🇻🇳ハノイの風に乗って

海外をひとりで旅しているとよく声をかけられる。
よくあるパターンの１つとして、「案内するよ」というものだ。

普通、このパターンはぼったくりだろう。
最後の最後で高額なお金を請求してくるあれだ。
けれども、直感的に「あ、この人いい人だな」と感じる人がいる。
そう感じた相手には好奇心が勝ってしまって、じゃあお願いします！とついていってしまう（良い子はマネしてはいけない）。

ハノイの旧市街で声をかけてきたジェームスもそうだ。
「もし必要だったら、おれのバイクでハノイの観光地を案内してあげるよ」
彼は確かにif you needと言ったのだ。
悪い人はこういう物言いはしない、と思う。
押しつけがましくないあくまで提案の姿勢に、つい乗りたくなってしまった笑

『明日なら空いてるけどどうかな？』
「OK、じゃあ明日君のホテルに迎えに行くよ」

そして翌日。
ホテルのロビーで待っていると、ほんとに来た。
市街地から少し離れているホテルだったし、半分来ないと思っていた。
疑ってごめん、心の中で謝る。

しかも彼の誠実さのあらわれだろう、きちんと僕の分のヘルメットやマスクも用意してくれていた（ハノイではバイクに乗っている人は大抵マスクをしている。砂埃がひどいためと思われる）。

「準備はいい？行くよ」
僕はジェームスにしがみつくと、それを合図にバイクが発進する。

これぞハノイ名物、ものすごい数のバイクが絶え間なく行き交う。
ジェームスは慣れた様子でどんどんバイクを抜かしていく。
結構怖い。
衝突しないのが不思議なくらいだ。
外国人が、スクランブル交差点で人がぶつからないのを不思議がる気持ちがわかった。

観光スポットに着くと、その都度バイクをとめてベストポジションで写真を撮ってくれる。
写真を撮るときはその都度ヘルメットを外すのだが、慣れていないせいで上手くいかない。
するとジェームスが「君は赤ちゃんみたいだね」と言って呆れ顔でヘルメットの付け外しをしてくれる。

そうやって段々、彼との距離が縮まっていく。
最初は怖かったバイクも楽しくなってくる。

文廟、オペラハウス、ハノイ大教会、ホアンキエム湖・・

ハノイの街をジェームスと駆け抜ける。
照りつける太陽が僕らの心を熱くする。
吹き抜ける風が僕らの心を躍らせる。
鳴りやまないクラクションでさえ僕らを彩る音楽になる。
その瞬間、僕らの周りだけキラキラと輝いているようだった。

ひとしきりハノイ旧市街をまわった後、ジェームスがオススメだというシーフードの店に行って二人でたらふく蟹を食べた。
腹がはち切れそうになるまで食いまくった。

食べ終わって、駐車場に向かう時、ふいにジェームスが僕の肩を組んで言った。
「おれら、こうしてると兄弟みたいだよな」

やった、赤ちゃんから兄弟に昇格したらしい。

そうしてジェームスのスペシャルツアーは終わった。
最後もホテルまで送ってくれる紳士ぶりだ。
最後にガイド料を要求されるのかも・・と思ってた自分をぶん殴りたい。

日本に戻ってからも彼はインスタからちょくちょくメッセージをくれる。
「無事に着いたか？兄弟」
「転職おめでとう、兄弟。うまくいくことを祈ってるよ！」

ジェームスとの出会いはハノイの美しい思い出だ。
See you soon, bro!!