【クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021】マニアックな切り口(部門)で、8つの銘柄を表彰します。
こんにちは。クラフトコーラ行商 / マイスターの鯉淵です。
1年を振り返る、年の瀬のこの時期。クラフトコーラを愛するあまりに、いつもの活動だけでは吐露できていない言葉や感動をぶつける機会が欲しくて。
『クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021 ~マニアックな部門表彰~ 』と題し、総勢8つの銘柄を好き勝手に表彰することにしました。
マニアックな部門表彰とはどういうことか。どんな表彰基準なのか。8つの銘柄はどういった存在で、どんな現象をつくっているのか。
長文にはなりますが、クラフトコーラの世界を楽しむ時間を、読んでくれる一人ひとりと共有したい気持ちで、noteで書き綴ります。師走の忙しい時期、ちょろっとお時間あるときに、ぜひご覧ください。
熟慮した、「表彰基準」について
”2021年、ジャンルとして重要なトピックや動きをつくった銘柄”
香り / 味わいの「質」のことだったり、購入~体験の一連の流れの「豊かさ」で表彰することが、よくあるオブ・ザ・イヤーのスタイルでしょう。
しかしそういう話は、僕が普段からSNSやイベントを通して発信している(笑)し、今、黎明期を歩むクラフトコーラというジャンルにとって、わざわざ1年という単位で表彰するにあたり必要なことは、もっとほかにあるのではないか。
クラフトコーラを愛し、発信する者として、「クラフト」(=工藝的/民藝的)であるかどうかは、当然のごとく厳選するスタンスをとっています(いつか具体的に言葉にしますが、「ご当地ビール」の失敗と同じ道を歩んでは絶対にダメだ、と思ってもいるので)。
が、“クラフト”を満たすコーラたちは、その名を冠しているからこその「魅力」や「らしさ」を各々持っている。今のタイミングで、香り / 味わい観点で「正解」になるような表彰を行い、相対的に優劣をつけたいわけでもない。
今、クラフトコーラ が必要なこと。
それは、ジャンルとしての「存在感」を高めていくこと。クラフトコーラがジャンルとして、「面白いね」「根付いてきているんだね」ということを感じ、気にしてもらえること。
そのためには、「クラフトコーラ」という現象と、文化へ向けた動きを、2018年の発祥当時から愛し続け、振舞い続けている鯉淵ならではの観点で、感じてもらいたい、と思っています。
だからこそ、”2021年、ジャンルとして重要なトピックや動きをつくった銘柄”を、表彰基準にしました。
8つに絞ることが本当に辛かったです(笑)。普段からお薦めしているあの銘柄さんのことも取り挙げたい、お話を伺う中で「2022年は表彰したいな」と思える計画を持つ銘柄さんもいる...。けれど、グッと堪えて。
前置きが長くなりましたが...。それでは、「クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021」で表彰する、8つの銘柄を発表します。
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⇢⇢⇢⇢ クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021 発表! ⇢⇢⇢⇢
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【”素材の利活用” 部門】
▫ TOBA TOBA COLA|鹿児島
[ 在来種島みかん / 喜界島産きび粗糖 / カルダモン / その他スパイス11種 ]
在住のご夫婦が製造から瓶詰め、デザインまで手掛ける。フードロス状態の島みかんとをたっぷり活用した1品。
カルダモン / 生姜を主とする薬膳感が鼻に抜けて香り、在来種の島みかんと島きび粗糖により、フルーティーで飲みやすい味わいに。
・表彰理由
クラフトコーラの魅力の1つに、製造過程で出る出し殻の存在があります。
曰く、スパイスや柑橘を煮詰めてシロップ化した後に残る素材のガラたちは、使い道がないことから通常廃棄されてしまうことがほとんど。また、素材を仕入れたものの、様々な事情で使い切れなかったり、規格外となってしまう、なんてことも。
だからこそ、そんな”資産”をいかに利活用するか、は面白い可能性が潜んでいるテーマなのです。
今年のG.W.を皮切りに、都度都度コラボしている高円寺の銭湯「小杉湯」との取り組み「小杉湯クラフトコーラフェスト」では、「クラフトコーラの湯」を行っていますが、出し殻をお風呂に入れて、その銘柄の香りを満喫しながらお湯に浸かるといったもの。まさに”素材の利活用”の観点があったりします。
”素材の利活用”に注目しているのは、「体験として面白い」ということもあるけれど、クラフトコーラに対する解像度が高まったり、クラフトコーラを面白いと思ってもらえるきっかけにもなり得る、と思っていて。
たくさんの天然素材で作られているという事実、そのことをより直接的に感じられる。そして、「面白い」は、もしかしたら「美味しい」より強い、好きになる理由になる。
そんなことを思っているので、素材の利活用に取り組んでいるという行為は、とても尊いことだと考えています。
TOBA TOBA COLAはこの点、注目すべき取り組みを行っています。
なんと、製造時に出るコーラナッツをアップサイクルし、パウダーを樹脂で閉じ込めたピアスやイアリング、イヤーカフを制作しているんです。
アフリカやアジア一部でしか採取できない、コーラの名の由来になった木の実「コーラナッツ」。そんなロマンある素材を利活用した情緒と、なんといってもモノとしての可愛さ。
島在住のご夫婦2人で製造~瓶詰めまで手掛けるクラフトらしい体制を活かした取り組みです。
また、11月には、夏に旬を迎える、地元・喜界島のパッションフルーツを贅沢につかった、『𝑃𝐴𝑆𝑆𝐼𝑂𝑁 𝑇𝑂𝐵𝐴 𝑇𝑂𝐵𝐴 𝐶𝑂𝐿𝐴』を発売。
このパッションフルーツ、実はすべて規格外となり出荷が難しくなった素材なんですって。
生産者さん曰く、「離島のあるあるというか、農家さんが抱える問題として、台風や天候悪化などで船が来れない場合に、とくに青果類などは出荷自体できなくなってしまうという問題があります。」とのこと。
そんな喜界島の現実と、クラフトコーラで培ってきた技術を活かして、新たな価値づくりに挑戦されているのです。そこには、ただ地域の素材を使うよりも大きな文脈がある。離島としての実態も伝わるメディアとしての機能まで感じます。
事前にお伺いしていたこともあって、無事に商品が発表されてとても嬉しいですし、パッションフルーツの主張が味わいや香りに現れていて、とてもキュンとしました。
そのほかにも、喜界島にはたくさんの柑橘が実り、どれも絶品だそうで。もしかしたら、新たなフレーバーの開発もあるかもしれません。
クラフトコーラづくりを通して、あらゆる素材の利活用をポップにやり遂げる、ウキウキする取り組みに、敬意を表して。
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【”作り手の個人活躍” 部門】
▫ TÉTOTARŌ COLA|東京
[ モラセスシュガー(自家製カラメル) / 和山椒 / バニラビーンズ / セイロンシナモン / その他スパイス・柑橘 5種 ]
手作りのカラメルが効いた、独特の甘みや苦み、コク。
下支えする和山椒やセイロンシナモンも効いた、浸れる1品。
・表彰理由
クラフトコーラの「クラフト」(=民藝/工藝行為)の定義として僕が解釈していることは、「作り手が表現したいこと、伝えたいことを、素材選びや香り/味わい、デザイン等+αまで落とし込み、それが伝わること」。
よって、作り手が表に出て考え方を表明したり、クラフトコーラ以外の営みが知れ渡ることは、巡り巡って、その人が作るクラフトコーラへの解釈を豊かにしてくれる、と思っています。
(そういった観点で、クラフトコーラを「目的」ではなく、「(何かを伝える、表現する)手段」として捉えている銘柄の方が、クラフト性を感じることができる、とも考えています)
さて、TETOTARO COLAは、食のクリエイティブユニット『てとてと』と、『熱燗DJつけたろう』がタッグを組んでいる銘柄です。
両者とも、各々の畑で素敵に活動されていますが、特に『てとてと』・井上豪希さんの活躍が多岐に渡り、世の中に広く知られた1年でした。
例えば、今年から始まった、次世代のスター料理人No.1を決定する番組『DRAGON CHEF 2021』。多くのスポンサーを吸えて、かつABEMA TVでの放送もあったこのコンテストでファイナリストまで残り、そのクリエイションを披露していました。
また、日本の食業界の総力を挙げて開催している料理人コンペティション『RED U-35』でも、最終審査手前まで進んでらっしゃったり。
美しい(=いい食材や、作り手/その背景まで表現された状態)を瓶詰めにする『nin』というプロジェクトを発足したり。
クラフトコーラ以外の活動やプロダクトに触れることで、その作り手さんの思想や表現を知る。そうすると、その人が手掛けるクラフトコーラを、今回でいえば『TETOTARO COLA』を、豊かに楽しめると思っています。
井上豪希さんが普段からチャレンジしているのは、「新しい切り口で食の可能性を広げ、美しく表現すること」のように感じます。本人の言葉を借りると、「分解と再構築」。
『TETOTARO COLA』の作り方を解説しているnoteをみると、現在のコカ・コーラおよびコーラのレシピの変遷/歴史を参照し、必須の要素(甘み×苦み×香り)に因数分解し、それぞれを表現する際に新しいチャレンジ(カルメルを手作りする)を行っている。とても、彼らしい創作行為に思います。
そして、そんな井上豪希さんとタッグを組んでこのTETOTARO COLAづくりを行っている、熱燗DJつけたろうさん。
日本酒に対する愛情を熱燗で表現する熱燗DJで、日本酒の温度帯、熟成、ペアリングなど様々な観点から日本酒の世界を探求する活動を行っています。
その中の1つ、「まだ世にない日本酒の感動体験をつくる酒屋」を掲げた『つけたろう鮭店』。全国の酒蔵とコラボをしてつくられた特別なお酒に、ペアリングや熱燗のレシピを添えて毎月届ける素敵な酒屋は、今年の9月に1周年を迎えたそうで。
極めつけは、つけたろうさんが過去にインタビューしていた縁で生まれた三軒茶屋醸造所『WAKAZE』との、「クラフトコーラ」と「どぶろく」のコラボ。『どぶろくコーラ』まで、誕生しているのです。
職人魂と一貫した思想、確かな表現力、そして各々のフィールドで大活躍を見せる姿に、敬意を表して。
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【”行政に注目された” 部門】
[ 黒潮グリーンレモン / 青柚 / 四万十仏手柑 / ヤブニッケイ / 山椒 / 天日塩 / その他スパイス6種 ] (#2のフレーバー)
ふんだんに使った8つの高知素材がキープレイヤー。苦み / 辛みが表立って主張し、柑橘感や塩、スパイス感が調和する。複雑で刺激的な飲み心地。
・表彰理由
「クラフト性」の切り口の代表的な1つに、「地域の魅力を伝える」ことがあります。地域の素材を使うだけではなく、地域の文化までモノづくりに反映させ、ドリンクからその地域を辿ることができるような。だからこそ、旅や地域活性化との相性はもちろん抜群ですし、昨年から「ふるさと納税」での返礼品になることが多い。昨年度は思わず記事にしました(今年度も公開予定です)。
そういう意味で、ふるさと納税になるだけではなく、都道府県など行政単位で奨励 / 支援する存在になって然るべきで。公的機関やその色のある場には、もっと味方になってもらいたい。
その点、高知クラフトコーラ "sawachina"は、ひとつ喜ばしい実績をつくりました。
高知県公式観光プロモーションサイト『高知家』に掲載されたのです。
『高知県』という高知を代表する公的機関オフィシャルのプロモーションサイトに注目され、実際に掲載されること。クラフトコーラはそのキャッチーさから様々にメディアへ露出していますが、この事例はとても意義深い出来事だと思っています。
きっと、それは、高知クラフトコーラ "sawachina"が普段から行っている、高知の8つの素材1つ1つをしっかり紹介するための「生産者カード」や「取材活動」の賜物でしょう。
”地域の魅力を伝える”という1つのクラフト性を極めている、そんな創作行為に敬意を表して。
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【”注目すべき事業者” 部門】
▫ 熊本クラフトコーラ|熊本
[ 熊本県産黒糖 / 熊本県産キンカン / 熊本県産デコポン / シナモン / その他スパイス6種 ]
上質な黒糖の優しい甘さと、生っぽい柑橘感が魅力的。
シナモンを主とする鼻に抜けるスパイス感、山椒や唐辛子によるキレ味も◎
・表彰理由
「2021年はまだ、クラフトコーラにとっては黎明期である」。だからこそ、「素敵なものをつくればいい」だけでは、もちろんなくて。持続的な営みとして維持できるよう、大変な試行錯誤が求められるはず。しかし、黎明期であるために、どの銘柄さんも軌道に乗せるまでの試行錯誤中なのが現状。わかりやすい参考文献は、ほとんどないでしょう。
そんな中で、事業者として興味深い取り組みを行っているのが、この熊本クラフトコーラ。
例えば、今年の3月の話。熊本クラフトコーラでは、「事業譲渡」が行われました。クラフトコーラ界では、初めての出来事です。
2019年夏の発祥当初は、上述のnoteを執筆している「椿原 ばっきー」さんが、熊本クラフトコーラの発起人 / 事業責任者でした。そこから初期ロット600本分を1年2~3か月で売り切り、再販開始を希望する連絡が相次いだタイミングで。
熊本クラフトコーラのキープレイヤーである「キンカン」「デコポン」の提供を行っていた、地元の柑橘農園『ハナウタカジツ』さんが、第2期熊本クラフトコーラの事業者として受け継ぐことになったのです。
そこには、椿原さんの本業との兼ね合い、プロダクトのフェーズと自信の得意分野の話、より投資を行える金銭資源をつくるために...、等々。熊本クラフトコーラが健全な状態でより拡大していくための一手として、事業譲渡が選択されました。
その経緯(ワケ)や心の内を、noteでも吐露してくださっていて。クラフトコーラ界にとっては、それ自体がとてつもない資産だと考えています。
さて、それ以降の熊本クラフトコーラは、『ハナウタカジツ』さんがすでに持ち得ていた販売経路を利活用したり、EC販売を主分野としているからこその発想や行動力で、様々な取り組みを実現しています。
例えば、すでに生産者として登録していた、日本最大のオンライン直売所「食べチョク」での限定販売。
すでにある資源を活かしていることはもちろん、「生産者からチョクでお届けする」というコンセプトのECだからこそ。クラフトコーラに宿る”クラフト性”が伝わりやすい手段になったのでは、と思います。
また、今年の7月には、ネットショップをオープンできるメルカリの新サービス「メルカリshop」でも、いちはやくアクションを起こすのです。
プロダクトの魅力はもちろん、そのフットワークが功を奏し、予想以上の売上やインタビューに繋がったとか。
こちらも、その当時の状況をnoteで紹介してくれています。有難い限り...。
クラフトコーラというジャンルでは、十分に先駆者として数えられる”3銘柄目”として登場した熊本クラフトコーラ。ある意味”先輩”として、クラフトコーラの売り方の参考を、つくってくださっていました。
クラフトコーラの売り手にとって、どこか勇気づけられる部分もあるような、そんな取り組みの数々に敬意を表して。
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【”日本文化へ進出” 部門】
▫ 神コーラ|東京
[ 素焚糖(すだきとう) / ハトムギ / オレンジ果汁 / みじん切りオレンジ皮 / ナツメグ / シナモン / その他スパイス8種 ]
天然の素材を「神の恵み」と捉えて表現する、コンセプチュアルな1品。親しみやすい柑橘感 / スパイス感に加え、優しい甘さと、ハトムギのささやかな穀物感を楽しめる。
・表彰理由
コーラの原点はアメリカ、とはいえ、クラフトコーラは日本発祥のジャンル。そのことの意義は大きいはずだし、何らかの日本素材を使っていたり表現しているため、あらゆる日本の祭事に佇んでほしいと思っています。
例えば、祭り。それぞれの地域ならではですし、1年に1度の特別の行事ですから。ユニバーサルな存在すぎるコカ。コーラよりも、クラフトコーラが置かれる風景が生まれてほしいなと思っています。僕が今年から仕掛け始めた、あらゆるフェスへの出店には、そういった想いがあったりします。
さて、神コーラ。トライアル版を経て、今年7月に満を持して正式版が登場しました。そのため、まだ半年弱という時間しか経ってませんが、日本文化へ進出するといった面白い試みをしています。
「伊勢神宮外宮奉納」――。どういうことか。公式サイトにおける説明を抜粋して掲載します。
伊勢神宮には、全国から様々なものが奉納されます。
伊勢商工会議所がお世話するのは、「食」の外宮奉納です。「食」に携わる生産者の方々が、食と産業を司る『豊受大神』に、「正直なものづくり」や「今後の目標」等を綴った宣誓書と共に、丹精込めて作った自慢の「食」の逸品を奉納するお手伝いをしております。
正装した奉納事業者の方々は、奉納品を手に外宮参道を進みます。神楽殿前に整列して、緊張の面持ちで式典に臨みます。凛とした境内に響く、代表者の誓いの言葉。御神楽を上げて、御垣内特別参拝を経験すると、背筋が伸びて、“正直なものづくりへの思い”がより強くなるといいます。
さらには、そうやって神様にささげられた逸品に出逢うことができる『外宮奉納市』も1年に複数回開催されているようで。累計で数えること、第36回。
かの有名な伊勢神宮で、さらにはその中の”食の産業の御祭神”である豊受大御神に捧げるといった日本らしい行為が、クラフトコーラでも行われるのは、なんだか感慨深い。
先んじて実践したのが、「神」という言葉を冠する『神コーラ』であったことも、あっぱれです。そんな粋な行動に、敬意を表して。
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【”意義深い販売店開拓” 部門】
▫ みちコーラ|佐賀
[ ゲンコウ / レモングラス / 塩 / お茶 / その他スパイス 6種 ]
唐津のゲンコウ、嬉野のお茶、武雄のレモングラス、玄界灘の塩など。佐賀の魅力を詰め込んだ1品。カルダモン / レモングラスを主とするスパイス感と、まろやかで品のある爽快感が魅力的。
・表彰理由
クラフトコーラはシロップ瓶という販売形態が主であること、それぞれの銘柄にクラフト性(=工藝/民藝性)が存在すること。そのことから、「どのような場所で売られているか、置かれているか」は、ひとつ重要な要素だと思います。
コンビニのような、「ファストであることが正義」の場所だと、どうも魅力を発揮にしにくいし、せっかくの個性が埋もれてしまう。高級百貨店で置かれることも、基本的には喜ばしいことである一方、お金持ちの人向けのものに終始するのは違うと思っているため、あくまで1つのケースとしてとどめておきたい。
そんな中で、『みちコーラ』は、ひとつの理想的な販売店開拓を成し遂げているのです。
例えば、お披露目を飾った、高円寺の銭湯「小杉湯」。「小杉湯クラフトコーラフェスト vol.3」といったイベントをきっかけに、通年販売に繋がりました。
塩やお茶、レモングラス等、爽快感や落ち着きをもたらす素材選びと調香により、「アフターサウナ / アフター銭湯」という設計も元よりしていたことから。そして、ニューレトロな佇まいも相まって。抜群の相性の良さを発揮し、早くも人気商品の1つになっているのだとか。
ほかには、『中川政七商店』の渋谷店で開かれたPOP-UPイベント「佐賀印 SAGA-JIRUSHI」にも参加していました。
『中川政七商店』は、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、製造小売事業、教育事業、コンサルティング事業、地域活性事業に取り組んでいる会社。享保元年に創業した歴史を持ちながら、現代や未来に日本の工芸を残そうと、現代人に響く形で営みを続けている存在です。
クラフトコーラの「クラフト」(工藝/民藝性)を解釈する上で、中川政七商店の読みものから多大に影響を受けていることもあり、「クラフトコーラが佇んでほしい」と、かねてから願っていた場所。
まさか、POP-UPとはいえ、こんな早くに叶う瞬間が訪れるとは。
また、100万人が訪れたといわれる、佐賀県の『武雄市図書館』。カルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者として関わっていて、蔦屋図書館やスターバックスまで併設した、全国有数の図書館。そんな魅力的な場所でも、お取り扱いが開始したそう。
クラフトコーラは、香りや味わい、ストーリー、デザイン等、あらゆる箇所に込められた表現がある。ある意味で、”読み物的”だとも思っています。だからこそ、図書館はとても相性がいい。しっかりと伝わる時間軸と、読み取る姿勢が併存する場所で置いてもらうことは、ハッピーでしかない。しかも、みちコーラにとっては”地元”ですから。なんて素晴らしいことか。
今年の8月に登場し、まだ4か月しか経っていない中で。素晴らしいスタートダッシュを見せています。クラフトコーラのジャンルにとっても、理想的な1つの販売店開拓像をつくりあげたことに、敬意を表して。
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【”文化的成熟への貢献” 部門】
▫ ともコーラ|東京
[ シナモン / カルダモン / 山椒 / 唐辛子 / 愛媛県産無農薬ネーブルオレンジ / 岩城島産無農薬レモン / 防腐剤不使用ライム / その他スパイス4種 ]
クラフトコーラ 2大巨頭の1つ。”コーラの原点回帰”と”日本の一流素材を伝える”といった指針を掲げる。シナモンやカルダモンを主とするスパイス感に、華やかな柑橘感、山椒や唐辛子のキレ味が効いた、飲みやすい1品。
・表彰理由
コーラの原点や、2021年までに登場したクラフトコーラたちのおかげで、飲料としての構成要素が、方程式的にできあがってきています。
スパイス × 柑橘 × 甘味素材( × コーラナッツ)
その中でも、いわゆる狭義のスパイス(シナモン、カルダモン、クローブ、コリアンダー、ナツメグ等、アジア諸国で生産されているスパイス)は海外産を揃え、それ以外の柑橘や生姜、山椒、唐辛子、塩、あるいは+αの素材を、日本産で揃える。それが、クラフトコーラにおける定石になっています。
その定石を今年更新し、拡張したのが、ともコーラです。
今年の8月に登場した、『ともコーラ “REAL JAPAN COLA”』。
調香師・tomoが二年の月日をかけ全国の里山を巡り、見知り手にした素材のみを厳選使用している1品。それだけでも尊い行為ですが、限りなく日本産で揃えることに挑戦しているところに、グッときます。
クラフトコーラに欠かせぬ海外産のカルダモンやシナモン等を使わず、琉球シナモンや島胡椒、楽唐辛子等の希少種を揃え、同じ役割や機能を付与している。
海外産のスパイスは、コーラナッツ、クローブ、オールスパイスほど。
こんなにも日本産の割合が高く、かつ香りや味わいにクラフト性が反映されていて、なおかつ美味しい。
クラフトコーラの可能性が拡張され、ジャンルとしてのポテンシャルがさらに一歩深まった出来事だと思っています。
いわゆるカルダモンやクローブ、コーラナッツが日本で栽培できないかな、なんて妄想をよくするのですが、ともコーラの一手はそんなことに現実味を持たせてくれたり、新たな解釈を持たせてくれたり。
ジャンルの発祥や多様性の醸成に貢献しつつ、自らもまだまだ新しい可能性に切り込んでいる思想と姿勢に、敬意を表して。
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【”業界牽引” 部門】
▫ 伊良コーラ|東京
[ バニラビーンズ / 生姜 / ライム / カツアバ / その他スパイス・柑橘 9種 ]
クラフトコーラ 2大巨頭の1つ。叔父が漢方職人だったルーツや資産を受け継ぎながら、クラフトコーラの発祥と開拓を担っている存在。
バニラビーンズやカツアバを主とする薬膳スパイス感に、ライムが効いた柑橘感、独特な甘さを楽しめる。なぜか「懐かしい」気分にさせる魔法も。
・表彰理由
クラフトコーラといえば、言わずもがなの『伊良コーラ』。
2021年も、クラフトコーラ専門メーカーが1ブランドとしてどこまで影響力を高めて、世の中に進出することができるかを、自ら体現しています。
やはり外せない出来事は、今年4月の「伊良コーラ 渋谷店」OPEN。
一旗あげたい事業者たちが虎視眈々と狙う、東京の代表的商業エリア。あらゆる意味でお金(リスク)も注目(プレッシャー)もかかり、ちょっとやそっとじゃOPENすらままならない場所なはず。
ただでさえ、いまだ黎明期を歩んでいる、クラフトコーラ。
どこまで需要があり、あるいは需要をつくることができるのか。それを維持できるのか。その”怖さ”は想像もつかないほどと察しますが、曰く「全財産を投げ打って」開店に辿り着き、今もなお休日は列をなすほど人気を博しているのです。
しかも、OPEN直前には、利用していたB to B取引サイトが倒産し、2か月分の売上が飛んでしまう、特大ピンチまで降りかかったというのに。
クラフトコーラを極めし者として、クラフトコーラの飲み手との接点を増やし、またひとつ『伊良コーラ』が大きくなっていくために。2024年に計画しているという、NY出店に一歩近づくために。
クラフトコーラ界でもほかを寄せ付けない、ブランドとしての拡大ストーリーを歩んでいくたくましい姿に、敬意を表して。
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あとがき|クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021の表彰を通して
▫ 今後のクラフトコーラ オブ・ザ・イヤー
「やがて、毎年の風物詩に―――。」
そんな想いが、「クラフトコーラ オブ・ザ・イヤー 2021」にはあります。
しばらくは、2021年とおなじ表彰基準にするかもしれません。香り / 味わい観点で統一する方が楽だとは理解していますが...。お茶やビール、ジン、コーヒーは、それがいいかもしれない。ジャンルとしての認知度が高かったり、複数種類を経験値として持つ人が多かったり、長く愛好する人の母数が多いから。
でも、クラフトコーラは、そうではない。まだまだ、”これから”のジャンルです。発祥から3年ほどしか経っていないので、クラフトコーラの数も、そう多くはありません。新たな素敵な“クラフト”コーラが、1年ごとにたくさんに登場するかはわからない。
なにせこの1年、クラフトコーラはブームのよくない側面が出てきています。
このままブームで流行り廃れるのか、文化になって語り継がれるのか、その分岐点に立っているのではないか、と思っています。
ブームを起こした一旦の1つに、「酒販免許等がない分、障壁が低い」ことが理由に挙げられることが多く、それが「面白い」「魅力」と語られることが多いですが、本当にそうなのか。
”障壁”というのは、”治安”にもなり得えます。
2021年は、大手企業も含め、とりあえず「クラフト」と名をつけた商品が溢れました。そして、せっかくクラフトコーラと出逢おうと思ってくれて手や足を伸ばした方たちが、あまりいい体験ができず、「クラフトコーラ微妙だね」という状態が生まれていることも、断片的に見聞きしています。そうすると、じゃあ、コカ・コーラやドクターペッパー、すでにあるナチュラル / オーガニックコーラでいいじゃん、となってしまう。し、ほかにも美味しいドリンクはたくさんあるので、そっちでいいじゃん、ともなる。そうなると、クラフトコーラは価値を下げざるを得ない。大げさかもしれませんが、そういう未来に近づいていく危機感があります。
それを受けて、酒販免許という物理的なハードルがないのなら、情緒的なハードルがあるべきなんだと感じている、というのが率直な本音です。それが、「クラフト性をどう表現しているか」なんじゃないかと、今強く感じているのです。
だって、「クラフト」なんて言葉を使わずとも、「ナチュラル」でも「ハンドメインド」でも、なんとでも形容詞を使えるのですから。「無添加です」「天然の素材だけです」しか形容しないなら、それはもう、ガワだけ変えたコーラたちによる、どんぐりの背比べになる。
わざわざ、なぜ、「クラフト」を付けるのか―――。そこを追い求めていくべきジャンルなのだと思います。
一番大切なのは、種類数だけが多くなることでも、安くなることでもない。クラフトコーラが本来持ち得る魅力や価値を、変に価格をさげずにそのまま選んでもらえる存在になる、”日常の嗜好品”になること。作り手の皆さんたちが潤い、飲み手の皆さんがいい出逢いを続けられること。
モノや仕事が溢れた今の時代に、コーラというジャンルでわざわざ新しい存在が生まれるなら、そういうことが大切なのだと思います。
だからこそ、「美味しい」ことも大事ですが、クラフト(=工藝/民藝的)であることに拍手を送りたいし、ジャンルとして「美しく」根付いていくことに貢献したり、根付き方を試行錯誤しているその姿勢や行動の方が、特に今の段階では「尊い」ことだと結論付けました。
それが、2021年末時点の、素直な気持ちです。
▫ 今後の活動について
2021年は活動が急ピッチで本格化し、時には毎週末の土日にイベントを開いている月もありました。振り返ると、1年で1000人以上にお振舞していて。
2022年も想いは変わらず、クラフトコーラが文化になるために、クラフトコーラとのいい出逢いを三方よしでたくさん生んでいきます。
有難いことに、すでに全国の素敵な場とコラボレーションできる機会をいくつも予定しています。さらには、前代未聞のクラフトコーラ体験を生める機会もいくつか開けます。五感でクラフトコーラを満喫できる、新たな嗜好行為になる、そんな予感がしています。
そして、”ポップアップ形式の活動における、1つの到達点”だと個人的に考えている機会への出店も、なんとか叶う芽が出てきました。
なにより、たくさんの方と、クラフトコーラを介して、ちょっと特別な時間を楽しみたい。クラフトコーラといい出逢いをしてもらうことで、新たな日常の選択肢として楽しんでいただけるように。
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