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ibuki_salon
とことこと歩むその道
とことこ と夜道を歩む彼を私は夜空に浮かんで見つめていた。
時に迷い、時に夜闇に惑い、時に道なき道を行く。
身体の不調や脳内の化け物と対峙しながらの、彼のその歩みは決して速くはなかったけれど遠回りをしながらも、1歩1歩着実に進んでいく。
そこにどれほどの葛藤や苦しみがあったのか、ただ空から傍観しているだけの私には分からない。
けれど、その歩みと彼が発する言葉たちは確実に多くの人の心を救った。
たとえつまずき、壁に阻まれても前へ前へと進む力強さと、自身が苦しい中でも他人を思いやる優しさは誰もが真似できるものでもない。
言葉1つで救われるかよ。
そんな私の考えを覆したのも、また彼だった。
「ねえ、遊ぼう、遊ぼう。」
唐突に草陰からまだ幼い少女が飛び出す。
彼女は妖怪「遊坊」だ。
彼は少し驚いた様子だが、決してその手を振り払うことはしなかった。
「遊ぼう、遊ぼう。したことのない遊びがしたい。」
手を引いてそうねだる遊坊を彼は叱ることなく、優しく諭した。
「もう夜遅いから寝ようね。また明日。」
遊坊は不服そうにしながらも、その場を離れ茂みに消えていった。
彼はふと足を止め遠くの空を見る。
いつのまにか東の空が曙色に染まっていた。
もうすぐ夜が明ける。
彼はまた自身の目指す目的地へと1歩1歩、歩を進めた。
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