ネット依存からどう身を守るべきか?【書評】スマホ脳
スマホでバカになる?
うちでは、子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している。 ──スティーブ・ジョブズ(アップル社創業者)
ジョブズの上記発言の通り、彼はパソコンを世に広めた人物であるにも関わらず、自分の子のデジタル・デバイス使用は制限したそうだ。
個人的な経験として、スマホで得た情報は、いまいち覚えが悪い。読んだ時は「へぇ」と感心しても、後から思い返すと記憶にない。断片的な情報で頭がいっぱいになり、脳がごちゃごちゃした感じがするようになった。最近はコロナ禍で、人と会う機会が少なく、Twitterをする時間が増えたので、危機感を持ってこの本を手に取った。
スマホの功罪
スェーデンの科学者によるベストセラー翻訳「スマホ脳」によると、デジタル・デバイスは、依存症になりやすく、集中力をそぎ、記憶力・学習能力を低下させるという。また、社会全体で睡眠時間が短くなり、メンタルの調子を悪化させている恐れがあるという。
①ネット依存症になりやすい
FacebookやTwitterなどのSNSは、ユーザーを広告へ誘導するために、脳のドーパミン報酬系を刺激する仕組みにあふれている。一昔前、日本でもパチスロや、ネット・ゲームのガチャなどで社会問題化した仕組みがSNSにも利用されているそうだ。パソコンなら離れる時間も取りやすいが、スマホは手元にあり、絶妙なタイミングで通知が来る(このタイミングもよく計算されている)ので、通知を思わず確認したくなってしまう。
私が特に衝撃を受けたのは、以下の文である。
ツイッターにも独自のテクニックがある。スマホでアプリを立ち上げると、青い画面の中で白い鳥が何度か羽ばたいて、スクリーンを埋め尽くすほど大きくなる。それから突然、ツイートがすべて現れる。これはログインに時間がかかるわけでも、接続状態が悪いせいでもない。待たせることでスリルを増加させているのだ。この遅れは、あなたの脳の報酬システムを最大限に煽るよう入念に計算されている。SNSのプッシュ通知やチャットの着信音がどれも似たような音なのも偶然ではない。友達がチャットを送ってきたと思わせ、社会的な関わりを求める脳の欲求をハッキングしているのだ。
Twitterアプリを立ち上げる時の時間は、情報をダウンロードしている時間ではなく、「あえて待たせて、焦らしている時間」らしい。そんな所まで計算されているのに、個人的にはゾッとした。
「いいねが押されました」の通知も、相手がいいねを押した瞬間ではなく、少し時間を置いてから通知が来るように設計されている。アイコンの色や、シンプルなデザインなども、脳科学研究に基づいてもっとアプリを使いたくなるような仕掛けを施している。
よって、特にスマホのSNS使用は、スマホをずっと使い続けてしまうような依存症状態になりやすいので特に注意が必要である。特に10代の若い人はドーパミンの分泌量が多く、より簡単に依存症になってしまう傾向があるという。
②集中力をそぎ、記憶力・学習能力を低下させる。
毎日何千回もスマホをスワイプして脳を攻撃していたら、影響が出てしまう。注意をそがれるのが慢性化すると、その刺激に欲求を感じるようになる。刺激自体が存在しないときにまで。小さな情報のかけら──チャットやツイート、フェイスブックの「いいね」──を取り込むことに慣れれば慣れるほど、大きな情報の塊をうまく取り込めなくなる。
特に通知がない時にすら、スマホを何回もチェックしてうことは多いだろう。もはや、自分宛の通知ではなく、刺激を受け続けること自体に喜びを感じてしまうようになってしまっている。しかし、小さな情報のかけらをこまめに頭に入れるようになると、大きな系統だった情報を取り組む脳の余白がなくなってくるそうだ。
また、通知を絶えず気にすることによって、目の前の人との会話なども楽しめなくなるという。
ある研究で約30名に、知らない人と10分間自由に話してもらった。テーブルを挟んで座り、一部の人はスマホをテーブルに置き、それ以外の人は置かなかった。その後、被験者たちに会話がどのくらい楽しかったかを尋ねてみると、視界にスマホがあった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいとも感じていた。言っておくが、スマホはただテーブルの上にあっただけで、手に取ることは許されなかった。
仕事や友人との交流を楽しみたいのならば、スマホは見えない所に置いておく方がいいようだ。
③ 睡眠時間を削り、メンタルの調子を悪化させる。
睡眠不足は、脳の扁桃体のストレスシステムを刺激し、精神疾患のリスクを上昇させる。
ノルウェーで、1万人のティーンエイジャーにどのくらいの睡眠時間が必要だと思うか、そして実際に何時間眠っているかを調査した。さらにタブレット端末やスマホ、パソコンをどのくらい使うか、テレビをどれくらい観るかについても答えてもらった。その結果は大人とまったく同じ傾向だった。スクリーンの前にいる時間が長いほど不眠になる。やはり、スマホが若者の睡眠不足の大きな原因だというのは間違いなさそうだ。
多くの国で、スマホの使用時間が多いほど、うつになる傾向が高いとの研究報告がされている。
スマホは睡眠時間を削るだけではなく、SNSによって不安をあおるような情報を拾いがちである。人間は進化の過程で、危険を察知して逃げるため、不安な情報ばかり選んで注目してしまう仕組みが脳の中にあるためだ。
アメリカの研究グループが、大学生のSNS利用時間を3週間だけ1日30分に利用制限したところ、「軽いうつ」傾向のあった学生の精神状態が改善した。また、スマホの普及率が増大すると同時に、精神疾患を訴える人の人数も増えたという観測も存在する。(ただし、リーマンショックなどの経済不安もあったので、どちらによる影響なのかわかりにくい)
対策: スマホ利用を減らし、運動をする。
【利用時間を極力減らす】筆者は、できるだけスマホなどのデジタル・デバイスの使用を控えることを勧めている。目覚まし時計など、他のもので代用できるものは代用し、睡眠時間を削らないために、ベッドに置かない。仕事に集中したい時は、物理的に遠ざける。
特に、SNSは依存症になる可能性が強いので、手近なスマホにはインストールせず、パソコンだけで使うことを作者は勧めている。
【運動】運動は、脳の神経物質の調子を整えてくれる作用があり、ストレスを緩和し、集中力と知能を高める。スマホを手に取りたくなる衝動を抑えるためには、衝動を抑えるための脳の機能を向上させることが重要で、運動はこうした脳の機能を鍛える。週に3回45分ずつ以上の運動がすすめられる。
【スマホの表示をモノクロに】色のない画面の方がドーパミン放出量が少ない。それによってどれだけスクロールしたくなるかが大きく左右される。
この本を読んで実践したこと
スマホを遠ざけるため、充電器を寝室以外の場所に置いた。寝る前にどうしてもKindleで本を読みたいので、iPadだけ寝室に持ち込んでいるが、このiPadからはSNSを削除した。今でもiPadでTwitterアイコンを探してしまうので、自分が依存症的になっていたのかがわかった。
また、通勤時に小走りすることで運動をするようにした。子供にも運動を好きになってもらうよう、心がけている。また、運動による知能向上については、下の書籍に詳しく、これも非常に参考になった。
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