猫は泣かない
あの大きな木の根元まで
ゆっくりと歩いていく
強い風が吹いて
枯草がざわめいている
あなたが呼んでいる
でも振り返らない
わたしがどこへ行くのか
知っているはずだから
ふたりで何度も笑い
あなたは何度も泣いた
わたしは隣に座って
前足に静かに触れる
あなたが泣く理由が
わたしにはわからない
季節が変わるたびに
ため息をつく理由も
けれど
あなたが愛おしい
とてもとても愛おしい
わたしはただ風に吹かれ
この大木に寄りかかり
すべてを忘れて目を細める
はるか遠くからの匂いを嗅ぐ
あなたの悲しみは
まるで流れる水のように
わたしを惹きつける
それでもわたしは捕まらない
ああ
あなたが愛おしい
とてもとても愛おしい
永遠と刹那は同じものだと
知っているはずなのに
傍にいてもいなくなっても
あなたはきっと泣くのでしょう
あなたはなぜ泣くの
泣かないわたしには
いつまでもわからない
風が吹いて草が揺れる
日が昇り日が沈む
時が生まれ時が朽ちる
わたしはどこにでもいる
耳を澄ませば
小さく聴こえる
あなたを呼ぶ
わたしの声