ワルツ
何処からともなくやってきて
いつの間にか居ついている
ずっと前からいたみたいな顔で
ある朝さりげなく挨拶をする
誰かが来ても知らんぷりだが
泣きそうな人の足元には近づく
大事な道具の上に寝そべり
流れている水ならなんでも飲む
あの人が去っていくときも
前から知っていたみたいだった
あんなに頭をこすりつけたのに
あっちを向いて振り向かなかった
僕がノートに数字を書くとき
退屈そうに丸まっている
彼女が苛立ってうろうろするとき
ゆったりと伸びをしている
少し離れた丘で
ひとり座り込んでいる
風に吹かれながら
目を細めている
草の中で際立っている
それでいて透明のようだ
この完璧な世界では
輪郭にも意味はない
僕のよろこびやかなしみが
音楽のように草原を渡る
いつまでもここにいられるし
いつだってここを離れられる
ワルツを踊ってもいいし
靴を脱いで立ち去ってもいい
日が昇り日が沈むように
雨が降り雨がやむように
Waltz For Debby
※この詩と動画の曲は、多少の刺激を得ていることを除けば、関係はありません。
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