【考察6】そもそも生命や精神ってなんだろう? 肉体を超えた魂の在処はどこに🙀🙀


生命・精神現象を表現する媒体は細胞や肉体だけなのでしょうか? 古代より、魂や霊といった概念が、肉体とは異なる存在としてとらえられてきました。人間の意識には物質を超えた側面があるのではないかという問いは、今もなお残されています。

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生物は、酵素や細胞を使って化学反応や複製反応をおこない、自己組織化するシステムとして理解できます。このシステムは、外部の環境とエネルギーや物質をやりとりする非線形で非平衡な開放系としてなりたっていますが、開かれた系であると同時に、その内部では自発的な触媒サイクルを発達させます。無機的な物質も自己触媒的な反応を示すことがありますが、生物の自己組織化システムはより複雑で、自己触媒サイクルを通じて情報を生成し、秩序だった反応や構造の保持や発展をおこないます。

生物の階層構造(分子、細胞、組織、器官、個体、個体群、生態系、自然環境など)は、上位の階層との相互作用を通じて自己組織化し、その機能を維持します。生物システムには、同階層レベルの内部の相互作用だけでなく、上位の構造との競合や協調があり、それにより複雑な自己組織化パターンが生まれます。たとえば、生物は環境に適応しながら、同時にみずらの活動で環境を変化させていく相互作用があります。これにより、分子レベルから生態系、さらには地球規模にわたる階層が影響しあいます。そのため、生物の進化には、基本的な法則や進化のプロセス、個々の細胞を理解だけでは予測できない秩序が現れることがあり、この現象を創発と呼びます。

脳みそも、個々のニューロンの構造や仕組みを理解しただけでは、その機序は理解できません。脳みその全体構造とは、細胞膜に隔てられた異なるイオン組成の非線形・非平衡な環境を背景に、約1000億個以上のニューロン(脳神経細胞)が結びついた有機的ネットワークです。このニューロンネットワークは、外界や身体からの相互作用を通じて動的に変化し、内部の神経信号の伝達パターンを自己組織化することで、認知、思考、学習、記憶、運動といった高度な情報処理をおこなっています。

生命や精神現象は、自己参照しつつ環境や経験との関係を敏感に反映し、カオスや複雑系の一部として理解されることがあります。カオス的遍歴や非平衡開放系といった高次の非線形力学や熱力学は、生物のように自己組織化し、情報を処理する知性体としてみなこともできます。このようなシステムは、一見無秩序に見える要素のなかから自発的に秩序(情報や意味)を生みだす能力(知能、知性)をもっているのです。生物システムは非線形・非平衡な開放系であると同時に、自己組織化を促進する自己再帰的なフィードバックループを介して、自己を参照、促進、抑制、統制しながら、創発現象を生みだすシステムとして定義できます。

生命・精神の本質である霊魂、万物を統制する精霊や神霊を肯定するお化け好きのための宇宙論では、波動関数や種々の素粒子の場、時空そのものを二次的、派生的な概念として、以上のような生物としての動的な有機体システム(非線形力学系、熱力学系)やその局所的な場の構造としてとらえおなさなければなりません。そして、肉体を超えた霊魂(生命・精神)の実在を肯定するためには、粒子の運動を決定づける波動関数の構造を、生物の神経ネットワークにおける時系列的なニューロンの発火パターンと、一対一線の射影構造として対応づける必要があります。