだな…と。

葬儀で棺に納める際、姉と私で親父の顔をきれいに拭き、薄く化粧をした。
何とも言えない、穏やかな表情。
本当にただ休んでいるだけのような、まさに「幸福な亡骸」だった。

花よ 花よ 運命を知り故郷の土へ還ってゆけ
ただ其処に在る生と死に抱かれ眠れよ
全て忘れて…永遠に

【幸福な亡骸】作詞:THE BACK HORN 作曲:THE BACK HORN

残された自分の今後の人生、生き方を真面目に考え出したのは、父の死がきっかけだった。
悩んだ末に仕事を辞め、新しい目標に向かって少しずつ動き出している。
まだまだ遅くはないさ。

父が今の自分の姿を見たらなんと言うだろうか。
「変わったことはないか?元気でがんばれよ。」
きっとこんなことを言うだろうな。いつも決め台詞のように言っていたから。

「変わったこと?ありすぎだよ。あんたのおかけでね。人生楽しませてもらってるよ!」


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