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2人子持ちの休日、夫婦揃ってスマホを忘れて出かけた土曜日


  
 土曜日の朝、みんな寝坊で9時ちかく。起きたての息子、咳あり。昨日息子が通う幼稚園の職員の家族がコロナ陽性だと連絡があり、職員さんは陰性とのこと。濃厚接触者の濃厚接種者に当たるのかよく分からず、コロナセンターに問い合わせ。濃厚接触者の濃厚接触者というのはなく、陽性の人が居て初めて濃厚接触者というらしい。普通に生活していいと言われた。

 念のためCOPD持ちのバーバと会う予定は断念し、生姜蜂蜜ミルクを作って飲ませたら息子の咳は少し良くなった。
 蜂蜜を使い切ってしまい、朝ごはんに予定していた桃の水切りヨーグルト豆乳パンサンドは見送りになった。
 昨夜は夜中まで起きて書類整理してから夜中のビールを飲んでしまったため、身体が重いし何も作りたくない。でも母さんだから仕方ない、風邪気味息子に合わせたメニュー。みぞれお揚げササミうどんにする。
 大根たっぷりと生姜をちょっと下ろして鍋に入れ、厚めの油揚げを三角型に16当分したものを麺つゆで煮る、片栗粉をまぶしたささみを1分熱湯で煮て放置した柔らかささみを薄くスライスして入れ、茹でたうどんは冷水でよく洗う。冷たいうどんに熱いみぞれがけ、そして3歳と2歳が食いつくように、天かすをチンしてスプーンでかけられるギミックを採用。
 
 まあまあ食べたが、よくこぼす。子供らがこぼしては屈んで拭き、を繰り返して疲れてきた。ちゃんと拭けていないのか、最近部屋に蟻さんがいる。蟻さんが天かすを運ぼうとみんなで会議している様子を見ていたら、食べ終わってうろうろしていた2歳の娘が蟻を踏みそうになる。
 だめっ!と叫ぶと、息子が立ち上がって我先と蟻さんを踏みつけた。蟻は当然潰れて死んでしまった。命の大切さを教えなくては、とあれこれ話してみるがあまり聞いてくれない。
 夫が「ほら見てみ、アリ吉が動かなくなって、みんな他の蟻がどうした?どうした?って困ってる」と話していたので、それね!と思い
 「蟻さんからしたら、父さんがかいじゅうに踏み潰されたようなもんだよ!アリ吉の家族は困ってるよ、父さんが死んだら悲しいでしょう。死んだら動かなくなって、遊べないし、喋れないし、食べれないし、絵本も読んでくれないし、お髭も出来ないんだよ(お髭とは夫のあご髭を触って安心する行為)」と目を見て説得したが、息子は「蟻地獄をやっつけたかっただけなんだ」と弁明した。

 走りながら高音で叫ぶ子供たちをいなしながら夫が出かける用意をしてくれている。母さんは蟻の一件で疲れて布団で授乳したらだるくなって20分くらい寝てしまっていた。むくっと起きるとかまって貰えず持て余して、バナナバナナ!アンパンマンジュース!とごねている声がする。そういえば桃缶があったと思い出して、桃缶の甘いシロップを水切りヨーグルトに混ぜて豆乳サンドにして、みんなでひとくち食べてから出かけた。

 近くの公園に行くと、フリーマーケットをやっていた。2人乗りのベビーカーの後部座席に乗って悠々移動していた息子は、降りる!とベビーカーを下りておもちゃを漁っている。夫は小学生がチャリティーで作った折り紙作品を買って手裏剣を息子に与えたり、小さなアンパンマンのフィギュアみたいなものを娘にあげたりしている。
 私は先日断捨離してから服が本当に無いのでラックを一枚一枚見ていった。若い頃に夫が買ってくれたスナオクワハラの古着が多数あった。数枚持って夫に相談すると、白いカーディガンに色鮮やかなピラピラがついてる服はきっと使いづらいからやめた方が良いとアドバイスされ、そうだなと思ってやめた。夫の服のアドバイスは的確だし、断捨離出来ない私の代わりに「その服ときめく?いや要らない要らない」と断捨離を進めてくれる。「減ったら新しいのが入ってくるから(捨てなさい)」が夫の殺し文句だ。
 洋服の色使いが個性的なマダムから3枚1200円で購入、素敵な服ですね、お洋服のお仕事の方ですか?と話しかけるといやまあその様な違うようなと誤魔化された。フリマで職業は聞いてはいけなかったか。素敵な服ばかりですね!と切り返すと「あースナオクワハラ懐かしいって感じですね。」言われた。あれ、買ってはいけなかった?そういえばもうブランドはなくなっていたけど、そんな古い服着んの?と言われたようでなんだか気持ちがざわざわした。  
 HSPだからか、色使いが個性的なマダムの友達が集まって仲良くしているコミニティーを横目に、やはり集うのは苦手、と思う。夫に話すと「僕が女性でもそうなると思う。それに、○○ちゃんが僕でもきっとこんな男だよ。ストローマグがちゃんと洗えてなくて妻に指摘されたり、上靴をネットに入れて服と一緒に洗って怒られたりするような。」と話した。クレームか?と聞くと、いやいや違うよ〜と夫はにやにやした。私の方がまだコミニケーション能力高めかと思ってたけど、夫は自分の等身大を知って無理しないタイプなだけかも。

 そういえば夫婦2人ともスマホを忘れて歩いてきたことに気がつく。フリマ会場を後にして、どこに行こうかとぶらぶら歩いて、かき氷が食べたいと話す。高円寺にあったと言うと遠すぎで却下された。ラーメンが食べたいけど子連れじゃ食べたい店はカウンターのみだし無理だよね〜とか言いながら話してると、そういえば行きたいけど行ってなかったカフェが近くにあったと思い出した。
 いつもはGoogleマップをすぐに立ち上げるところだが、夫が勘で歩いて5分くらいで着いた。行く途中、道がはっきりしない場所に向かうのが楽しくてなんだか一緒にわくわくした。あまりに分からなかったら犬の散歩の人に聞こうと夫が言うので、犬の散歩の人が現れなかったら永遠にこの道を歩くってルールとかね、いいね、と話しながら推測で歩く。
 夫が学生の頃、友人とコンビニに入って「いっせいのーせ!」で同時に言ったアイスの商品名が同じなら買えて、ダメなら次のコンビニまで歩くという遊びをしていたという話を聞いた。「それって、自分が選んだこと以外の奇跡にかける、みたいな遊び?」と聞くと、そうではないと夫が説明している間に着いた。

 木造窓ばりの長屋のような古いカフェ。シフォンケーキにはメロンとさくらんぼと珈琲まで付いてなんと700円。息子はアイス500円、夫は自家製カレーライスにアイスコーヒー1200円。娘は寝ている。
 窓から前の公園が見えて、公園にもすぐに出られる良い場所。食べ終わった息子が親を残して初めて一人で公園へ。カフェのドアをチリンチリン鳴らしながら私たちが見える場所を一周りして、すぐにチリンチリンと帰ってくる。そしてすぐ、また行ってくる!と出かけては戻ってくる。こうやってどんどん遠くに行けるようになるんだね、と夫婦で話してしんみりした。

 夫のカレーを分けてもらうと、ナスたっぷりで、辛いけどさっぱりした好きな味のカレーだったので借りたカレーを沢山食べてしまった。夫にもシフォンケーキをあげ、起きてきた娘、まだ自分が何者か思い出している途中のような顔をした娘未満の子にもあげた。

 ふと大きなガラステーブルを見ると薄緑色の丸い灰皿を確認。夫に指差して交代で子供を公園に連れて出て、お互い久しぶりに喫茶店で一服しようとジェスチャーで伝える。夫は室内で吸うのは気がひけるからどうぞ吸って、子供連れてくから、と共感を得られなかった。夫が「このアイスコーヒー、懐かしい味がする」とひとくちくれたので、ストローで吸うとふわあと珈琲の苦甘い風味が広がった。「ふわあと広がるね!」と返事すると「そうでしょ!昔の喫茶店の珈琲だね」と一瞬目を輝かせた。そして子供らを連れて出てくれたので、窓を見ながら久しぶりに喫茶店で一服した。母親が煙草なんてって思われるかな〜まあ灰皿あるしいいか。と思いながらお会計していると、レジ付近に「エジプトの砂」と紙に書かれて透明なお皿に平らに盛られたエジプトの砂らしき黄土色の砂があった。きっと一生で行くことのないであろう砂を指先で触ってから公園へ。

 ひとしきり遊び、子らが水道で手を洗ってから、なんとなく線路ぞいを歩いて駅方面へ。通りかかった材木屋さんで、たい焼きとかき氷を売っているキッチンカーを発見。たい焼きと餅入りたい焼きを買って、長ーい一本木のベンチに並んで食べた。
 材木屋さんのフォークリフトが動いていて、1枚110円の廃材を売っている小屋ごと移動していた。重機ファンの私と息子は大興奮。重機の大きさや脅威はなんとなく命の危険を感じるからか、いつ見ても新鮮な感覚になる。
 その後、晩柑不知火の自家製シロップのかき氷を削っているのを観察、子らに実況中継しながら見る、家族で一杯だけ食べた。最後は氷が溶けて甘い氷水みたいになると、兄妹争奪戦になり娘が泣いた。泣いて残りを勝ち取り、ラーメンのどんぶりのように甘い水を飲み干した娘は、知らない夫婦にアイスキャンディーいる?と可愛がられていた。
 今日の娘のコーディネートは、ゆめ可愛い色合いのサイズぴったりのレトロワンピースに、お花の付いた丸いショルダーバック、バックの中にはペンギンのぬいぐるみ、ペンペンがいつも入っている。
 かき氷を待ちながらワンピースをたくしたげ、パンツ丸出しで踊っている5歳くらいの女の子が居た。三姉妹の末っ子ちゃんだ。お母さんが、道では踊らないし、パンツ見せると変態に連れて行かれるよ、と叱られていた。明らかに発達障害だろうなと動きを観察。その子の母親に踊っていて可愛いですね、と話しかけると「ちょっと病気なんだよね〜」と本人が同意を求められていた。
 自分の幼少期に似た変わり者の少女、おそらくちゃんとした家庭の中で「どうか虐げられず育ちますように」と願う。
 木材屋さんの中に入ると、木の匂いが充満していて素敵。ダイニングテーブルに使うような屋久島の一枚板は8800円。いつかリビングにこんなテーブルを作ってみたい。
 竹の生えている小さな公園を通る、雨と草の匂いが良い場所。子らはベビーカーから降りて原っぱに駆け出した。息子はさっそく落ちている枝を両手に振り回している。娘はただわーっと大声を出して走る。街中でもたまに走れるような自由な広い場所って必要なんだな、と思う。大きな赤い字で禁煙、禁酒とベンチに書かれていたが、喫煙者が一人で通りかかったら吸わずには居られない魅力的な都会の隠れ場だ。
 
 それからデパートで息子と母さんの雨カッパを試着して買う。息子はブルーと迷ってピンク、母さんはエメラルドグリーンと迷って藍色を購入。
 靴屋で娘の足サイズを計測してもらう。ファーストシューズから一年経ってもサイズが変わらなかったが、やっと13cmになっていた。息子のお下がりのアシックスのスニーカーがあったが、嬉しくてサンダルとスニーカーを二足買う。お腹がすいてきて、夕飯を食べるご飯屋さんを探すが、まんえい防止条例でどこも20時近くはやっていない、仕方なくアンパンマン煎餅半分とコンビニのおにぎりを子らに支給してからお茶飲ます。

 帰りの電車から降りて、電車を見送りながら手を振っていた息子は車掌さんに手を振りかえして貰えた。パトカーや道路清掃車、消防車なども必ず手を振る、彼の大切な儀式。
 家に着くころには眠くなってきた子供たち、ベビーカーから下ろして手を洗い、さっと着替えさせてオムツ替え。息子は絵本も読まず自動的に寝てくれて、娘も寝転びながら授乳するとすぐに寝た。

 そういえば夕方、商店街の雑居ビルの地下にあるトイレに行くと、個室のトイレットペーパーホルダーの上に文庫本が置いてあった。カバーを裏返して白いカバーにしてから本体にセロテープで止められていた。書店で働いていた頃で考えるなら、セロテープでカバーを留めることを頼むお客さんって年間3人いるかどうかだたな。本のページは焼けて古びていたが、吉本ばななさんの日々のこと、というエッセイの文庫だった。

 スマホを忘れると色々と調べられなくて不便だけど、不便な1日の旅は楽しかった。デジタルデトックスにもなり、スマホを見る分他の感覚を養えたいい日だった。何キロ歩いたかも、写真も何も残っていない日。

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