OEDO[1-4]墾田票田私財の法
しかしいくら防衛費が、国民の不安をあおるだけで引き出しやすいと言っても、どこまでも青天井って訳にはいきません。無駄に豪華な市庁舎と同様、「無駄な軍備」だと判断されれば国民からの不満が吹き出します。
冷戦が終了し、脅威も去ったのに、いつまでも年間何千億ドルもの予算を軍事力に投じていたら、納税者も黙っていません。脅威もないのに訓練ばかりを重ねていたら、隊員からも文句が出ます。「鍛えられた筋肉は行使せねばならぬ」の理(ことわり)です。
結果アメリカは、「覇権国家」として「世界の警察」を名乗り、「パクス・アメリカーナ」実現のために、世界中の地域紛争や独裁政権にちょっかいを出し続ける役回りとなったのですが、ソマリア、アフガン、イラク、リビア、シリア──やたらと失敗が多いですね。
ローマ帝国がもたらしたという天下泰平の200年間──「パクス・ロマーナ(ローマによる平和)」を真似ようとしても無理があります。時代が違います。繰り返し主張している通り、帝国主義的な戦争も、帝国主義的な平和も既にオワコンなのです。
ところがまだ、ミリタリーコンプレックス(軍産複合体)はオワコンではありません。国民は古い価値観に縛られているし、簡単に感情を揺さぶられます。前回は資本家の立場から見た戦争のインセンティブを論じましたが、政治家からすればこれを利用しない手はない、強力な動機になります。
政治家が軍需産業と手を組めば、4種の票田を獲得できます。1つ目は単純に生粋の軍国主義者からの票。いつの世にも血の気が多く、敵国を憎む国民は一定数存在します。2つ目は軍需産業とそれを下支えをする関連企業の従事者。これは軍事費が嵩めば嵩むほど懐が潤うので自然増殖してくれます。
3つ目は金の力で動く浮動票。これは単に軍事関連企業からの献金による、選挙活動資金だけではありません。カジノ資本主義とも呼ばれるこの時代、自らの所有株のためにボジショントークならぬポジション投票に走る投資家もいるでしょう。しかもその数は少額投資者となって広がっています。
そして4つ目がポピュリズム。温和で民主的な政治家を好む人が多い反面、横暴で強権的な政治家、強いリーダーを求める民衆もいるのです。汚職やスキャンダルにまみれていても、濁った田沼を好む魚です。しかもこの「ポピュリズム」という言葉、米国ではさほど悪い意味を持ちません。
我が国では、五輪の汚職が露見し、国葬が非難され、宗教との癒着、景気低迷、失言、相次ぐ大臣の辞任などで内閣の立場が危ぶまれた時、Jアラートを鳴らして国民の関心を逸らす政治をそう呼ぶきらいがあるようですが、まぁ、どちらでも良いでしょう。どちらでも票田を開墾し、私財となせます。
敵の敵は味方──我が国を脅かし、領土を掠め取ろうとする憎き仮想敵国、ローグネイション。中露北朝鮮、ならずもの国家を討つリーダーこそ強い味方です。たとえ彼が独裁的であっても、醜聞にまみれていても、絶大な支持を集めます。冒頭の言葉は撤回します。やはり軍事費はいくらでも引き出せるのです。
故に日本のリーダーも、近平、プーチン、正恩も、似たような政策を採ることに帰結するのです。晋三は忖度に固められた独裁体制を構築し、義偉は学術会議を放逐。文雄は大軍拡を成し遂げました。言論の自由度を先進国最下位に引き下げ、中共と鏡写しの政権を構築しようとしています。
──と、ここまでは特段何も新しくもない一般論を述べてきました。どこかで誰かに言い古されている主張。わざわざ取り上げるまでもない当然の常識です。当然、そうHBの鉛筆をベキッとへし折るのと同じくらい、コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい、当然のことです。
そんな政治家を今さら悪しく罵っても始まりません。4つの票田と支援団体。既に出来上がり、複雑に絡み合った利権のシステムです。解体するのは至難の技となりますし、彼らの既得権益に介入しようとすれば失敗します。悪には悪の救世主が必要な時もあるのです。
真っ向から批判、立ち向かうのではなく、システムはそのままに換骨奪胎、横滑りさせる──それが「地球防衛隊」構想になります。資本家は利潤を追求しながら政治家を利用し、国民は投票により政治家を誘導する──つまりハサミ討ちの形になるのです。
※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。
第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。
敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。