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武尊 vs. タン・ジン "ONE Friday Fights 81" (ONE Championship)の総括と次戦ロッタンに向けて!(4,900字超)

9月27日(金)にバンコクで催されたONE Friday Fights 81で、武尊選手のONE 2戦目が行われました。

武尊選手が無事KO勝利してくれましたので、この試合について真剣に考察をと想い、ついでに蛇足を書かせていただきます。

ちなみに11月6日に公開されたばかりの魔裟斗チャンネルでの対談の中で、魔裟斗さんが武尊選手にとてもよいことを言っていました。

「もっと楽しんでもいいんじゃない?」

魔裟斗さんがMMAを語るのは個人的にあまり好きじゃないですが、キックボクシングのフィールドではさすが説得力があります。武尊選手が構えずにのびのび語っている印象で、インタビュアーって大事だなと思いました。「(格闘技を)楽しめよ」って面と向かって武尊選手に言える人って、かなり限られていると思うんですよ。


お決まりの直前で対戦相手変更

今回も直前で対戦相手が変更されていましたが、前回のロッタン選手による日本大会ぶっちぎりの免疫があったので僕は大丈夫でした。ちなみにパリでの試合も当初の相手から変わっているので3戦連続ですね。

ばっくれ常習犯のロッタンことロッタン・ジットムアンノンは間違いなくやべえやつだったし、大きな大会(日本大会)で選手に大事にされないONEもONEで「しっかり手綱握っておいてくれよ」と少しずつ冷ややかに見てしまいます。遠かった有明アリーナ。

ともあれ、今回の発表があった時、アンダーカードで日本人が4試合まとまっていたので、僕は「あれ、メインじゃないのね?」という疑問によるアテンションを寄せていました。ですが、よくよく考えたら日本はタイより2時間進んでいるので、日本にいるオーディエンスのLIVE視聴を考えたら配信時間帯としてはベストだったのかもしれません。

シンガポール大会だと時差が1時間なんですよね。US大会はもはやよくわかっていません。それにしてもONEはシンガポール大会、全くやらなくなりましたね。。UFCはSingaporeのFight Nightでも満員御礼でかなり盛り上がるらしいです。前置きが長くなりすみません。

事前のプロモーションが全然なかったよね?

「武尊の2戦目は vs. ブラック・パンサー」の発表を聞いたとき、誰やねん、ベイノアさん?というのが率直な感想でした。

さらにそれが直前で変更されて「やっぱり vs. タン・ジンになりました」と言われても、頑張ってちょっと調べたところで「ムエタイ選手からラウェイの選手に変わったのね」程度の理解で、勝負論で事前に沸くような見方は一切できません。Friday FightとはいえONEで勝ってる選手だから弱くはないんだろうな、程度の雑なキックボクシング素人目線で見ていました。

ABEMAもU-NEXTも事前のプロモーションを決して丁寧にしてくれてはいなかったし、ONE本体はもはや大会をやるだけで1ミリも宣伝告知に営業努力を割いていなかったようにみえます。昔はONEの日本法人?オフィス?的なものがあった記憶ですが、今ってどうなっているんだろう。なんとかアンディさんは今どこにいますか。

RIZINの、どんな選手にもそれなりにスポットライトをあてる丁寧なプローモーションに慣れていると、あれが当たり前になってしまいますね。海外団体の競技思考の中では当然のことなのかもしれませんが、慣れない観光客のような戸惑いとモヤモヤを隠せませんでした。武尊選手はキャリア後半で無駄遣いされていないですかね。どう見えているんだろう。

武尊選手と「1試合最低1億円プラスPPV売上金からの報奨金」という専属PPVファイター契約を結んだAbemaも、2試合を消化(詳細不明)したところでいつの間にかONEの放映からキックアウトされてしまったので「えぇ!?」となっていました。Abema格闘チャンネルがTHE MATCHでピークを見せたあと急なゲームチェンジが起こって、U-NEXTに視聴者をごっそり持っていかれた感も業界の諸行無常を写していてかなり勉強になりましたよ。またきっとAbemaのターンも来るんでしょうがね。そういうものなんだろうな。

この試合をどう観戦すればよいか

予備知識がほとんどない中で唐突に「武尊の試合だからみろ」と言われても、どうやって盛り上がればいいのか、僕のようなキックボクシング素人にはよくわかりません。正直似たような人が多かったんじゃないでしょうか。ONEも対戦相手も関係なく、前回のスーパーレック戦の敗戦から引き継ぐ文脈もなく、「とりあえず武尊の試合だし観ておくか」程度のものです。

一応漠然とですが、「連勝している若手を噛ませであてて武尊の戦績を一旦戻し、ロッタン戦に繋げるのかな。」くらいの見立ては素人目にでもつきました。それでもONEの立ち技選手はマジで強いからひょっとしたらひょっとしちゃうんじゃない、と多少ドキドキはしました。ファイトスタイル的に、武尊選手ってまっすぐ突っ込んでプレスかけていくから上も下も結構被弾が多いじゃないですか。しかも、前回で斜めの攻撃(左ジャブと右ロー)や、特にローキックのカットが苦手とバレてしまったので、割とシンプルな攻略法が露呈している、という風に見えています。

どんな心構えで観ればよいのかよくわかっていなかったところで、ひとつ前の試合の元王者・秋元選手が負けちゃいました。それで「日本人3タテは悲しいからみたくないよ!!!」という熱で試合観戦に臨むことができました。あとは、

  • 武尊選手に連敗してほしくない ⇨ ロッタン戦に繋がらずおかしなことになるし、リリースも心配。日本人選手も後に続かなくなりそう。

  • ローキックをちゃんとカットしてくれるのでしょうか ⇨ 控えめに言って心配。これはスーパーレック戦から引き継がれたものってことで。

という、これまでの「いつKOするか!?」みたいなK-1での見方からハラハラ見守るモードに変わった気がします。ということはやっぱりキャリア終盤なのでしょう。

ちなみに武尊選手は基本的に自ら発信してくれるタイプじゃないです。それを補って余りある「魅せる試合」があるのは凄まじいですが、K-1ではなくONEとなるとその神通力も薄れます。そのあたりはU-NEXTよりAbemaのほうが丁寧でした。秋元選手は更にですが、もっと日本の素人に優しくして欲しいです。RIZINがスタンダードになっちゃってるから事前情報の敷居が高いと僕らは気軽に観れないのよ!!

試合展開を見返す

まさかの1Rで左フックを被弾してのダウンと、ローのカットがちょいちょい微妙でやっぱりハラハラしましたが、プレスを続けて最後はぶっ飛ばすという期待通りの武尊スタイルをみせてくれました。あと、左ジャブが増えていてそこはなんだか安心しました。しかし、5万USドルのボーナス支給はなし。2戦目にして既にチャトリCEOの寵愛の元にはないことが判明しました。青木真也選手の一言がグサり。

ロッタン戦はいつなんだろうか

振り返ってみると、武尊選手のONEデビュー戦はフライ級キックボクシング・タイトルマッチで日本大会のメイン(ONE 165/ 2024年1月28日)でした。余談ですが有明アリーナの日本大会はめちゃくちゃ会場盛り上がっていましたね。

今回の2戦目がバンコクのフライデーファイト(ONE Friday Fights 81/ 2024年9月27日)。

ロッタンが年内に1試合挟むようなので第3戦となるであろう vs. ロッタン はおそらく2025年第一四半期あたりでまた日本大会じゃないでしょうか。楽天様のようなスポンサーが乗ってくれれば。。

ロッタン・ジットムアンノンは十中八九ハナシの通じないやべぇやつで個人的には応援したくなる選手じゃないです。直前での試合のトバしかたがひどいし、何もなかったかのような顔して次に出てくるし。ともあれ、ひょっとすると武尊選手のONEでのラストマッチになるかもしれない次戦をなんとなくで観るのは勿体無い気がします。

海外では"Takeru Segawa"とフルネームで報道されることも多い世川武尊さん。

果たしてロッタン戦はどう眺めればよいのか

この辺は今回の解説を担当されていた魔裟斗さんあたりに補助線を引いて欲しいのですが、オーディエンスに対して次への導きを示してくれるような解説はありませんでした。残念。なのでいち視聴者として考えます。

1. 武尊選手のキャリア終盤の集大成
まず今後の武尊選手の試合は、彼のキャリア終盤に差し掛かっていることを意識して観るべきです。いつ見れなくなるかわからないドキドキは確かにあります。魔裟斗チャンネルの中でもそんな雰囲気を醸し出しています。

2. THE MATCH後のセカンドキャリア
彼は「THE MATCH」までの試合では自分自身を極限まで追い込み、私生活をフルベットして送る練習漬けの日々をオーディエンスに共有し、その集大成として魅せる試合を毎回してきました。マゾヒストにすら見える自己犠牲的なスタイル、強さだけを求める競技に対する姿勢が、彼のファンや観客の感情移入を呼んできました。うわ、辛そう、これだけ賭けているのだから勝たせてあげたい、、みたいな。

しかし、ONEにキャリアを移してからはこの張り詰めた弓のような状態から解放され、もう少し格闘技にリラックスして向き合っているように見えます。「team VASILEUS」(名前覚えづらいよ)の結成も彼の心境の変化の現れでしょう。孤軍奮闘から一致団結へ、それによって見せるものがどう変化するのか?は今後もとっても大きな見どころだと想います。

3. スーパーレックに負けた者同士の直接対決
スーパーレックには2023年にロッタン選手もダウンを奪われ判定負けしています。スーパーレックに体重超過があってキャッチウェイトであったり、3分3RのONEムエタイルール(オープンフィンガーグローブで、クリンチと肘がある)であったりと条件は全く異なりますが、スーパーレックという共通の相手を通じて両者の実力を比較しあれこれ語ることが楽しめます(スーパーレックが日本で知られていないからそうでもないか。。)。

4. 那須川天心への間接的なリベンジ?
ロッタンと武尊は、どちらもキックボクシングルールで那須川天心に判定負けした経験を持ちます。ロッタンはRISE(2018年6月)で5R+延長1Rにもつれる接戦で、武尊は「THE MATCH 2022」の3Rフルでそれぞれ敗北。

武尊選手自身も2023年末にこのテーマを語っていましたが、今はやや古びていると感じます。天心選手のアップデートが凄まじく早く、すでにボクシングに転向し来年には世界戦が見えるというところまでくるほど、新たな舞台で活躍しているしています。一方の武尊選手にも先述した変化が見られます。そもそも天心選手がロッタンと闘ったのは6年半前の彼が19歳のとき。この対決を「武尊の天心への間接的なリベンジ」として観る視点の面白味は、個人的には一切ありません。

5. ロッタンの体重調整と戦術への期待

おまけとして、ロッタンはしばしば体重調整や相手変更が話題になりますが、今回の試合ではしっかりとした調整ができるかどうかは一つのポイントです。彼がどのような準備をしてくるか、それによってキャリア終盤で武尊の無駄遣いがされないか、、そのハラハラはかなり不本意ながら見どころではあります。

総括

武尊 vs. ロッタンは、武尊選手のキャリアの終盤を締めくくる試合として位置づけられます。その見方が日本のオーディエンスにとって一番見やすく、感情移入も容易になるかと思いました。相手がロッタンであればプラス@で盛り上がりますが、正直誰でもいいのかと思います。武尊選手がキャリアの集大成として戦う、というのはそれだけで価値があるということだと思います。

というわけで、武尊選手のキャリア終盤の集大成をしっかり拝んでおきましょう!あ、その前にロッタン選手の次戦はONE 169: Malykhin vs. Reug Reugのセミメインで、ムエタイです。

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