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佐藤タイジさん、若者は今、環境のために何をすればいいんですか?
“太陽光発電の電力エネルギーを活用したロックフェス”『THE SOLAR BUDOKAN』。
ソーラーパネルを用いて、100%太陽エネルギーだけで照明や音響をまかなう新しい形の音楽イベントです。
この取り組みが始まったのは2012年のこと。発起人である佐藤タイジさんは、10年前から声を挙げつづけ、気候変動に警鐘を鳴らすとともに、環境にやさしいポジティブなエネルギーの可能性を表明してきました。
そんなカッコイイ大人たちを目の前に、若者たちは何をするべきなのか…。
タイジさんに、若者たちが環境問題に興味関心を持つにはどうすればいいのか、聞いてみました。
佐藤タイジ(さとう・たいじ)
1967年生まれ。徳島県出身。圧倒的なカリスマ性と独自の感性を持ったギターサウンドでTHEATRE BROOKのサウンドを牽引する。自らの発案により、2012年から『THE SOLAR BUDOKAN』を主宰。日本の音楽界と再生エネルギー界を牽引する稀有なモジャモジャ頭。(Twitter:@_theatrebrook_)
気候変動で人類が滅亡しないために佐藤タイジさんは発信し続ける
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ーータイジさんは、太陽エネルギーだけで音を鳴らすイベント『THE SOLAR BUDOKAN』を主催されていますが、私たち若者はまだ、次世代のことまで考えられないのが正直なところです。
若者が気候変動に対して興味を持つにはどうしたらいいのか、教えてください!
佐藤タイジさん:
どうしたらいいんだろうね(笑)。でも、結局何をしたとしても、必ず人類は滅亡するんですよ。
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佐藤タイジさん:
いずれ破滅すんねん、人類は! 未来永劫人類が地球に生きつづけることは絶対にないわけ。
地球というのは、人類からその次の種に絶対的に受け継がれていくもの。だからこそ美しいんやし、次の世代には、なるだけ幸せに過ごしてほしいわけやんか。
…でも、死にたないよな?
ーー死にたないですよ。
佐藤タイジさん:
なら、もう言ってくしかないよね。「気候変動で死ぬのは嫌や!」って。
「自分はこれが嫌なのだ!」って、大声でちゃんと言わないと、みんなわかってくれへんからね。
「阿保な大人にムカついている人」と繋がることが希望の光
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ーーとはいえ、「自分が動いたところで環境は変わらない…」って思っちゃうんですけど…。
佐藤タイジさん:
そんなこと、ない!
気候変動は、国というよりも市民の取り組みであるべきだと思うの。「うちの国はこれをやってます! あっちの国は知らんけど」みたいな感覚じゃ、滅亡早めるだけやと思うんですよね。
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ーー自分の住んでいる場所では分別を頑張ってるのに、他の場所では「プラも紙も一緒に捨てまーす!」とやっているような感じですよね。
佐藤タイジさん:
そうそう(笑)。だから一丸となって、みんなでルールを作っていかないと!
今やネットやSNSを通じて声さえ挙げれば、市民と市民が直で繋がって、助け合うことができる時代になったのよ。
たとえば、環境運動家のグレタちゃんはいち市民やけど、彼女の起こした行動には、ものすごい勇気をもらえたし、心動かされた人も多いと思うんです。彼女は、大人に対して怒っていた。
あのね、ロックの概念ってそれなんすよ! 大人に対して、「ふざけんな!」って言うこと。
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佐藤タイジさん:
俺も大人に対して怒り続けている55歳の少年やし、世界中のそういう人とちゃんと繋がれたらすごく大きいと思う。
「環境のために何かしている」人はまだ少ないかもしれないけど、「阿保な大人にムカついている人」はいっぱいいるでしょ?
ーーそれは…たしかにいるかも。
佐藤タイジさん:
大小はあるかもしれないけど、みんな必ず持ってるはず。それを忖度して言わないか、言っちゃうかだけで、大した差ではないのよ。
俺は、それがちっちゃい希望の光だと思っていますね。それをどう我々が膨らまして、でかい光にするか。で、我々にはでかい光にする力もあると思うんよね。
「おかしい」と声を挙げるには“自由な先輩”が絶対に必要
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ーーでも、頭ではわかっていても、声を挙げるってかなり勇気がいりますよね。タイジさんは、どうして声を挙げられるんですか?
佐藤タイジさん:
そもそもね、「おかしい」って思うことに、「おかしい」と言わへんことが「おかしい」んよ。
俺がそれをできるのは、音楽をやってきた巨大な先輩たちのおかげだと思いますね。ジョン・レノンやボブ・ディラン、ジャクソン・ブラウン…先輩たちはみんな自由なんです。発言にリミッターがかかってないんですよ。
ーーたしかに、ミュージシャンって自由なイメージがあります。
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佐藤タイジさん:
ビートルズがね、1965年に世界初のスタジアムツアーをやったんですけど、当時アメリカは人種隔離政策中で、黒人と白人の入口や座る場所が全部分かれていたんです。それにみんな驚いて、記者会見するんですよ。
「人種隔離政策をしているスタジアムでは、僕たちは演奏しません」って。すると、売上もままならんから、スタジアム側も忖度するんすよね。
人種隔離政策が撤廃されたのは、明らかにそれがきっかけ。そういう先輩たちを見たらな、むちゃくちゃかっこいいなと思うわけ。俺もそういう人間になろうって!
ーーそんなことが…!
佐藤タイジさん:
何が言いたいかと言うと、やっぱり人間って近くにいる人に影響を受けるから、先輩が忖度してたら絶対忖度してしまうのよね。
だから、意識を「変える」んじゃなくて、楽しそうで自由な人の近くに行くんだよ!
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佐藤タイジさん:
あと、これは覚えておいてほしいんだけど、“うまい人”ほど自由なんよ。
「ギターがうまくなりたい!」って一生懸命努力してるやつって、一般的な「重要度ランキング」が違うんです。
自分にとって1番大事なものがギター。それって他人にとってはどうでもいいようなことだけど、自分にとっては最大であったりするわけ。
ーー自分の好きなものが、ギターとわかっているからこそ、意見もはっきりしているというか。私たちもそういう先輩たちに出会えればいいのかな。
佐藤タイジさん:
絶対にそう! まずは、好きな音楽を聴くとかでもいいと思うよ。音楽や文章、絵などのアート全般は、つねに問題提起みたいなことをやってるわけやんか。
「これが好き!」というものに出会えたら、自由な発想を持てるようになる。自由な発想を持てれば、おかしいことに対して、「おかしい」って言っちゃえるわけよ。
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佐藤タイジさん:
あと、もうひとつ大事なのが「議論すること」。
今って議論することを、良しとしないですよね。お互いの考えを戦わせること、あんまりやってへんやろ。
ーーやらないですね。
佐藤タイジさん:
それってアカンと思う。
昔よく、ライブの打ち上げのときにいろんなバンドの奴と議論していたんだけど、違う意見の人と話をしないと、自分がどんな意見を持っているのか、自分が何なのかはわからないんですよ。
だから、なるだけおもろい先輩を見つけよう。思ったこと口にしよう。違う意見の人と話ししよう。これが、まずは第一歩だと思いますね。
ライブの電力を太陽光発電で補うことで、「おもしろく」発信できる
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ーー「気候変動」って深刻だからこそ、気軽に言及してはいけないイメージがあったんですけど、タイジさんはすごくポジティブに伝えてくれるので、何だかホッとします。
佐藤タイジさん:
やっぱりね、おもろくすることが大事だと思うんよね。
おもろくないと話題にもならんやんか。楽しそうじゃないと人は寄ってけぇへんし、おもろくないと続かへんのよ。
ーーたしかに、できることはいろいろあるけど、単に電気をまめに消して電力を削減するとか、紙ストローを使うと森林伐採を防げるとかだけでは、おもろくはないですもんね。
佐藤タイジさん:
おもろくない!(笑)。
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佐藤タイジさん:
でも、 『THE SOLAR BUDOKAN』は地球に優しいしおもろいでしょ? そういう仕組みが世の中にいっぱいほしいっすよね。結局、みんなでみんなが幸せと思えるものを想像していくしかないっすよ。
俺は震災のときに種の危機を感じて、「日本人が日本で生きられなくなるのかも」って怖い想像をしました。
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佐藤タイジさん:
でも、その想像力のおかげで、「じゃあ、再生エネルギーだけで武道館やってみよう」って発想するわけ。
「このまんま地球の温度が上がってったらどうなるんだろう」「南極と北極の氷は溶けて水だらけになんのかな」って想像を膨らませたら、行動に繋がってくと思うんだよな。
想像力を持とうとすること、想像力を持ちたいって思うこと、想像力を持って、何かに取り組むほうがおもろいと思うこと。
『THE SOLAR BUDOKAN』が、そんな想像力を膨らませる場になったら嬉しいですね。
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(取材・執筆=いしかわゆき(@milkprincess17)/撮影=友海(@6stom__))
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