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【読書感想】切羽へ

今日は本の世界へ📖
絵本の合間に読む、気になった本の感想を書きます。



はじめに

おうみのひとさんのところで目にした井上荒野さん。
記事を読んで何か読んでみたくなり、ちょうど
図書館へ行ったので何となく選んで借りてきた。
読んでみてから調べたら、
2008年の直木賞受賞作品だったと気づく(笑)





今日の本

『切羽へ』

著者:井上荒野
発行所 新潮社(2008年)




この本、要約すると・・・

要約にチャレンジしています。私の個人的な記録です(^^;)

この本は、




【離島で暮らすセイの心の機微を綴ったある1年の記録】



感じたこと

「そうたい」「どがんしたと?」「〜したとね」

どこの方言なのだろう(調べると福岡弁?)と思いながら…
登場人物たちが話す言葉が何だか心地よく入ってくる。

タイトルは、切羽きりはへと読む。
切羽ってなんだろう?誰かの名前?と探しながら、
読み進めるもなかなか答えに辿りつかない。

おもしろくて先を読みたいという衝動よりも、
キリ良く読むのを止められて、
でも続きを読むのを楽しみに出来る、
空き時間に少しづつ読めて、
また続きを読むとすんなり入れる不思議な感覚。


離島の小さな島が舞台。
主人公のセイは10人足らずの小学校の養護教諭。
坂の上の元診療所(父親が医師)に画家の夫と暮らす。

東京(本土と言う)に近い島なはずなのに、
島民たちの福岡弁っぽいのがフィクション。

島を一度は離れまた戻ってきた者の気まずさや、
小さいコミュニティだからこその、
人への接し方や気遣い。
たった一人の家族である夫でさえそんな風に
無意識にお互いを捉えているような感覚もありました。
大人というのは、そうであるものなのか・・・?

とはいえ、夫に対しての思いがあり過ぎるのか、
それとも1人になってしまうことの不安なのか、
石和に対しての気持ちを自覚するのが怖いのか、
夫婦という形への執着とも思える心の動きも感じました。

年下の音楽教師・石和が島に赴任してきて、
自分でもよく分からないまま…いや
分かっているのに分からないフリをしたくての態度。
でも心はいつも囚われる。

よくある恋愛や不倫のそれとは違うような、
恋といってしまうことさえ憚られるような、
そんな心が描かれていたように思います。

自分でもはかり知れない複雑な感情。
そんな境地に至ったことがない超凡人の自分のことを、
残念にも感じさせられました。


最後に、切羽の意味。

「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽と言うとよ。トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」

『切羽へ』より

石和が島を出て行く前にセイが言った言葉。
自分は石和への切羽をいつも歩いていた、
でも繋がることはなかったという意味だったのかな。


石和、月江、夫、そしてしずかさん。
セイと同様にはっきりしたことばや答えはないのに、
その人達の心の内を考えさせられてしまうのは、
井上荒野さんの作風でしょうか。
改めて凄さを感じます。


淡々と、やわらかな方言と共に
セイの心とその1年を綴ったこの小説は、
のほほんとシンプルなストーリーの絵本ばかり読む私に
衝撃的で、大人の心の世界を味わえた作品でした。

でもたまには高尚なのもいいですね~。
こういうのを読むとちょっと賢くなった気がしたりして(笑)

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