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世の中の9割のマーケティングは必要ないと思う理由

やや煽り気味のタイトルですが、今回は下記記事でピックアップした『顧客起点マーケティング』の紹介と個人的に感じる今の世の中のマーケティングについてのお話しです。

1. マーケティングの課題

煽りタイトルのまま引っ張りたくないので、先に結論をお伝えすると世の中の9割のマーケティングが必要ないと思う理由は、殆どのマーケティングは本来の目的が果たされていない独りよがりなものであり、往々にして予算消化のための費用と化しているように感じるためです。

とくに中小企業などでは、利益が大きく上がった年に税金対策として広告を打つようなケースが多く見受けられ、そうでなかったとしても戦略や設計をもって計画的に実行している事例をあまりみたことがありません。

それはコンサルとして企業を支援しているときに感じることもありますし、いち消費者として世の中の広告やマーケティング施策に触れるときにも、心の底からポジティブに反応できる機会はごく稀だなと感じます。

もちろんこの課題は中小企業だけが抱えているものでなく、専任のマーケティング担当者がいるような大企業でも同様です。

とくにマーケティングがあまり機能していない企業だと、それぞれの担当者は自身が部署異動するまでの2-3年の任期だけを意識した短期的な刈り取りや場当たり的な予算消化に目を向けがちであり、中長期的な視点で考えられないことが多いように思います。

2. 顧客起点が求められる理由

筆者がマーケティングにおいて最も大切にしているのは、一人の名前を持つ具体的な顧客、〝N=1〟を徹底的に理解することです。

名前の見えない複数の誰かではなく、実在する一人のお客様に会って、ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的に繋がります。

その深い理解と共感を通じて、ビジネスを成長させる「アイデア」が必ず見つかるのです。本書のタイトル「顧客起点マーケティング」には、そうした考えを込めています。

一人のロイヤル顧客が、なぜロイヤル顧客になったのか、どういうきっかけがあったのかを深く理解できれば、そのきっかけをまだロイヤル化していない顧客に提示することで、高い確率でロイヤル化を促すことができます。

同時に、離反しそうな顧客を早期に見つけて、その深層心理を把握し、事前に対策を取れば、競合や新しいデジタルのベンチャーサービスに突然顧客を奪われるリスクを軽減できます。

出所:西口一希『たった一人の分析から事業は成長する実践顧客起点マーケティング』

顧客起点マーケティングとは端的にいえば、前章で述べた現代の大半のマーケティングの真逆にあるような概念だと思います。企業や各担当者が自身のことだけを考えて消化するものではなく、顧客理解を始点としてマーケティングは行われるべきです。

ロイヤル顧客にはロイヤル顧客なりの、離反客には離反客なりの理由や思いが一人ひとりあるのであり、そこの理解がないままに大勢に向けて広告を発信しても、思うような効果は得られないか、得られたとしても再現性のないものになってしまいます。

3. 効果検証の必要性と障壁

顧客理解のために本書ではN1に対する分析の仕方について詳細に説明されていますが、このような考え方はいわゆるデータドリブンマーケティングとも言われるように、データを起点としてPDCAを回していく活動とも言い換えられます。

出所:KOTODORI「【要約】データドリブンマーケティングとは?企業の取り組みなど解説!」

マーケティングをやりっぱなしで終えないためにも、施策実施前には入念なデータ収集が必要であり、実施後にも続けて同じ指標のデータを取得することで、施策による効果を分析することができます。これが効果検証であり、マーケティングを実施する企業はみなマストで行うべきプロセスだと思います。

ただ冒頭でお伝えした通り、マーケティングに関わる大半の人にとって、こういったことを実施するインセンティブを感じている人は少数です。大半の担当者は短期的な思考で場当たり的な予算消化になりやすく、広告代理店のような提案者側も効率的に売上をあげることが一番の目的ですので、なるべく単価の高い媒体を売り、効果検証も最小限にする(もしくはやらない)ことが多いです。

販売促進やデジタルマーケティングを主務とする層が、ブランディングは無駄な投資であると感じている一方で、テレビ CMやデザインやPRを主務とする層は、ブランディングこそすべてであると感じており、「計測できないクリエイティブが重要である」という詭弁も聞かれます。「販売促進は一過性でしかない、短期思考である」との意見も、多く耳にしてきました。

「ブランディング」目的として半ば聖域化しているマーケティング投資効果を、9セグマップの動きで確認してください。もし、下から上への動きとして見えない、つまり、顧客の購買意向が高まらない投資だったとしたら、それは「ブランディング」目的として成立していません。

是非、顧客視点での「ブランディング」の定量化を行っていただきたいです。

出所:西口一希『たった一人の分析から事業は成長する実践顧客起点マーケティング』

上記でも論点として挙げられている通り、ブランディングは効果検証と縁遠いものとして押し切られやすい領域の最たる例です。顧客起点を意識した定量化を進めるうえでは、現場レベルではなく経営陣が明確な方針として意識して打ち出さない限り現状は変わらないでしょう。

4. 虚業を生み出さないために

上記でお話ししてきた通り、マーケティングは概念的なふわっとした状態でもビジネスとして成り立ってしまう側面があり、そう言った意味で虚業として扱われてしまうことが多い分野だと思います。

SNSをみても、フィード内で頻繁にでてくる広告はよく分からないデジタルマーケティングを評したものばかりであり、明確に白黒つけずらいからこそ、実力より口の上手さだけで何とかなってしまうことがよくあります。

これまで批判的な見解を述べてきましたが、私自身はマーケティングは経営にかかせない重要な機能であり、うまく実施できればビジネスの成長に直結させられる投資になると考えています。

そのために鍵を握るのが、やはりちゃんと一人ひとりの顧客を解像度高く正確に理解すること。そして実施した施策をやりっぱなしで終えるのではなく、効果検証を必ずおこなってPDCAを回していくこと。

世の中全体がそういった方向に変わっていけば、いち消費者としても、よく分からない広告やクリエイティブに追いかけられることは今よりも少なくなるでしょうし、より皆が広告やマーケティングに対して良い印象をもつようになるのではないかと思います。


つづく↓

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