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気候変動対策の潮目が変わるかも【無料公開】
米国のトランプ大統領の就任を控えて、また就任後の動きについて様々な情報が出てきている。少しまとめてみたいと思う。
(尚、AIを利用すると、左寄りな内容になるため、利用していない。)
【パリ協定からの再離脱】
2025年1月20日に就任するトランプ大統領は、パリ協定(地球温暖化対策の国際合意で、温室効果ガス削減を目指します)からの再離脱を早急に実現するであろう。その影響を分析するには、まず過去を振り返りたいと思う。
過去のパリ協定離脱からの考察
第1次トランプ政権は2020年11月にパリ協定から離脱をしたものの、その後樹立したバイデン政権は2021年2月にパリ協定に復帰した。トランプ政権の思惑は、規制などによる行き過ぎた気候変動対策に待ったをかけたいというもので、民間主導のイノベーションによる脱炭素は引き続き支援する構えではないかと思われる。そのため、少し本題と逸れるが、IRA法の修正は小幅に留まり、何でもかんでもグリーンテックなら減税OKということがなくなる(要件が厳しくなる)だけであり、IRA法の目線での影響は限定的ではないかと分析している。また、テキサス州など共和党の州が特にIRA法の恩恵を受けていることもあり、大幅な変更はないと予想される。
さて、本題に戻るが、このように第1次トランプ政権でのパリ協定離脱は短期間(3カ月)に留まったため、ここから影響を読み取ることは難しい。それでも、いくつかの反応はあり、また繰り返される可能性があるのでまとめておく。
「大手メディア」
総じて、パリ協定離脱への批判的な報道が見られる。このグレタがトランプを睨む画像は何度も利用され、印象を操作したかった模様。次の離脱時にも似たような象徴的な画像を携えて、批判的な報道をしてくるだろうと予想される。当時は、SNSの影響が今より小さいこともあり、世論はトランプ批判の方向で傾いていたようにも思うが、昨今は、SNSでパリ離脱肯定派の意見も伝わるようになり、同じような世論形成にはならないのではないかと思われる。
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基本情報からの考察
世界の温室効果ガス排出量(国別)
国名排出量 (百万トンCO₂換算)
1位:中国10,065
2位:アメリカ5,416
3位:インド2,654
4位:ロシア1,711
5位:日本1,162
国際的な枠組みを作って、一緒に温室効果ガスを減らしていこうという取り組みからアメリカが抜ければ、パリ協定の意義はほとんどなくなることが読み取れる。また、危険なことは、日本が引き続き妄信して気候変動対策に負担を大きくすることは、ますますアメリカとの経済格差を拡大させる結果になると思われる。
次にお金の面を見てみよう。UNFCCC(国連気候変動枠組条約)(パリ協定の中心となる団体)に資金を拠出している国
国名資金拠出額 (百万米ドル)
1位:アメリカ2,650
2位:ドイツ2,400
3位:イギリス1,700
4位:フランス1,500
5位:カナダ1,200
米国はUNFCCCへの加盟は継続するものと思われるものの、パリ協定の維持・運営は、一番の資金拠出国であるアメリカが反対しているため、難しくなると考えられます。また、パリ協定に基づく各国の目標(NDA)は、ヨーロッパが極端な意見を出す(科学的に無理だろうという水準の削減目標)のに対して、アメリカが牽制になっていた現状を考えると、この枠組みでの目標はさらに厳しい状況のものに変化していくことも考えられます。日本は本当にこの枠組みに付き合うべきか、現時点で早めの判断をするべきです。私個人としては、アメリカに追随して脱退しておいた方が良いと思う。
【国際イニシアティブの動き】
GFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)傘下のセクター別アライアンスの中には、NZIA(Net Zero Insurance Alliance)やNZBAなどがある。簡単に言えば、業界挙げてみんなで足並み揃えて脱炭素していこうね、というものである。
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NZIAの現状
NZIAは、脱退が相次ぎ、実はトランプ大統領が当選する前から壊滅的な状態にある。共和党地盤の強い州を中心に23州の司法長官がNZIAにレターを送付し、反トラスト法に抵触している可能性について重大な懸念を表明したのが契機となっている。NZIAに的を絞って圧力をかけたが、ほかのNZBAなどはむしろ2023年6月までは数が増加しており、バイデン政権下ではとりあえずNZIAのみの影響で、ほかのアライアンスへの影響については様子見の形になっていた。
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NZBAから、主要米国金融機関が脱退を表明
米大手銀が相次ぎ脱退、排出量ゼロ目指す国際取り組みに失速懸念 | ロイター
NZBAについては、トランプ政権の動きを見据えて、米国大手銀の脱退が相次いでいる。
米国はある意味、NZBA内でも、極端な目標設定をしないように抑止力として働いていた面もあり、この脱退で、欧州の銀行などはチャンスと更に高い目標を立てるように圧力を強めてくる可能性もある。
日本は、これに付き合うのか?大きな論点となる。アメリカの動向に注意を払いながら、適切な戦略を立てることが重要となる。日本の主要金融機関、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行などにその判断ができるのか注目している。
【石油天然ガスの状況】
トランプ次期政権下で米石油生産は減速の見通し、世界的供給過剰受け(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
トランプ政権は、世界に対して米国の石油を「ドリル、ベイビー、ドリル」して売り出す構えである。日本はこの石油・天然ガスを輸入することにより、石油・天然ガスの輸入ルートの多様化、石油価格高騰の抑制、トランプ政権とのリレーション強化のチャンスとなる。一方、第7次エネルギー基本計画にて、菅さんが衝撃的に宣言した脱炭素目標(NDA)に沿う形にすると発表したばかりなので、この石油・天然ガスの輸入は難しいものかもしれないが、基本計画は法令ではないため、政局の事情が変わったのだから、さっさと政治判断で方針転換し、石油・天然ガスを米国から輸入すれば良いと思う。それが石破政権にできるのか。。。