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両者の持つ技術力で日本のサービスロボットを共に世界へ

株式会社菊池製作所 代表取締役 菊池功氏 ×
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也

超高齢化社会の日本を支える産業として期待されている「サービスロボット」。サービスロボットとは、人に寄り添い、主に作業を支援するロボットのことです。そんなサービスロボットで世界を変えようとしている2社が、この度、資本業務提携を発表しました。
 
創業50年、いち早くロボット産業に着手し、様々な取り組みを実現してきた総合ものづくり支援企業・菊池製作所と、飲食店向けのロボットや食品工場向けの惣菜盛付ロボットなどを展開するコネクテッドロボティクス株式会社です。
 そこで今回、株式会社菊池製作所 代表取締役 菊池功氏(以下 菊池製作所・菊池氏)と、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也(以下CR・沢登)のオンライン対談を通じて、「人が喜ぶロボットで世界を変えたい」という両社の思いを伺っていきます。

ロボット開発20年の経験を活かして 

―長年、日本のものづくりを支えてこられた菊池製作所さんですが、20年前からはロボットの分野にも力をいれていらっしゃるそうですね。 
 
菊池製作所・菊池氏:私どもは創業52年目を迎える「試作」を得意とする企業で、「いつも初めてのものをつくる」ことにこだわってきました。「常に新しいものにチャレンジする」ことが経営理念であり、菊池製作所の社員のDNAでもあります。
そうした中で、20年程前にロボティクスの分野に参入しました。日本は、産業用ロボットにおいては世界でも大きなシェアを誇っているものの、サービスロボットは他国に負けている状況です。
まずは我々が日本のサービスロボット分野を盛り上げていこうと、産学連携や、スタートアップのサポートをさせていただきながら、様々なサービスを世に送り出してきました。資金面はもちろん、営業面においてもお手伝いさせていただき、ものづくりから販売まで一貫して関わってきました。

株式会社菊池製作所 代表取締役社長 菊池功(きくちいさお)氏  福島県飯館村出身。
中学卒業後、東京都新宿に本社を置くカメラの試作品メーカーに就職。1970年に独立。1976年に株式会社菊池製作所を設立。1984年には出身地の飯館村に工場を設立し、故郷に錦を飾る。2011年には株式会社菊池製作所がジャスダックに上場。 

―サービスロボット分野を牽引されようと。ちなみにこれまでロボット業界に携わられてきた中で、課題に感じていることはありますか? 
 
菊池製作所・菊池氏:弊社がロボット分野に参入した20年前は、日本全体で「産学官の連携を盛んにやりましょう」という時代でした。それまではつくるだけのお手伝いがメインだったのですが、新しいものを開発しているだけではなかなか世の中に出ていきません。数多くの大学とコラボレーションさせていただきながらプロダクト開発から事業化まで、プラットフォームの構築に力を入れてきました。
 そんな中で感じることは、やはり日本は「新しいものを率先して使う」ということにマーケット自体が慣れていないということです。つまり新しいものを提案すると、「これはもうどこかで使われていますか? 使った結果はどうですか?」という反応になり、導入実績がないとなかなか前に進みません。一方で海外は、「もうどこかで使ってますか? 使っていなかったら我々が使ってみましょうか」となりますから、全然違うわけです。
 こういった反応を示す日本で社会実装を進めていくには、ものづくりをするだけじゃなくて、ヒト、モノ、カネ、マーケット、サービス。この5つが揃っていることが大事だと痛感し、我々も、ものづくりだけでなく、その先もお手伝いできないかと考えるようになりました。

― 市場が慣れていないために、導入のハードルが高いわけですね。では、ロボット展開の拡大フェーズにあるCRさんはどのようにお考えでしょうか。 
 
CR・沢登:菊池社長がおっしゃるように、日本全国に我々のロボットシステムを入れていこうと思っても、自社だけで届けるには限界があります。飲食店向けのロボットや食品工場向けの惣菜盛付ロボットなどに力を入れておりますが、全体のシステムに組み込むためには、やはり我々が得意とするロボットコントロールの技術だけではなく、導入を推進できるパートナーシップが重要だと感じています。
菊池製作所さんとの資本業務提携をはじめ、我々だけではできないような試作・量産・販売など、お客様にどうやってアプローチするのかというところをパートナー企業と一緒に取り組んでいるところです。

コネクテッドロボティクス株式会社  代表取締役ファウンダー 沢登哲也(さわのぼりてつや)  
東京大学 工学部計数工学科卒業、京都大学大学院 情報学研究科修了。MIT発ベンチャー企業でロボットコントローラ開発責任者を経て、2011年に独立。 2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業。 2017年4月より食産業をロボティクスで革新する研究開発事業をスタート。 

子どもが喜ぶ姿を見て 

―CRさんの研究施設「南相馬ラボ」が菊池製作所さんの工場内にありますね。どういった経緯でしょうか。両社の出会いを伺えればと思います。 
 
CR・沢登:出会いでいうと、我々が展示会に調理ロボットを出していたときに、菊地社長にお声いただいたところからはじまりました。菊池製作所さんの方でもロボットを使った様々な可能性にトライされていて飲食分野もそのひとつだというお話でした。「プロジェクトを進めませんか」というようなお誘いをいただきました。確かそれが3年くらい前でしょうか。

―菊池製作所さんの方からお声かけされたということですが、CRさんとの取り組みに、どのようなことを期待されたのでしょうか。 
 
菊池製作所・菊池氏:展示会でCRさんの製品を拝見して、ピンときましたね。間違いなくこれからの社会に貢献できる商品じゃないかなと思いました。中でも非常に興味を持ったのはソフトクリームロボット。ロボットがつくったソフトクリームを子どもたちが嬉しそうな顔で食べている顔を見てこれは素晴らしいなと。要するに人を喜ばせる製品なわけです。
それを見てCRさんはただの技術屋ではなくて、人を喜ばせるロボットを開発できる会社だなと感じましたし、こういったものをマーケットに出していくお手伝いができればと、「是非、我々に手伝わせてもらいたい」と沢登さんにお話ししたのですが、なかなか相手にされなくて(笑)。ここに来るまで
3年かかりましたよ。

展示会で実演されていたソフトクリームロボット

 CR・沢登:ありがとうございます。誤解を招かないように説明しますと、最初に菊池製作所さんにお会いしたときはまだまだ我々もロボットを出し始めた頃で。開発しながらお客様のニーズに合わせて進めていくというような状況だったので、量産フェーズではなかったんですね。いろいろ実証実験をしている間、お待たせしてしまったというのもあります。それがこの数年で、ようやく量産化して拡大しようという流れになってきました。
 
菊池製作所さんはロボット分野に20年も携わられていらっしゃる。ロボットにおける知見・リソースをお持ちですので、活用させていただきながらご一緒できたらと。また量産もそうですが、今までになかった新製品も出していきたいと考えていますので、頼もしい限りです。

―新製品ですか。 
 CR・沢登:はい、今はソフトクリームなどの調理ロボットが主になっておりますが、今後はサービスロボットの分野にも一緒に力をいれていきたいと考えています。それから、福島県の「復興プロジェクト」に関わっているというのも今回の提携の重要なところです。菊池製作所さんは、菊池さんのご出身でもある福島県に工場をお持ちで我々も現地の工場や人的資本を活用させていただきながら、製品づくりをしています。おかげでソフトクリームロボットもメードインふくしま のロボットとして、福島県から認定もいただいています。そうやってWin Win Winで地元に還元しているということも、ご一緒する上で大事にしています。

日本のものづくりの力で世界へ

―今回の資本業務提携によって、試作から量産、そして新製品が生まれるなど様々な取り組みが期待されますが、改めて展望を伺えればと思います。 
 
CR・沢登:「食産業を革新する」というミッションに向かって、外食、食品加工業、そして将来的には農業や食料生産、製造業などの一次産業といったところも見据えてやっていきたいと考えています。そうした中で、菊池製作所さんと一緒に、これまでにない価値を生む新しいロボットをどんどんと世に出していきたいですね。
またそれだけではなく、エコシステムを作り出して、日本でロボット分野をはじめとするスタートアップが更にチャレンジできる風土づくりに貢献できたらいいなと。そして、人が喜ぶ製品が世の中に増えていったら嬉しいですね。まだまだ我々が取り組んでいる範囲は狭いですが、拡大・進化させていきたいと思っております。

―菊池製作所さんも、ビジョンを聞かせていただけますか。 
 
菊池製作所・菊池氏:今、沢登さんから将来に向けた心強いお話を聞いて、改めて本当にご一緒させていただいて良かったなと感じています。我々は、これからの日本を支えるスタートアップや新しい商品開発に取り組む会社とのコラボレーションを推進していきたいと考えていますので、できるところでいろいろとご協力させていただければと思います。
 それから、冒頭でもお話ししました通り、人と一体となって共存共栄するサービスロボットは、世界的シェアで見たら日本はまだまだなんですよね。でもこれからは、クルマよりも業界規模が大きくなるんじゃないかとも言われていますので、シェアが何倍にも広がっていくと予想されます。
日本が持っている“ものづくりの力”を活用して、日本の未来のロボット産業をぜひ、沢登さんと一緒に盛り上げていきたいと思っています。
 
CR・沢登:非常に高い志をお持ちの菊池製作所さんと一緒に取り組めることが我々にとっても名誉ですし、業界全体にも大きな効果をもたらすことができると確信しています。ですので、会社一丸となって、ロボット産業・食産業において、日本はもちろん世界の人々の暮らしを、もっともっと楽しく喜ばしいものにしていきたいですね。

―両社が組むことで、人を喜ばせる製品が世の中に増えていく。そんな未来が想像できました。ありがとうございました。 
 
クレジット) 
協力:株式会社菊池製作所:http://www.kikuchiseisakusho.co.jp/ 
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/ 
 
· 本記事は2022年12月の取材をもとにしています。