託宣
顔は奇異で世に類がなく
色白く水晶のように透明になり
声も哀雅で
聞くものはすべて涙にむせぶばかりであった
また全身から不思議な香りを出した
いつしかそう語り草になっていた
そのときのわたしはひたすら静かに耳を傾けていた
このお告げは他の人には聞こえないのだ
聞こえる声の意図を正しく
余すところなく伝えるために心を砕いた
わたしの声を出してはならない
わたしを使って出される声の邪魔をしてはならない
わたしはわたしであってはならない
彼を惑わせてはならない
いま、語られるべきお告げを
そのまま外に出さねばならない
気づくと彼は泣いていた
彼の周りの人びとも泣き叫んでいた
わたしはまだわたしではない
失神した彼に託さねばならない声が残っている
彼に告げられるべき言葉を
わたしは間違えずに伝えられただろうか
聖なるものの語りを
聖なるままに与えられただろうか
聖なるものの切実な願いを
わたしのものだと思われなかっただろうか
泣きじゃくるさまをただ目に映した
わたしの目はわたしのものではないから
悲痛な叫びをただ耳に響かせた
わたしの耳はわたしのものではないから
わたしのものではない左右の手が
彼を横抱きにして
わたしのものではない涙があふれた
わたしのものではない
わたしのものであってはならない
わたしのものではないはずなのに
なぜだかわたしはかなしかった
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