
Photo by
satchy0929
追い越す
枯れた並木を横目に
遅い車の後に続く
もう少し辛抱すれば
この先の底に着く
停める場所を探す
誰もが何処かへ行く
だが僕に目的地はない
ただ静かに停まる
サイドブレーキを引いて
ゆっくりと目を伏せる
シートを少しだけ倒して
帽子を深くかぶり直す
会話が聞こえてくる
先を行く君が僕を呼ぶ
僕は照れながら君を追う
ふたりは光を浴びている
でもいまは
秋なのに桜色の道
秋なのに日が射す新緑
秋なのに真っ白な屋根
秋なのに騒がしい蝉
窓の外に目をやる
自転車が猛スピードで行く
いやベビーカーも杖をつく人もだ
ああすべてが僕を追い越す
耐えられず僕は目を閉じる
あの日見た君の姿が浮かぶ
僕のライトに照らされて
美しく白く浮かんでいる
行かないで
そう言おうとして僕は
声を詰まらせた
シートを起こし目をこする
エンジンをかける
スピードを上げて
すべてを追い越す
もう止まることはない
ずっとずっと追い越す
#詩 #創作 #並木 #車 #底 #停める #サイドブレーキ #目 #帽子 #会話 #桜色 #道 #新緑 #蝉 #秋 #自転車 #ベビーカー #ライト #シート #エンジン #スピード #追い越す #追い越し