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【短編小説】猫と出会った男の話1
あるとき、男は猫に会った。
仕事帰りに毎日のように寄るコンビニの駐車場に痩せた白黒の猫がいて、
目ヤニだらけの眼で恨みがましく男が買った弁当をビニール越しに見ているのだ。
辺りには猫と男しかいない。
男はしゃがんで弁当を開けると唐揚げを一つ、猫の方に転がした。
猫は男を睨んだまま唐揚げを食べた。
その場を去ろうと立ち上がって向きを変えると、目の前に猫がいた。
驚いてさっきまでいたであろう所を見ると、唐揚げの衣が残っていた。
男は住んでいるアパートがペット可の物件であることを思い出し、猫を連れて帰ることにした。
小汚くて痩せた、目つきの悪い猫は生まれつきの野良に思えたが、
男が抱きかかえても猫は嫌がらなかった。
家に帰ってタオルで猫を拭くと、タオルはすぐに真っ黒になった。
風呂に入れようかと考えたが、元気そうには見えない猫を風呂に入れるのはためらわれて、後日入れることにした。
男は昔実家で犬を飼っていたことはあるが、猫を飼ったことはなかった。
ネットで飼い方を調べると、人間の食べ物をあげるのは良くないとあった。
キャットフードを用意しなければならないが、今日はもう遅いので明日買うことにした。幸い今日は金曜日で明日、明後日は仕事が休みだった。
家にあった段ボールと新聞紙で猫の簡易的なベッドとトイレを作った。
猫はそれぞれの用途を理解したようで、トイレで排泄を済ませると、ベッドで丸くなって寝た。
しばらくして男も眠った。
(続く)