005_確認状対応における非効率を考える(債権債務確認状版)
被監査会社と監査法人との間で起こりうる非効率を考えることがテーマの当note。
今回は監査対応で必ず実施するであろう【確認状】の中でも日々取引している相手様に対する債権債務や取引内容を確認するための債権債務確認状(ここではそう呼ばせていただきます。また、BS残高ではなく、取引を確認する確認状もありますがここでは省略)対応について考えたい。
※私は監査法人側から確認状を発送したことがあるだけなので、受け取り側である企業のご担当者様のご意見、お持ちの方いらしたら聞いてみたいです。
1. 何を書くか
前回は監査対応のひとつ【確認状】の全般のお話を書きましたが、今回はその中の債権債務確認状にまつわる手続きのフローと非効率ついて書いていきたいと思います。
2. 債権債務確認状とは
債権債務確認状とは、簡単に言うと例えば被監査会社がBS上でA社に対する売掛金100円計上している場合、そのA社は被監査会社に対して買掛金100円計上しているはずという前提の基、A社にその内容を直接教えてもらう手続きです。
確認状は、監査チームが確認したい勘定科目の中から取引先をランダムで選んで、選ばれた取引先会社様に送付することとなります。
3. 債権債務確認状対応の流れ
確認状対応の簡単な流れは以下です(3月決算を想定)。
①監査法人から確認したい勘定科目を知らされる
②被監査会社は当該勘定科目の数値が固まり次第、取引先別の残高明細を監査法人に渡す(大体4月の10営業日くらいでしょうか)
③監査法人は②の明細からランダムで取引先を選んで、被監査会社に確認状作成のお願いをする
④被監査会社で確認状を作る
③被監査会社から監査法人に確認状を渡して、監査法人から取引先に発送する
④取引先から監査法人に直接回答が返送される
⑤監査法人は被監査会社の財務諸表情報と一致しているか突合する
一致している場合:終了
一致していない場合:差異調整といって、一致していない原因を調べていくことになる。
4. 起こりうる問題、非効率を効率的にするには
上記の流れを基に主に②③④⑤についてそれぞれで発生しがちな問題点と非効率→効率にできるポイントは以下かなと思いますが、前提として以下だけで効率化はできるのではと思います。
前提:スケジュールすり合わせの重要性
大体これができていない。期末監査に入る前(私の場合は3Qレビュー中でした)に被監査会社の担当者と対応のスケジュールをしっかり固めておくことが重要ということです。この時に固めておくポイントは以下が考えられます。
・確認状を送付する勘定科目をいつまでに被監査会社に知らせるか
・残高明細が完成する日はいつか
・確認状送付先の取引先はいつまでに被監査会社に知らされるか
・上記基にいつまでに確認状を作成してくれるか
・確認状発送後、取引先からの回収期限をいつまでに設定するか→これが過ぎた場合、どのように督促をするか
・確認状が返ってこない場合の代替する手続き内容
大体上記を被監査会社と監査法人とで決めておけば、確認状対応はうまくいくと思いますが、これが確実にできている担当者はあまりいないのではと思います。
②取引先別の残高明細を監査法人に渡す
・残高明細>その他に集約している
被監査会社が作成している取引先別の残高明細の中身をみると「その他」に集約している場合があります。その他の残高がすごく小さい金額であればいいのですが、基本的にはその他の内容を精査して取引先別に区分してもらう必要があります。そのため日々の業務の中でしっかり取引先情報を入れておくことが重要であり、監査対応上も効率化すると思います。
③被監査会社に確認状作成のお願いをする
・過去に送付して問題があった取引先にまた送付するのか
どうしても取引先によっては確認状対応をしてくれない取引先もいます。そういった取引先に毎年確認状を送付するのはどうかなと思います(もちろんランダムで取引先を抽出するので当たったら基本的には送付が原則)。そのため毎年確認状が返ってこない取引先に対する債権債務残高は他の方法で検証する等、あらかじめの対応計画をすると考えます。
・押印申請について把握する
紙面で確認状を送付する場合、会社の社判を押印する必用があります。通常、会社は押印するための押印申請が必要となります。監査チームがこれを把握しておらず、すぐに確認状が欲しい状況であっても数日かかるという可能性もあります。そのため前提に記載の通りしっかり準備をしておく必要があります。事前にやり取りすることで効率的に業務が進むはずです。
④取引先から監査法人に直接回答が返送される
・回答内容に不備があり再送
これは多発しているのではないかと思います。今は大手監査法人であれば確認状発送は担当部署が対応しているので、これから書くことが可能か不明ですが、私がやっていたときは回答に不備が起こりそうな箇所にはすべて付箋を貼って、取引先の担当者が迷わないように準備をしていました。この付箋を貼る作業は時間がかかりますが、再送して返送を待つのと比べれば全然効率的かと思います。
・返送されてこない場合の督促
返送期限までに確認状が返送されてこない場合、被監査会社から取引先に督促の連絡を入れてもらうことがあります。この時、監査チームの方は「督促してください」とだけ言ってくる場合がありますが、以下の部分をしっかり確認するように督促を依頼した方が効率的と思います。
✓確認状は届いているか
✓届いている場合、いつまでに対応してもらえるか
✓監査法人に返送する前に監査担当者にPDFデータを送付することは可能か→ここで返送前のPDFデータを確認することで再送のリスクを低減できます。
・返送されてこない場合の代替的手続
確認状が返ってこない場合、監査法人は代替的な検討を行います。
これも前提に記載したスケジュールと確認状が返ってこなかった場合の対応を被監査会社にお伝えしておくことで「今更ですか?」という状況にならないのでしっかり事前にお伝えしておきましょう。
⑤監査法人は被監査会社の財務諸表情報と一致しているか突合する
・回答金額が一致していない
この場合、監査法人は「差異調整」という追加手続きを実施します。差異調整といっても被監査会社の担当者にとっては何をしているかよくわからないので、資料の作り方等しっかり説明と指導を監査法人側から対応する必用があります。
すごく長くなりましたが、ざっとこんなところかなと思います。
要は債権債務確認状はやることがいっぱい。なので、事前にスケジュール、対応すること、何か起こった後の対応方針、お願いしたい事項をしっかり固めておくことが重要と思います。
(補足:今はほとんど確認状対応部署に対応してもらっている場合もあるし、電子確認も進んでいるのでこの情報は古いかもしれないです)
もしこんな工夫あるよとかあれば聞いてみたいです。
少しでも効率化できるところは効率化が進みますように