OEDO[2-4] 安全保障のアイデンティティー
そして有事です。災害時の人命救助です。これこそが「地球防衛隊」活動の真骨頂。世界の注目を集め、日本がヒーローとなれる晴れの舞台となります。突発的なセンセーションで、地雷撤去のような継続的な平和活動以上に全世界に日本のプレゼンスを高める平和プロパガンダになります。
つい昨年もトルコ・シリアで大震災が発生し、少なく見積もっても5万6千人の方が命を落とされました。日本からは初動として国際緊急援助隊・救助チーム75人の派遣が決定され、そのメンバーには海上保安官や消防士の方々が含まれていました。
倒壊寸前の建物が並ぶ危険な現場です。夜は氷点下を切る寒さの中、あちこちの瓦礫から救助要請の声が上がる混乱状態。命がけで救助にあたられた隊員の方々には、頭が下がるばかりですが、素人目線から言わせてもらえば、75人は少ない。あまりにも少なすぎます。
もし自衛官25万人が「地球防衛隊員」に転身すれば、初動で数百〜数千人単位の出動が可能だったはずです。万単位も可能かもしれません。生き埋めの人が助かる見込みには、72時間の壁が存在すると言われます。今回のトルコ・シリア地震では8日後に救助された女性、12日後に救助された家族もいました。
しかし生き埋めになった空間で飲み水や食糧にありつける確率は低く、圧倒的多数の人々は72時間を生き延びることはできません。現地の方々は口々に「救助隊は来るのが遅すぎました」と訴えていました。もしあの時点で地球防衛隊が存在していたら、何百人、何千人の命が救えたことでしょう。
トルコは親日国家として有名です。そのきっかけは1890年に起きたエルトゥールル号の海難事故です。和歌山県串本沖で650人あまりが海に投げ出されたこの事故で、地元の方々は必死に69名の方を救助しました。この美談が今でもトルコでは語り継がれているのです。
130年前の話です。生存者わずかに69名。恩義に厚い方々です。ご存知の通り、今回の戦争ではロシア寄りに傾いているトルコですが、「地球防衛隊」が数百人、数千人を救助できていたらどうなったか、想像に難くありません。そして震災はトルコだけでなく、世界のどこかでまた必ず発生するのです。
海外への派遣となると、たまに「他の主権国家に部隊を勝手に送ることは内政干渉にあたる」としてご批判を頂くことがありますが、紛争地へ、しかも軍隊を送り込みなどすればもちろんそうでしょう。しかし地球防衛隊は前述した「国際緊急援助隊」と同じです。
紛争に起因する災害には「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」に基づき、国際連合平和維持活動(PKO)の派遣が対象となっていますから、畑がまったく違うのです。地球防衛隊は紛争による災害ではなく、自然災害です。
緊急事態に駆けつければ、いわゆるプッシュ型支援や救助になるでしょうから、予め各国と「災害同盟」なる新たな条約を結んでおくと良いですね。もちろん片務でも。軍事同盟より余程マシです。
驚くことに日本国内の災害においても、自衛隊の派遣に異議を唱える人が少なからずいます。本質が軍隊だからという理由からです。地球防衛隊は「隊」という名は付くものの、完全なるレスキュー隊、救助隊です。そんな問題も氷解するでしょう。
そう、それは地震列島、日本のことも考えなくてはならないのです。それが最優先、喫緊の課題です。しきりに警鐘が鳴らされる南海トラフ地震。マグニチュード8~9クラスの発生率は、今後30年以内で70~80%。予想される死者数は20〜30万人以上に達するとされます。トルコの比ではありません。
しかも救助は絶望的。通常の地震の場合、日本のどこであってもまず72時間以内には救援物資が届くことが想定されています。しかし南海トラフ規模となると話は別。駆けつける部隊がありません。政府作業部会は今月4日、想定死者数を8割減らす政府目標に、「達成は難しい」との見解を示しました。
南海トラフが発生した際の対応は、緊急消防援助隊の派遣計画(アクションプラン)に定められています。それによると1回目の地震で被害が予想される10県(静岡・愛知・三重・和歌山・徳島・香川・愛媛・高知・大分・宮崎)は、たとえ被害が少なくても出動しません。地元に留まる決定をしています。
さらに総務省消防庁によると、列島の西と東が時間を空けてズレ動く「半割れ」ケースなどが想定されるため、全国の72%の都道府県が「地元の防災力を維持することが難しい」と回答。登録される6,135の部隊のうち、45%は出動困難、その数を無回答だった自治体もあったというほどです。
パニックが起こります。自衛隊は国、警察は県、消防は各市町村の管轄、地域差が大きくなるのも仕方ありません。消防団を維持できない過疎の問題も深刻化していますが、本当に危ないのは大都市。通常の火災には出動可能であっても、これだけの人口、高層ビルが密集した大都市の震災となると対応できません。
国は守ってくれないのです。というより、守りたくても守る能力がないのです。戦争と比べてみてください。これから30年以内に20〜30万人が亡くなる戦争が起こる確率は何%でしょう。南海トラフは80%です。早急に自衛隊を「地球防衛隊」に改編しなければ、愛する人が死にます。あなたが死にます。
同じ訓練なら、憎き敵を殺す訓練より、愛する者を守るレスキュー訓練をして欲しいものです。同じアニメ・漫画ネタは二度と使用しない方針を貫いてきましたが、すでに第2回[002]で登場させてしまったワンピースのルフィー君も「何が嫌いかより、何が好きかで自分を語れよ!!!」と叫んでいます。
繰り返します。愛国者の皆さん。真の愛国心とは、憎む心ではなく、愛する心にあるのではないでしょうか。ツギハギだらけの詭弁を弄して自衛のアイデンティティーを語るより、「地球防衛隊」にこそ愛する者を守る、国を守る資質は備わるはずです。
※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。
第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。
敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。
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