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「自分がやりたい 、これを今やると面白いなと思うことをやる。」

藤田一輝さん
地域に出会う商店 ふじたしょうてん店主(香川県丸亀市)
香川県丸亀市生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒。地域や人と人との繋がりをコーヒーでコーディネートするコーヒィネーター。大学卒業後は、株式会社シュウヘンカで、デザインを活かした企画と地域との関わり方を学んだ後、Uターン。
2020年10月、珈琲と雑貨を介して瀬戸内を紹介する個人的アンテナショップ「地域に出会う商店ふじたしょうてん」を開店。2023年8月、珈琲と本を介してそのまちで暮らす人々を紹介するシェア型書店「地域と繋がる本の街 城南書店街」を開店。その他、かき氷屋・マルシェ・ポッドキャストの立ち上げなどにも関わる。

”街の風景に奥行きができるみたいな”

ー1度東京でお仕事をされていて、このタイミングで丸亀に戻ろうと考えたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
いつか帰ろうとは思ってた、みたいな感じですかね。いつか帰ろうと思っていて、ちょうど4年で区切りが良かったので、4年でじゃあ帰ろうかなみたいな感じで。そんな感じですね。

ーUターンで丸亀に拠点を移されて4年とのことですが、街で気持ちよく暮らす具体例や実感などはありますか。
お店に行って無言で帰ってくるんじゃなくて、あの雑貨屋さんの店員さんと話すの楽しいんだよなとか、新しいアイテムを見せてもらいながら、そこの人と話すとか。知り合いが増えていくと、滞在時間も自ずと伸びて楽しいとか。街の風景に奥行きができるような気がするんですけど。そういう知り合いが増えるというか、自分のふらっと行ける、行きつけを増やす、みたいなのも自分が気持ち良く暮らすっていうところにはあるような気もします。

例えば本屋にしたら、生徒がふらっと本を見に行けるところが欲しいとか。そこで普通に飲めるぐらいのコーヒー飲めたらいいよねとか、何かそういった過ごし方ができたらいいですよね。そういう町の楽しみ方、僕はこうやったら楽しいと思っていることをやってみて、使ってくれる人が増えると、それはそれで僕も嬉しいとかもあったりするし。

本屋をやる時にシェアするというのをテーマとして掲げましたけど、なんとなくこの地域の中のクリエイティブな方々と作れるかなと思うところもあって、やってみたらデザイナーとか編集者の方とか、翻訳家とか、そういう方々が集まってくれたりして、そういう方が集まると次のものに繋げられることもあると思うんです。人が集まることでできることが増えるし、そういう方々に出会いたかったっていうのも一応あったりもします。

東京とかでスペースをやっていた時は、興味がある・こういう人が来たらいいなってところの分母が多いのもあって、意外と思い描いた参加者層が来てた気がするんですけど、こっちだと分母が少ない中で、それに引っかかる方々が来るので、これまで出会ったことがないような職業の方とか、こんな人この地域にいるんだみたいな人たちも結構来てくれてて、それがめちゃくちゃ面白いなって思っていて。思わぬ誤算というか、そういう普段出会えないような方々があるテーマでその場所に集まってる、もしくは足を運んでくれるタイミングがあることには価値があるなってすごく思ってますね。参加すると、僕も我が物顔でその方々に話しかけられるのは嬉しいですね。

”コーヒーを淹れて卒業したい”

ー卒業制作についてお聞きします。非常にお好きなことを4年間持ってらして、それをテーマに立てたとお伺いしています。
もともと地域に興味があって、最初は「まちづくり」って言葉を使っていた気がするんですけど、それでムサビに入って、熱海で1年生、2年生の間に活動させてもらった時に、いろんな洗礼を受けたというか。空き家、空き店舗を使って展覧会を企画するっていうプロジェクトだったんですけど、僕はその街のためになると思ってやってたけど、なんでこの街なの?なんで熱海にしたの?みたいないろんなことにうまく答えられなくて。みんなのためにって、すごい主体がふわふわしてるなっていうのをすごくその時に思って。自分が心地よく暮らしたいからとか、こうしたいとか、やっぱり自分が主体じゃないと、と思いました。それからは「まちづくりがしたい」ではなく、「自分なりのまちとの関わり方を考えたい」という言い方に変わっていきました。

じゃあ建築学科の中で自分が何を学びたいかなと思った時に、ランドスケープデザインというか、ランドスケープアーキテクチャーが建物と街と間のデザインというか、人との関わり方を考えられるんじゃないかなと思って。4年生でゼミを選ぶタイミングで、それまでにやりたいと思ってたランドスケープを勉強するのかという時に、3年生の後期でとった課題がもう激烈しんどかったのもあるんですけど、これまでこの3年間というか、ここまで自分がやってきて面白いと思うことで、最後卒制やろうって思った時に、じゃあコーヒー淹れて卒業したいなと思いました。

Photo ©︎fuma yamakawa

”何かをやった時に放っておいてもらえる”

ー丸亀の街をご紹介いただけないでしょうか? こういう所がいいよとか。
これちょっと先輩のすごい活躍してる方と話して出てきた例え話なんですけど、何か尾道とか熱海とか分かりやすいキャラがある町っていうのは、地域に恋をして移住できるけど、結婚相手にするなら丸亀だよねって話があって、病院多いとかスーパー多いとか、何かこう暮らしやすいっていうのはあるような気はしてます。

あとこれはちょっと冗談っぽい話ではあるんですけど。程よく程々に広いエリアで程々の人口がいるので、何かをやった時に放っておいてもらえるっていうのもいいところですね逆に。地方ですごい小さなエリアだと、あまりにも密集してギスギスしちゃったりすることもあるんですけど、結構勝手にやらせてもらえたりするんで、それはいいとこだと思います。
観光資源で言うと丸亀城とか、現代美術館もあるし、あとスタジアムとかもある。建築とか史跡系でいうと丸亀街道っていう金比羅街道があって、その街道沿いに史跡が残ってるので面白いです。

ー怪我されてた時期がありますが、活動に支障はありましたか?
なんかね、ちょこちょこ怪我するんですよ。僕ね、要所要所で怪我するんですけど、怪我するといいこともあって。普段会わない人のレイヤーに入っていく。医療従事者の方と2020年以降コミュニケーション取れる機会ってすごく少なかった気がするんですけど、そういう方々がすごくいる所に入って、病室で話ができるとか、リハビリ受けながら話をするとか。

あと、その変な病室に入ったんですが、4人部屋の相部屋だったんですけど。最近の病院ってみんなもうカーテン引いて喋らないみたいな形だけど、僕がいた部屋って全員カーテン全開でめっちゃ話してるみたいな部屋で。すごいいいオジサマ達ばかりで。僕も僕でコーヒーを飲みたかったから、自分の家族にちょっとずつコーヒー道具を持ってきてもらって、最後はもう「病院中で飲めるコーヒーでどこが美味しいか」をリサーチした後に、自分で淹れようってなって。病院の水を汲んでゲットしてきて、メーターで測って、ここの水がいいって言って、日々違うコーヒーを入れて、それを人に振る舞うみたいなことをやってて。「水が違うんですよね」って話をしたら、隣のおじさんが「実は俺、島で石材業者やってるんだけど島の井戸水使ってて花崗岩の下だから超軟水なんだよ、ちょっと飲ましてやるわ」って言ってて。そしたら、はす向かいのおじさんが「実は俺もね」って言って。香川県にいくつか酒蔵があるんですけど、その酒蔵の1個が隣町に移転して、その隣の町で水を使ってるんですけど、「そこの水源を俺が管理してるんだよね。そこは普段水汲めないんだけど、藤田君にだったら蛇口を付けとくわ!」って言って蛇口付けてくれて。そうしたら、僕の隣にいる人が「実はわしもね」って始めて。その人は武士の何代目か何かで丸亀城っていう現存天守閣の城があるんですけど、その城に2つ井戸があって、その人の屋敷というか、その人の家にも同じような井戸があって、水源が繋がってるんだよみたいな。「丸亀町の殿様が飲んでた水を俺は持ってるんだ。だからうちの奥さんに汲んで来てもらうわ!」って言って、病室に持って来てくれるみたいな事とか。

肩を骨折した事故はアクシデントではあるんですけど、今でも肩がちょっと上がりにくいけれど、いい出会いがたくさんあったんで。家族に言うとふざけんなよってめっちゃ怒られるんですけど、僕的にはむしろプラスなんじゃないかなと思ってるって感じですね。だから、こう言うと良くないけど、肩骨折するといいですよ(笑)。

結局そのおかげで書店街のプロジェクトの進行は少し遅れたりとかして、山下さんとかにも少し迷惑かけてるとは思うんですけど。病室でコーヒー振る舞ってたら、看護師さんとか医療助手さんとかが隠れて飲みに来て、その看護師さんとかが、後々うちのお店に来てくれたこともあったし、なぜかその看護師さんと別の看護師さんのお父さんが今商店街のメンバーに入ってたりとか、一石四鳥ぐらいやってるんじゃないかなって気がしますね。

”僕の活動の広がりは本当に繋がりでしかない”

ープロジェクトをやってきた中で、何か思い出深いエピソードなどをお聞きしたいです。例えば出会いによって繋がりがもっと広がっていったようなエピソードがあれば。
僕の活動の広がりは本当に繋がりでしかないなと思っていて。皆さんとの繋がりで生きられてると思ってるので、日々、出会いによって繋がりが広がっているという感じです。

最近あったことで言うと、城南書店街はみんなでシェアしてやってるのもあって、そのみんなのオペレーション、お店番を簡略化するっていう意図もあり、現金決済はナシにしてるんです。

ある日、店にお爺ちゃんが来ました。めちゃくちゃ気さくな人で沢山話しをして、「電子決済しかできないんで」って言ったら「分かった!」って言ってめちゃくちゃ話をして、「じゃあコーヒーを飲むわ」ってコーヒー飲んでくれて。でも、飲み終わった後に「じゃあありがとう、はい500円」って言われて、「だから現金使えないんですよ」って言ったら、「忘れてたー」みたいな。その時は僕が店頭にいたからそのまま500円頂きましたけど、僕があとからPayPayで払うみたいな感じにして。

そのお爺ちゃんが「また次来る時はPayPayできる友達連れてくるから」って言って帰ったんですよ。翌週また来て、そのPayPayできる友達っていうのが孫なんです、みたいな。その爺ちゃんがその孫に、「よし、お前も好きなもの買ってやるから何でもいいぞ!」って言うんだけど、全部払うのは孫なんですよ。不便でもあるけど、それがコミュニケーションにも繋がることがあるんだなっていうのはちょっと面白かったです。

あと書店街界隈で言うと、クラウドファンディングをやった時に『初期メンバーになろう』っていうリターンがあって、大体県内の方、もしくは僕が知ってる方が多かったんですけど、何人か県外から入ってくれた方がいて、東京から入るみたいな。あと、静岡県の掛川から入ってくれた人がいて、その2人は僕の知らない人だったんですけど、香川県に何らか縁があった人で。掛川から入ったメンバーはこの3月から4月にこっちに帰ってくることが決まって「やっと会えましたね」みたいな感じだったんですけど、数10年ぶりにUターンした時に、既にそこにコミュニティがあるというか、自分がその一員として話せる方々が集ってるみたいなところは当初意図してなかったけど、移住する、もしくはUターンする時のきっかけとしても、そういうスペースっていうのはいいんだなって思いましたね。

”本を作るみたいなこともやってみたいかな”

ー今後やってみたいことは何かありますか?
宿はやりたかったんですけど、最近近くにできつつあるんでやるか分かんないなと思ってて。工房機能を兼ね備えた場所だったり、みんなで作るタウン情報誌とかやってみたいですね。本を作るみたいなこともやってみたいかなとは思ってます。

あと、旅行会社じゃないけど、旅行業法をちゃんとクリアした、ツアーを継続的にできるようになりたいな、とかも思ったりしてますね。

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