「捨てられるはずの服に、価値が付くってすごくない?」古着系YouTuber・ゆーみんが語る、ヴィンテージファッションの世界
ヴィンテージファッションの魅力や歴史を伝える、古着系YouTuber「ゆーみん&きうてぃ」のゆーみんさん。
YouTube活動と並行して、オンラインヴィンテージショップ「フロムアンティーク(from_antique)」を経営する彼は、大好きなヴィンテージファッションを通じて環境問題について考えるようになったのだとか。
そんなゆーみんさんが、ヴィンテージファッションを楽しみながら環境に良いことをする方法について、ご自身の「ファッション哲学」を教えてくれました。
タイの古着市場で目にしたのは、大量廃棄されるかもしれない山積みの衣服だった
ーーゆーみんさんが、環境問題に興味を持つきっかけは何でしたか?
ゆーみんさん:
大きなきっかけとなったのは、4年前にタイへ古着の買付けに行ったことでした。
カンボジアとの国境付近にあるアランヤプラテートには、東南アジア最大の古着市場「ロンクルア市場」があるんです。
街1つが大きな市場になっていて、車やバイクがないと回れないくらい広い場所に、世界中から古着が集まってくるんですよ。
ゆーみんさん:
僕も専門のバイヤーさんの倉庫に入らせてもらったのですが、今まで見たことがないくらい大量の古着が山積みになっていて、衝撃を受けました。
気になったのが、売れなかった衣服の行方。
そこで、バイヤーさんに聞いたら、「次は韓国やフィリピンなどの国に行き渡り、それでも売れなかったら全部廃棄することになるよ」と返ってきたんです。
ーーそんな問題が…。
ゆーみんさん:
捨てられた衣服は、廃棄するときや輸送するときに、大量のCO2を排出します。そのうえ、たどり着いた発展途上国では、ゴミとして埋め立て処分されるか焼却処分され、環境負担に繋がっている。これは、問題だなと感じました。
大学生のときに、ファッションが環境・労働問題に与える影響を描いた『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』という映画を観て、わかっていたつもりでしたが、リアルな現状を目の当たりにするのは初めてで。
ーーそんなことがあったんですね。
ゆーみんさん:
そんな経験をきっかけに、自分たちのやっている古着に関わる仕事も、環境課題の解決に繋がるんじゃないかと、考えるようになったんです。
それからというものの、普段の生活でも衣服に限らず家具や雑貨も、新品ではなくヴィンテージ品やサステナブル商品を買うようになりました。
いらなくなったものは欲しい人に譲ったり、余分なものを買いすぎないようにするなど、「ものを循環させる」ことを意識して生活しています。
少ない衣服で豊かに暮らすために、「クローゼットの純度」を高めて環境に良いことを
ーーとはいえ、安く手に入るファストファッションなどは気軽に買ってしまいます…。どうすれば、少ない衣服でも満足できるようになるのでしょうか?
ゆーみんさん:
まず、「クローゼットの純度を上げること」を意識してみると良いんじゃないかな。
ーー「クローゼットの純度」…?
ゆーみんさん:
「これは高価なものだから」とか「人気のあるアイテムだから」とか、客観的な価値でものを選ぶんじゃなくて、自分の「本当に好きなものを選ぶ軸」を固めていくことが大切なんです。
自分の軸を作れば、自然と本当に欲しいもの以外は買わなくなるから、環境にも良い。
ーーでも、自分にとって本当に好きなものに出会うって難しくないですか?
ゆーみんさん:
たしかに、少し時間はかかるかもしれません。好きなものを選び取る力をつけるには、経験が必要。だから、僕は意識的にたくさんのものに触れたり、たくさんの人に出会ったりするようにしています。
衣服以外にも、音楽やアート、ゲーム、日々の食事などから、心の琴線に触れる体験を集めて蓄積していく。そうすると自分にとっての好きがだんだんと明確になっていくんですよ。
ちなみに、この衣服は僕にとってそんな「軸」を作ってくれるきっかけになって…。
ーーこれは、どんな衣服ですか?
ゆーみんさん:
「tricot COMME des GARCONS」というブランドの1994・1995年AWのコートです。袖がドルマンスリーブになっていて、エッグシルエットという卵のような形が特徴的。
僕がヴィンテージファッションにハマる前の19歳のときに、初めて入ったブランド古着のお店で出会った1着です。
最初はブランド名すら読めなかったのですが、実際に袖を通してみたら「なんてカッコいいコートなんだ!!」とびっくりして。
しかも、ちょうど僕が生まれた年と季節にできた衣服だと知って、迷わず購入しました。
ーーそんな運命的な出会いだったんですね…!
ゆーみんさん:出会い方にもドラマがあるのが、ヴィンテージファッションの面白いところだと思います。
この1着が僕の「ヴィンテージファッションが好き」という軸を作るきっかけになりました。
「リユース」ではなく「リバリュー」ヴィンテージファッションは、ただのサステナブルではない
ーー10年以上古着業界に身を置くゆーみんさんが思う、ヴィンテージの魅力はなんですか?
ゆーみんさん:
1番は「ストーリー性」ですね。たとえば、この衣服は僕が学生時代から憧れていた、世界的に有名なフレンチディーラーの方に譲っていただいたものなんです。
ゆーみんさん:
1938年に作られたフランス海軍の衣服で、100年前以上のリネン素材が使われている貴重なものなんですよ。本来なかなか手に入らないものを、憧れの方から買わせていただけたことは、言葉では言い表せないほど嬉しかったなぁ。
先ほどのコートのエピソードとも共通する部分ですが、ヴィンテージファッションにはそんなストーリー性があるんですよ。
ーー衣服との出会いが自分の人生にとっての大切な物語になるって、素敵ですね!
ゆーみんさん:
そうなんです。ヴィンテージファッションは、3R(リデュース、 リユース、リサイクル)のなかの「リユース(再使用)」に当たりますが、改めて考えると、ただのリユース以上の価値があると思っています。
だって、1度価値がゼロになり、廃棄されるはずだった古い衣服に、新しく価値を付けることができるんですよ!そして、価値をつけるのは、それを着る僕たちなんです。
僕たち一人ひとりが、古い衣服を「リバリュー(revalue)=再評価」できることこそが、ヴィンテージファッションが環境問題にも寄与できる要素の1つなんじゃないかな。
ーーそう聞くと、ヴィンテージファッションをもっと着てみたくなる…!
ゆーみんさん:
そうでしょう?(笑)。
せっかく、すでに価値がある衣服が世の中にたくさんあるからこそ、もっと古いものに価値を見い出してほしいと思っています!
ヴィンテージファッションを買うときの3つのポイント
ーーヴィンテージファッションのように、価値のあるものを長く大事にするために、買うときのポイントはありますか?
ゆーみんさん:
1つは、「無理をして買わない」こと。
自分の心の琴線にガッツリハマるものが必ずあると思うので、自分の好きを突き詰めてほしいです。
2つ目は「失敗を恐れない」こと。
自分には似合わないと思っていたデザインでも、着てみたら意外と似合ったり、サイズ感が難しいと思っていた衣服も着こなせたりするのが、ヴィンテージの面白いところだから、楽しんで着てほしい。
そして、3つ目が「衣服の歴史的背景を知る」こと。
たとえば、ミリタリーのヴィンテージ古着は、もともとは軍事目的で誰かのために専用で作られて、支給されたものなんです。
それが、今もキレイな状態で残っているということは、以前着てた誰かが大事に保管していたってことなんですよ。
かつて誰かのために心血注いで作られたものを、現代を生きる自分が受け継いでいる。そうわかると、「この衣服を大事にしたい」って気持ちになりません?
ゆーみんさん:
そんなふうに、着ることや所有することに「意味づけ」ができれば、ものを長く大事にすることに繋がると思います。
ーーゆーみん&きうてぃさんの動画では、そんなヴィンテージの価値や歴史についてわかりやすく紹介されていますよね。
ゆーみんさん:
僕たちはヴィンテージファッションが大好きなので、その魅力を伝えるために発信しています。
大切にしているのは、一方を褒めるために一方を貶さないこと。ヴィンテージファッションはかっこよくて、環境にも優しいけど、それ以外のものが「ダサい」「ダメなもの」としてしまえば、悲しむ人が必ずいます。
僕たちの発信を見た人に、純粋に「ヴィンテージファッションが楽しい」と思ってもらうことができれば、環境問題の解決にも繋がると信じて、これからも頑張っていきたいな。
(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr))
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